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‘業績評価’ タグのついている投稿

総資産回転率を改善させる取り組み

自己資本利益率(ROE)の改善は、国の成長戦略にとっても重要課題だ。3月18日の衆院予算委員会。浅尾慶一郎議員(みんなの党)が、こんな指摘をした。「日本企業は世界的に見てROEが低い」
(日本経済新聞2013年4月4日15ページ)

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今日の記事には、総資産回転率を改善するための取り組みを行っている具体的な事例が紹介されています。

ユナイテッドアローズ

「当時の社内では「バイヤーの経験や勘だけに頼るな」「(商品の)当たり外れのリスクを減らせ」が合言葉だった。まず、全国100店超の販売実績や顧客の声を1週間単位で片っ端から集めて徹底的に分析。これまで担当者が判断していた商品仕入れ時期や数量を、データを基に決めるやり方に変えた。
 あわせて店舗ごとに客数などの数値目標を設定。個別ブランドごとに毎週会議を開いて、品ぞろえと販売政策も1週間単位で細かく見直す体制に変更した。数字に基づいて小まめに品ぞろえを変えるので、結果的に売れ残りロスは減る。業績が悪化し始めた07年3月期に1・7回だった回転率は12年3月期に2回台に上昇した。」(前掲紙)

鬼怒川ゴム工業のF1段取り

「福島県郡山市の同社グループ工場。ある工程の生産品目を切り替える際、ラインの金具を交換する必要が生じる。合図ですぐに、3~4人がワッと集まり、あっという間に金具の交換作業を終える。まるでF1レースのピットの光景を見るような手際の良さだ。
 2人作業を変えることで作業時間は10分の1以下。今は従業員の9割以上を3つ以上のラインで作業できるよう訓練中。受注が大きく変動しても人員を増減させずに対応できる。工場内の無人搬送機も手作りして運搬効率を高めた。」(前掲紙)

両社ともに棚卸資産在庫を大きく削減することに成功しています。

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ROE、世界標準は20%以上

金融緩和への期待から2012年度は大幅な株高で終わった。中期的に株式相場が上昇していくためには、企業が自らの変身を市場に示すことも不可欠だ。自己資本利益率(ROE)の改善という課題を達成することが有効な策となる。
(日本経済新聞2013年4月3日13ページ)

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「「ROEの低さが日本の上場企業の構造的な弱み」と長年指摘されてきた。全体としては確かにそうだ。各国を代表する株価指数の採用企業を対象にすると、日本のROEは6%程度だが、米英はともに28%、世界平均は22%よりも格段に高い」(前掲紙)

ROEの話になると、安直なリストラにつながるというような批判的な声が聞かれますが、これは間違いです。

一定成長配当割引モデルを前提にすると、株価は配当成長率によって決まります。配当成長率を説明するための代表的な考え方として、内部成長率(サステイナブル成長率)があります。これは、企業が増資なしに達成出来る1株当たり利益及び配当の成長率のことで、

サステイナブル成長率=ROE×(1-配当性向)

と表すことができます。この式は、企業の利益の増加額は、内部留保された利益がROEによって生み出された額になることから求められます。

つまりROEを経営指標にする場合には、その改善が長期的な成長率の上昇につながらなければ意味がないと考えるべきなのです。

「ROE向上に必要とされるのは、新製品の開発や製造過程の見直し、市場開拓といった経営のイノベーション」(前掲紙、渡辺茂立教大学教授)

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鴻海(ホンハイ)マジック?

三原たち鴻海チームが乗り込んでから3ヵ月。SDP(堺ディスプレイプロダクト)の7〜9月期の税引前利益は黒字に転じた。2012年3月期にシャープが計上した大赤字の「主犯」とされた工場が、にわかに息を吹き返したのだ。鴻海は一体どんな魔法を使ったのか。
SDPと取引のある部材メーカーの幹部が種明かしをする。「歩留まりを上げ、販路を広げた。それだけのことです」
(日本経済新聞2012年11月22日2面)

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「高機能なら売れる」。技術への過信から売れないパネルを作り続けたシャープ。ドイツ証券シニアアナリストの中根康夫は「無理に在庫を積んで工場の稼働率を上げ、利益を創出する体質になっていた」と手厳しい。鴻海が正常な形に戻したとたん、堺の赤字はぴたりと止まった。」
(前掲紙)

これって随分前に日本でも話題になった、ゴールドラット博士の「ザ・ゴール」の世界ではないか!?

ゴールドラットは、「ザ・ゴール」の日本語版の出版をなかなか許可しませんでした。
その理由が、「日本人は、部分最適の改善にかけては世界で超一流だ。その日本人に『ザ・ゴール』に書いたような全体最適化の手法を教えてしまったら、貿易摩擦が再燃して世界経済が大混乱に陥る」ということだったのは有名な話です。

「ザ・ゴール」の日本語版が出版されたのは2001年のことでした。
しかし10年たっても「ザ・ゴール」のTOCの考え方は、あまり浸透していないようです。
セクショナリズムから抜け出せず、会計上の利益のみを重視し(「ザ・ゴール」ではスループット会計という直接原価計算の一種を提唱しています)、在庫の山を積み上げる。これは、ジョナ先生のアドバイスを受ける前のユニコ社の工場そのものです。

日本企業は外圧によってしか変革することができないのでしょうか?

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日本株のPER低下が意味するもの

かつて外国株を大幅に下回っていた日本株のPERが低水準に張り付いたままだ。主要12市場中の順位も5月に首位から落ち、直近では米国、南アフリカ、インド、オーストラリアに続いて5番目になった。意味するところは2つ。第1に日本企業に対する成長期待が薄れた可能性がある。第2に今月下旬から発表が本格化する4~9月期決算で通期の業績見通しの下方修正が相次ぐ懸念がある。
(日経ヴェリタス2012年10月7日67面)

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「PERの低下は足元の業績見通しの大幅下方修正を見越した動きかもしれない。実はバブル崩壊後のPERの最低値はリーマン・ショック後の2008年10月27日に記録した10.08倍だ。上場企業が業績見通しを下方修正するまでの時間的なズレで生じた異常値だった。その後は実際に下方修正が相次いでPERが月を追って上昇し、最終的には2009年3月期の上場企業の合計損益が赤字になって計算不能になった。」(前掲紙)

PERとは、株価が一株当たり利益(EPS)の何倍かを示す指標です。将来の利益の成長期待が薄れるとPERの合理的な水準が下がります。また、短期的な一株当たり利益の低下を市場が織り込めばPERは下がります。但しこの場合は、業績見通しが下方修正されればPERは合理的な水準に戻ります。

今の日本は、経済のみならず政治についても将来の見通しが立たず、成長期待が大きく減じていることからPERの合理的水準そのものが低下している(つまり前者の見方が正しい)、と考えられます。

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ハワード・ストリンガー氏と中鉢氏

ハワード・ストリンガーはいらだっていた。2005年にソニーの会長兼CEOになり、「ソニー・ユナイテッド(連帯)」を掲げて改革に取り組んだが、テレビ事業の収益改善はいっこうに進まない。
(日本経済新聞2012年10月3日3面ソニー再起)

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「ボタンの掛け違いは最初からだ。会長兼CEOといえば欧米では会社の全権限を握り、事実上は役員の指名権も持つ。しかしソニーの取締役会はストリンガーを指名したとき、中鉢を社長にすると決めていた。中鉢は「エレクトロニクス事業の詳細をストリンガーに話す必要はない」と思っていた節がある。米国で3年働いた中鉢は英語が話せないわけではないが、積極的に報告を上げることはしなかった」(前掲紙)

古い話で恐縮ですが、文藝春秋2007年2月号に、中鉢氏と評論家の立花隆の対談が「ソニー神話を壊したのは誰だ」というタイトルで掲載されています。

その中の「EVAが総ての元凶」と言う項で、中鉢氏は、大賀社長時代に導入した社内カンパニー制と、出井CEOが導入したEVA経営の弊害がソニーの業績を圧迫しているとして、経営改革について語っています。EVAの導入が研究開発投資の削減を促したと言うのがその理由です。

これを読んで、私はこの人は経営指標の読み方も知らず、社長としての適正を著しく欠いている、と感じたのを覚えています。

今日のエントリーの新聞記事を読んで、中鉢氏の関心は、経営にはなく権力闘争にあったのだと妙に納得しました。このようなわけのわからない人事を決定した取締役会の罪も大きい。

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三菱重工、ROE重視の経営

1905年の創立以来、1600隻を超える船を世に送り出した三菱重工業の神戸造船所が6月、商船建造から撤退した。海外勢との競争激化に耐えられなくなった結果だが、宮永俊一副社長は手応えを感じている手応えを感じている。今回の決定がトップダウンではなく「船舶・海洋事業本部が自発的に考えて、リストラ案をだしてきた」からだ。
(日経ヴェリタス2012年8月13日1面)

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「2010年に発表した中期事業計画でROEを重要な経営指標に掲げた。株主が払い込んだお金でどの程度稼いだかを示し、機関投資家が最も重視する指標だ。三菱重工では約15年前、当時の経営トップが「ROEは眼中にない」と発言し物議を醸したこともある。その企業が今では、事業の「選択と集中」の判断基準にROEの考え方を導入し、現場にも、投資効率を重視する意識が浸透してきた。」(前掲紙)

この経営トップの発言とは、1998年1月14日の日経産業新聞に掲載された相川会長(当時)のインタビュー記事です。これが“株主軽視発言”と受け取られ、長らく投資家の不評を買う破目に陥ることになりました。

以下、インタビュー記事の中でROEに関する部分を抜粋してみます。

日本やアジアの経済危機の一方で、米国の快走ぶりが目立つ。米国型の市場経済万能主義あるいは、株主重視の経営が世界標準になっている。
 「ハーバード・ビジネススクールの発想を日本に持ってきてもらったら困る。資源のある米国と違って日本は付加価値だけで生きて行くしかない。その付加価値をコントロールしてもうけようという金融や証券、商社の分野の方が市場経済万能を言っている。それが利益になるからだ。製造業は発想が違うのだ」
 「私は重工の経営は利益より雇用を重視する、と前々から言っている。最近になってますますその持論が正しいと確信するようになった。我々にはROE(株主資本利益率)など眼中にない。経営の目標にならないからだ。製造業は設備と人間をフルに安定して使うことが経営のポイント。だからいくら受注できるかがまず先にある。重工の株主資本は一兆円あるが、これに対して二割の利益を目標にしろと言われても出来ない。する気もない」

 重工の経営というか、日本の製造業は世界から見て特殊な存在ではないか。
 「白い猫でも黒い猫でもネズミ(利益)を捕る猫がいいという米国型の方がおかしい。製造業は熾烈(しれつ)な競争をし、コストもオープン。そんなにべらぼうに利益が上がるはずがない。海外に出るとか、企業買収とか利益をあげる方法はあるが、重工はそんなことで名声を上げる必要もない。従業員を食わせるだけの仕事を取れば十分だ」
 「今後日本は少子化で人口も増えない。成熟した日本国内でもっと投資をして雇用を増やすとか、技術開発するとか工夫するのも経営者の使命。日本人全体が強欲になり、分をわきまえなくなったことが、バブル経済や今の金融危機の原因だ。大田区の町工場で付加価値をつけた製品を開発している職人や技術者こそ、日本人の原点ではないか」

この記事から15年が経過しようとしていますが、相川氏の主張はいまだに多くの日本の経営者の共感を得られるのではないでしょうか?では相川氏の主張のどこが間違っているのでしょうか?それは利益や株主価値を株主の利益だとみなしているところです。

利益をあげ、ROEを高めることは企業のパイ全体を大きくすることにつながります。そのことは、企業のステークホルダー全員の取り分を大きくすることになるのです。決して株主の利益だけを増やすことにはなりません。

また、ROEは高ければ高いほど良いというものでもありません。長期的な価値創造を可能とする持続可能な水準でなければならないのです。ですから極端なリストラに走り、一時的にROEを上昇させるような経営は意味がないのです。一方、ROEが株主資本コストを下回ることも許されません。株主価値を毀損することは持続を困難にするからです。

三菱重工の2013年3月期予想のROEは3.1%にすぎず、株主資本コスト9.5%(日経ヴェリタス試算)に遠く及びません。2015年3月期にROE8.9%を達成することを目標としていますが、それでも株主資本コストを下回ります。

「理論上はROEから株主資本コストを差し引いた「エクイティ・スプレッド」がプラスにならないと、PBRが1倍を超えないとされます」(日経ヴェリタス2012年8月13日5面)

PBRが1倍以下の企業がごろごろころがっている日本企業の惨状の原因はここにあります。

しかし、日本企業がROEを上げることは容易なことではないというのも事実です。ROEを改善するには、儲からない事業から撤退し、儲かる事業に集中することが必要です。儲からない事業から撤退するには従業員の解雇が不可欠です。しかしこれが日本では簡単にはできないからです。

日本再生のための緊急の課題は、ここにあります。

終身雇用は今や幻想でしかないという現状認識を前提に、解雇された従業員(経営者)が安心して次の職場に務めることができるような仕組みづくりをする、これが今の日本には何より重要です。

そうでないと、国富を創造するM&Aもなかなか実現しませんし、自殺者も減りません。

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ヤオコー、パート社員に権限委譲し、高収益達成

ヤオコーの前期の売上高経常利益率は4.7%と、食品スーパー最大手のライフコーポ(2.2%)や、関東地盤のいなげや(2.0%)を上回る。パートナー社員に権限を委譲する小回りのきく経営が高収益の要因だ。
(日本経済新聞2012年6月13日13面)

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ヤオコー川野清巳社長
「パートナーさん(パート社員)を中心に全員で業務改善に取り組んでいる。毎月、発表会を開き各店舗の従業員が事例を持ち寄る。陳列の工夫や、より少ない人数で売り場を運営する事例などが出る。年100件の事例が集まり良いケースは他店舗に横展開する。」

「店舗では、大半が地元の主婦であるパートナーさんに、価格決定や商品の発注を任せる。顧客目線で適度の値引きをして売り切り廃棄ロスを減らす。売れそうな商品は多めに仕入れる。競合店と同じ商品を売っても、売上高総利益率は0.3~0.5ポイント高い。」
(前掲紙)

パートをパートとして使う限り、人件費の削減や経営効率の改善と、彼(彼女)達の利害とは一致しません。何故なら経営効率の改善とは、少ない給料でこき使われることを意味するからです。かといって正社員の採用を増やし、固定費率を上げていく選択肢もとれません。

ヤオコーは、パートの利害と経営者の利害を一致させるために、パート社員をパートナー社員と呼び、経営の一端を担ってもらうようにしているのです。

パートナー社員にとっても、単に時間を切り売りするだけでなく、やりがいをもって仕事に取り組めるというメリットもあるのです。

人件費の変動費化は、多くの企業に共通する方向性であり、ヤオコーの手法は参考になると思います。

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CFOの仕事 ー アンリツのケース

上場企業は2013年月期に全体で2割を超す経常増益となる見通しだ。東日本大震災やタイ洪水の影響がなくなることが大きいが、独自の取り組みで苦境を脱した企業も目立つ。「復活企業」の道のりをたどる。
(日本経済新聞2012年5月23日13面)

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「倉庫にある在庫の山を直視してほしい。管理を徹底しないと我々は生き残れない」。2008年4月、CFOだったアンリツの橋本裕一専務(現社長)は会議で訴えた(前掲紙)

メーカーの場合、製造と販売のどちらかの発言力が相対的に強い企業が少なからず見受けられます。アンリツの場合は製造が強い会社であったようです。そうすると売れないのは販売部門の責任、ということで在庫が増えていくことになります。

「現場の説得に橋本氏が使ったのが棚卸し資産回転率(売上÷期末棚卸資産)という財務指標だった。回転率が高いと業績が拡大し、低下すると不採算在庫の処分損が発生して赤字転落ー。橋本氏はそんな実態を示し、在庫の効率化を訴えた。
あわせてマーケティング部門と研究開発・生産部門を一本化。需要動向を開発や生産に直接反映できるようにした。
効果は程なく現れる。各部門の連携で生産計画が需要に即したものとなり、在庫の削減に成功。リードタイムも短くなった。2008年3月期に4.9回だった棚卸資産回転率は2012年3月期には6.3回へと上昇した。」(前掲紙)

重要なことは、いかにキャッシュを創造するか、です。

いくら在庫を減らしても、商機を失って売上を大きく減らしたら元も子もありません。従って資産回転率を数値目標として設定するだけでなく、資産回転率を上げるための方策を具体的に示すことがCFOの仕事です。そして目標値と実績を睨みながら各部門と改善策を徹底的に話し合う、といった努力を日常的に続けて行く必要があります。

財務数値を決算取締役会で1年に1回結果だけ並べる会社が少なくないですが、そんな数値に意味はありません。財務数値を”生かす、活かす”ためには、これを経営のツールとしなければ、いけない、今日の記事を読んで、そんなことを考えました。

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IFRSベースのEBITDA-JTのケース

日本たばこ産業(JT)が26日発表した2012年3月期連結決算(国際会計基準)は、純利益が前期比32%増の3208億円だった。
(日本経済新聞2012年4月27日14面)

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「2014年3月期までに連結配当性向を40%(前期は30%)、中長期的には50%に引き上げる。為替変動の影響などを除いたEBITDAでは年平均5%以上の成長を目指す」(前掲紙)

JTは2012年3月期からIFRSの任意適用を開始しました。これに伴い、IFRSベースの「調整後EBITDA」を業績評価指標として採用しています。

「・JTグループの持続的な業績を示すため、「調整後EBITDA」を指標の一つとして採用
・「日本基準による営業利益」 ±各種認識及び測定の差異の調整 ±金融損益以外の非経常的な損益(日本基準における営業外損益や特別損益) =「IFRSによる営業利益」
・「調整後EBITDA」=「IFRSによる営業利益」+減価償却費+無形資産の償却費+ のれんの減損-リストラクチャリングに係る収益+リストラクチャリングに係る費用」
「(参考資料)国際会計基準(IFRS)の2012年3月期からの任意適用について」日本たばこ産業株式会社[PDF] 13頁)

IFRSの営業利益には、日本基準における非経常的な損益も含まれるので、調整後EBITDAにもこういった項目が含まれることになります。
EBITDAマルチプルで企業価値の評価を行う場合には、非経常的な損益項目はEBITDAに含めないことが多く、日本基準の方をベースとする方が適切だと言えなくもありません(JTの「調整後EBITDA」の計算上、非経常的かつ金額的な重要性が通常大きいリストラクチャリング損益のみ調整が行われています)。

JTは、2012年3月期の決算説明資料の中で、「日本基準上のEBITDA」と「IFRS移行後の調整後EBITDA」の調整内容を開示しています。

国内たばこ事業 (億円) 海外たばこ事業 (億円)
日本基準上のEBITDA 2,725 日本基準上のEBITDA 3,126
営業外損益・特別損益からの表示組替 -296 営業外損益・特別損益からの表示組替 -50
認識及び測定の差異 59 IFRS上のEBITDA(営業利益+償却費) 3,076
IFRS上のEBITDA(営業利益+償却費) 2,488 リストラクチャリングに係る収益・費用等の調整 72
リストラクチャリングに係る収益・費用等の調整 134 IFRS移行後の調整後EBITDA 3,148
IFRS移行後の調整後EBITDA 2,623

「(参考資料)国際会計基準(IFRS)の2012年3月期からの任意適用について」日本たばこ産業株式会社[PDF] 14頁)

これを見ても、非経常損益の内容を吟味する必要性を感じます。

【リンク】

「2012年3月期実績及び2013年3月期業績予想」日本たばこ産業株式会社[PDF]

「(参考資料)国際会計基準(IFRS)の2012年3月期からの任意適用について」日本たばこ産業株式会社[PDF]

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アップルのキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)

2012 年 1 月 17 日 コメント 2 件

同社(アップル)の手元資金は現在760億ドル。米政府の現金残高とも肩を並べる水準だ。その強さはどこから来るのか。ヒントは一つの財務指標にある。「キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)」。在庫と売掛金、買掛金を比べ、製品の製造から現金回収にかかる時間を探る指標だ。
(日本経済新聞2012年1月17日1面)

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キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)とは、資金の効率性を示す指標のひとつで、売掛金と在庫の回転日数から、買掛金の回転日数を差し引いて計算されます。

「2010年度はソニーやパナソニックが約40日だったのに対し、アップルはマイナス20日。「iPhone」や「iPad」は実は製造する20日前には回収を終えていることになる。アップルは製品にこだわるだけではない。商品力を武器に、通信会社などと販売代金を前金で受け取る契約を結ぶ。製造は台湾企業などに委託し、流通段階ではケーブル1本まで、販売情報を常時集めている。開発、製造、調達、流通。さらにはネット上での消費動向を一気通貫で把握し、資金回収を最大化する」(前掲紙)

キャッシュ・コンバージョン・サイクルは、単純に小さければ小さいほど良いというものではありません。通信会社等との中長期的な関係が重視される場合には、どんなに商品力があっても過度に回収を早めることは関係を悪化させることにもなり兼ねません。また在庫はバッファーであり、タイの洪水のようなリスクに対応するという意味もあるので、全く持たないのが良いというわけではありません。

CCCに限らず、経営指標は全てそうですが、自社の適正値を認識した上で、更なる経営改善に繋げることが必要です。CCCの場合、無駄を排除する経営ツールとして利用されるべきものです。そのためには何が無駄であるのか(必要であるのか)、しっかりと定義される必要があります。

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