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‘日本航空’ タグのついている投稿

日航会社更生法適用を申請

2010 年 1 月 20 日 コメント 2 件

経営難に陥っていた日本航空は19日、2子会社とともに東京地裁に会社更生法の適用を申請し、同日手続き開始の決定を受けたと発表した。グループの負債総額は2兆3200億円で、金融機関を除く事業会社では過去最大。日航から支援要請を受けた企業再生支援機構も支援を正式に決定、日本政策投資銀行とともに出融資として総額9000億円の公的資金を投入する。一連の決定を受け、東京証券取引所は日航株式を同日から1カ月間、整理銘柄に指定、来月20日に上場廃止にすると発表した。
NIKKEI NET2010年1月20日

【CFOならこう読む】

私はこのブログで当初から法的整理を主張していました。そういう意味では、とりあえず落ち着くところに落ち着いたと感じています。

既得権益者の密室でのネゴで物事が決まるのではなく、司法に解決が持ち込まれたのは取り敢えず良かったと思います。債権者平等が原則の更生法手続きの中で、一般債権者を保護するという前例のない枠組みにゴーサインを出しことも評価できます。

しかしこの先はどうなるのでしょう?
稲盛氏なら、とてもまともとは言えないこの会社を、普通の会社に変えることはできると思います。ですが年齢から言ってもキャリアから言っても、V字型の収益回復を望むのは到底不可能だと思うのです。

自主再建はあり得ない。
Exitは外資への売却しかない。
僕はそんな風に思っています。

稲盛氏はこの仕事を引き受けた理由を次のように述べています。

「私は既に経営の第一線を引いた身であり、航空事業には全くの素人なので会長就任の要請を受けるか迷った。しかし日航の現在の状況は低迷する日本経済を象徴しているとも言われ、再建できれば日本経済全体に良い影響を与えることができる」

外資へ売却されることになったとき、本当の意味で日本は変わるのかも知れません。

重要なことは日本人の雇用の場が確保されることです。
世界中の企業に、日本人という希少な資源を活用してもらうこと、それこそが最も重要なのです。
日本人だけで資本も経営も何もかも賄う時代は終わったのです。

再生機構が株を手放す3年後に日本は大きく変わる。
だとするとそこに向けた準備を日本国民全員が今から始めなければなりません。

日本人だけで仕事ができる時代がそう長くは続かないとすれば、いまやるべきことは山ほどあります。

またそこに新たなビジネスチャンスも生まれる筈です。

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なし

日航法的整理へ

会社更生法の枠組みを使って再建を進める方向となった日本航空について、公的機関として支援に乗り出す企業再生支援機構はリストラ策を拡充する方針を固めた。迅速な手続きを活用して抜本的に経営を立て直すのが狙い。機構は金融機関に要請中の債権放棄を3500億円に上積みし、国内外の路線撤退や人員削減も上乗せする。株主責任は100%減資で上場廃止にするか、持ち分を残して上場を維持するかで両論があり、政府内で調整を続ける。
NIKKEI NET 2010年1月9日

【CFOならこう読む】

このブログで、わたしは以前より法的整理しかないと言っており、これがあるべき方向であるとは思います(2009年10月17日エントリー「日航再建問題」)。取引先に対する債権は保護し、運行に支障がないように再建を進めるという方向性も良いと思います。

しかし一つ重要な点が再建案骨子の中では取り上げられていません。それは、安全性の確保という点です。リストラを進めれば、従業員のモラルは下がり、安全な運航に支障をきたすということがあり得ると考えられるのです。

「日航のリストラも加速させる。2010年度から3年間で1万3000人程度の人員削減を実施」
(前掲紙)

「今まで通りの給料は払えないが、雇用は確保する。だから全社一丸となって再建に取り組もう」、というメッセージをトップは従業員に対し伝える必要があるように思います。それが出来ないなら、基幹路線を除き、運航を取り止めるべきでしょう。

今事故が起きたらすべてが終わります。

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なし

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日航再建問題 その2

日本航空の経営再建問題で、前原誠司国土交通相が週内にも藤井裕久財務相に公的資金注入などによる支援を要請する見通しとなった。公的資金と民間分を合わせた資本増強や債権放棄と債務の株式化で5500億円の金融支援を実施。今後は年金債務の削減などを実行できるかが焦点となる。
(日本経済新聞2009年10月22日1面)

【CFOならこう読む】

日航の作業部会による再建修正案は次の通りです。

1.実質債務超過額(存続価値ベース) 最大2700億円
2.資本増強 公的資金注入を含め3000億円
3.金融機関による債権放棄 2200億円
4.債務の株式化 300億円
5.つなぎ融資  2000億円
6.2014年度の営業利益  500億円~700億円
7.14年度の売上高  1兆2000億円
8.人員削減 9000人弱
9.年金債務の削減 支給額半額で積み立て不足を3300億円から1000億円にOBへの一時金一括払い
(前掲紙)

清算価値ベースでの債務超過額6000億円に対し存続価値ベースでの債務超過額は2700億円なので、国民負担を考えると公的資金を注入しても存続させるべし、というのが再建修正案の骨子です。

しかしこれは瞞しです。通常再生案件で真っ先に検討される、”スポンサーに売却”するという案が抜け落ちているからです。外資も含めスポンサーを探すという選択肢が最初から除外されている理由が分かりません(全日空との合併案、デルタとの資本提携案は検討されたようですが、そういう次元の話ではありません)。

だいたい株主責任は問われず、金融機関だけが債権放棄に応じる道理はないでしょう。

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なし

日航再建問題

日本航空の経営再建に向け国土交通相直属のタスクフォース(作業部会)がまとめた再建素案について、財務省とメーンバンクの日本政策投資銀行は16日、受け入れは困難との判断を固めた。年金減額などの道筋が不透明で、巨額の公的資金活用には理解が得られないとみている。政府内では過剰債務企業を支援対象とする「企業再生支援機構」を活用し、強力な公的関与の下で早期再建を目指す案が浮上している。
NIKKEI NET 2009年10月17日

【CFOならこう読む】

「政府をバックに中立的な立場から債権放棄などの利害調整に当たった方が、再建が円滑に進む可能性があるためだ」(前掲紙)

日航の問題は、いち私企業の問題ではありません。中曽根政権の時代に、日米貿易不均衡を緩和する内需拡大の手段の一つとして利用された国内空港建設と、そこから生じる様々な利権にむらがる様々な人々、その結果生まれた一県一空港と赤字路線。

どう見ても国に大きな責任があります。
にも関わらず国が中立的な立場で利害調整するなど笑止千万。

これだけからまった糸を解きほぐすことはもはや不可能で、どこかで断ち切ってしまうほかありません。

それが出来るのは法的整理しかないでしょう。

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なし

(カテゴリー)

日本航空の純資産

経営不振に陥った日本航空の再建問題がヤマ場を迎えた。銀行団とともに前原誠司国土交通相と24日面談した日航の西松遥社長は、政府に公的資金を使った資本注入を要請。しかし国交相が、公的資金の前提となる日航のリストラ案に実現性の根拠が足りないと不満を見せるなど、日航再建は新政権全体を巻き込んだテーマに発展してきた。
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毎日.jp 2009年9月25日

【CFOならこう読む】

「JALの経営不振の引き金は昨秋以降の世界経済の失速だが、高コスト体質や不安定な労使関係といった同社固有の問題も大きく足を引っ張っている。こうした構造問題にメスを入れない限り、公的支援で資金繰りに一息ついたとしても危機は繰り返す可能性が高いだろう。
JALの求める公的資金を利用した資本増強は産業活力再生法に基づく措置だが、この制度は金融市場の変調などで一時的に自己資本が減少した企業を念頭に置いたものだ。構造的な問題を抱え、金融危機以前から慢性的な低収益に悩んできたJALを適用対象にすべきではない。」
(日本経済新聞2009年9月25日2面 社説)

公的資金を投入するのであれば、その前提として第三者機関によるデューデリを行い、実態財務諸表を開示すべきでしょう。2009年6月末現在の日航の純資産の部(単位:百万円)は次の通りです。

20090925_01

一方、退職給付債務の状況は次の通りです(平成21年3月31日現在)

20090925_02

これは会計上引当てられていない退職給付債務が3,314億円存在することを意味しています。これを勘案するとすでに日本航空は債務超過であると言えるのです。保守的に会計処理を行ない実態財務諸表を開示した上で、公的資金投入の是非を論じてもらいたいと僕は思います。

昨夜、DVDで「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」を見ました。若松孝二監督の映画ということもあり、覚悟した上で観たのですが、思っていた以上にキツイ映画でした。

閉じた集団の狂気をこの映画は描いていますが、企業の中にも多かれ少なかれその企業の中でしか通用しない常識というものがあり、その常識をいったん全部ご破算にしないと自主再生なんて不可能なのかもしれません。法的処理にはそういう意味合いもあるのだと僕は思います。

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改めて問われる日本航空(JAL)の増資

2009 年 8 月 31 日 コメント 1 件

株主総会直後の2006年6月30日に発表した日本航空(JAL)の公募増資が改めて問題になっている。香港の投資ファンドが空売りで意図的に株価を押し下げ、安値で買った公募株を貸株の返済に回したことが、不正取引に当たるのだという。具体的にどの点が相場操縦に当たるのかは不明だが、無理な増資はこの種の取引を招きがちだ。少数株主保護の仕組みが欠かせない。
(日経ヴェリタス2009年8月30日65面)

CFOならこう読む】

「発表直後の7月3日に株価は14円安の273円と急落した後、数日は一進一退をたどっていた。それが再び下落に向かう「事件」が起きた。7月10日になって日興シティグループ証券が引受シンジケート団から離脱したのだ。「目論見書に書き込んである収益計画に、引受審査部門が異を唱えたため」と当時、日興は説明していた。

(中略)11日以降、株価はどんどん下がり、結局19日に決まった公募価格は211円と、公募増資発表日の287円を26.5%も下回った。ある個人投資家は7月19日に公募増資の差し止め処分申請を東京地裁に申し立てた。しかし東京地裁は26日に「既存株主が受ける不利益は会社法が予定している範囲内だ」という理由で却下してしまう。

株価は申込期間があけた7月25日にまた急落し、一時197円と200円を割った。払込日は27日。引受証券会社の取り分を除くJALの調達額は目標の4分の3の1386億円にとどまった。」(前掲紙)

この記事を書いた前田編集委員の問題意識は、「事前に特定の投資家に新株の割当数を伝えていた」ところにありますが、問題の本質は、ダイリューションが起こるエクィティ・ファイナンスが平然と行われ、それでも経営者は何の責任も問われないことにあります。

本来、エクィティ・ファイナンスは株主価値には中立であるはずです。しかし、エクィティ・ファイナンスにより調達した資金が資本コストを下回る投資に向けられる場合にはダイリューションが起こります。そのようなファイナンスは行われるべきではないし、結果的にダイリューションが起きた場合には、当然経営者はその責任を問われなければなりません。

ところがそうならないのが日本という国の特質です。そこをヘッジファンドに狙われたのです。

先週私は、「トレーダー、デリバティブ、そして金」(サティアジット・ダス著 エナジクス)を読みました。この本には、裁定機会は市場の歪みがあるところには常に存在し、デリバティブ・トレーダーの儲けの源泉はそこにあることが書かれています。特に日本は、「不思議の国のアリスの世界」(165頁)で、裁定機会がごろごろころがっているということです。

「GMの一時国有化を巡って5月末、米財務長官ティモシー・ガイトナーは「日々の会社運営には干渉しない。保有株も極力早く売却する」と表明。産業支援に踏み込みつつ、米国は出口も探っている。8月24日には7月に導入した新車買い替え補助を打ち切った。翻って日本では、次の支援企業の名がささやかれている。その代表は日本航空。7月初め、国土交通省の仲立ちで、日航は政投銀と民間銀行から計1000億円を一部政府保証付きで借り入れる契約を結んだ。だが、資金の大半は支払にあてられ、1000億円以上の資金が必要になる次の夏を乗り切れる保証はない。「日航はつぶせない」と国交省幹部。だが、対症療法に終われば、危機はむしろ深まる」
(日本経済新聞2009年8月30日4面)

このアービトラージで懐から金貨をひったくられるのは少数株主と納税者(つまり日本国民)です。

【リンク】

トレーダー、デリバティブ、そして金 – デリバティブ業界裏事情 – サティアジット・ダスのデリバティブ回顧録
トレーダー、デリバティブ、そして金 - デリバティブ業界裏事情 - サティアジット・ダスのデリバティブ回顧録 柏野 零

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