アルバックは13日、優先株の発行で150億円を調達すると発表した。全株を大株主である3メガ銀行などが共同出資する企業再生ファンドに割り当てる。液晶パネル製造装置などの不振で2012年6月期に499億円の連結最終赤字を計上し、自己資本比率は過去最低にまで落ち込んだ。優先株発行で財務基盤を立て直す。
(日本経済新聞2012年8月14日11面)
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「1株1000万円の優先株1500株を新たに発行し、3メガ銀行などが出資するジャパン・インダストリアル・ソリューションズに割り当てる。」(前掲紙)
割当先であるジャパン・インダストリアル・ソリューションズは、ヴィークルとして投資事業有限責任組合を採用しています。
A種類株式の概要は次の通りです。
「1 配当金、残余財産請求権が普通株式に優先する、いわゆる優先株式です。
2 配当率は当初2年9ヶ月間は3.5%、以降は4.0%です。
3 以下の取得条項、取得請求権が付されています。
a.金銭による取得条項(当社が全額現金で償還する権利)
払込金額100円につき、4年後までは115円、5年後までは120円、5年後以降は125円での償還となります。
b.金銭+B種種類株式による取得請求権(割当先の権利)
3年後以降に権利が発生します。払込金額を超える部分(例えば4年後までは115円−100円=15円)
についてB種類株式により償還されます。 B種種類株式には普通株式を対価とする取得請求権(普通株式への転換権)が付されています。
c.普通株式を対価とする取得請求権(割当先による普通株式への転換)
上記a.の取得条項はb.の取得請求権に優先します。
また、上記c.の普通株式への転換については、当初4年9ヶ月間は以下(i)~(iv)の場合以外は行われません。 (i)当社等の債務不履行事由 (ii)割当先との契約義務違反 (iii)償還に必要な分配可能額が不足している場合 (iv)有価証券報告書が提出されない場合」
(第三者割当による種類株式の発行(A 種種類株式)、定款の一部変更、資本準備金の 額の減少並びに株式の発行と同時にする資本金の額及び資本準備金の額の減少に 関するお知らせより抜粋、一部加筆修正)
会社は3年後には全額を現金で償還する予定とのことです。
【リンク】
2012年8月13日「第三者割当による種類株式の発行(A 種種類株式)、定款の一部変更、資本準備金の 額の減少並びに株式の発行と同時にする資本金の額及び資本準備金の額の減少に 関するお知らせ」株式会社アルバック [PDF]
「同」 説明資料 [PDF]
石井表記は12日、第三者割当増資による優先株発行で16億5千万円を調達すると発表した。これにより太陽電池向けシリコンウエハー事業撤退に伴い2012年1月期に発生した21億3900万円の債務超過を解消する。
(日本経済新聞2012年7月13日13面)
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石井表記の優先株式の概要は次の通りです。
「A種優先株式の概要
① 払込期日 平成24年8月31日
② 発行新株式数 75,922株
③ 発行価額 1株につき金10,000円
④ 調達資金の額 759,220,000円
⑤募集又は割当方法( 割当予定先)
第三者割当の方法により、三菱UFJリース株式会社に75,922株を割り当てる。
⑥ その他
上記各号については、平成24年8月30日開催予定の臨時株主総会において、第三者割当に関する議案の特別決議を得ることとしている。また、A種優先株式の発行に必要な定款変更案の承認を得ることを本件優先株式発行の効力発生条件としている。
B種優先株式の概要
① 払込期日 平成24年8月31日
② 発行新株式数 90,000株
③ 発行価額 1株につき金10,000円
④ 調達資金の額 900,000,000円
⑤募集又は割当方法( 割当予定先)
第三者割当の方法により、、株式会社もみじ銀行に対して85,000株、株式会社広島銀行に対して5,000株を、それぞれ割り当てる。
⑥ その他
上記各号については、平成24年8月30日開催予定の臨時株主総会において、第三者割当に関する議案の特別決議を得ることとしている。また、B種優先株式の発行に必要な定款変更案の承認を得ることを本件優先株式発行の効力発生条件としている。
募集の目的及び理由
石井表記は、前連結会計年度で、太陽電池ウェーハ事業の大幅な縮小に伴う多額の当期純損失を計上したことにより債務超過となっており、石井表記グループには継続企業の前提に関する重要な疑義が存在している。当該状況下、平成25年1月期における債務超過を回避し株式上場を維持するとともに、財務体質の抜本的な改善を図るため、取引先金融機関の一部に対して株式発行を行い、調達資金を原資として有利子負債を圧縮すると同時に十分な運転資金を確保するために、三菱UFJリース、もみじ銀行、及び広島銀行に対して、第三者割当の方法により、それぞれA種優先株式及びB種優先株式を発行することとした。」
資金使途
A種優先株式は、割当先である三菱UFJリースから調達した資金を原資として、同社に対する引取保証債務を圧縮することを目的としている。B種優先株式の発行により調達した資金は、リース債務の一部返済資金に、及び将来にわたり石井表記の事業の継続性を確保する目的で運転資金に充てられる。
(「第三者割当による優先株式の発行、定款の一部変更、並びに資本金及び資本準備金の額の減少に関するお知らせ」より抜粋
http://www.ishiihyoki.co.jp/IR/news.html)
いわゆる「企業救済型の優先株式発行」です。日本の上場会社によって発行される優先株式の多くはこのタイプですが、優先株式は企業が資金繰りに窮したような状況でない場合であっても、企業の資本政策に合わせ、もっと柔軟に活用されて良いと思われます。
なお、普通株式のほかに優先株式を発行している未上場のベンチャー企業においては、ストックオプション税制上不適 格とみなされる可能性を恐れ、直前発行優先株式の価格を権利行使価額とし、十分な インセンティブが付与できていない状況にあり、ベンチャー企業においても優先株式の利用はあまり進んでいませんでした。
しかし、経済産業省のウェブサイト(「ストックオプション税制のご案内」経済産業省)において、普通株式のほかに種類株式を発行している未上場会社 が、新たに普通株式を対象とするストックオプションを付与する場合、必ずしも直前の種類株式の発行 価額が権利行使価額の基となる普通株式の価格に該当する訳ではないことが明らかにされており、今後ベンチャー企業においては優先株式を含む種類株式の利用が進むことが期待されます。
【リンク】
株式会社石井表記 ニュースリリース
政府の原子力損害賠償支援機構は、東京電力への資本注入で普通株式に加えて「種類株式」の活用を検討する。種類株はコスト削減などの目標を達成できなかった場合に議決権が発生する仕組みを促す。機構は普通株で過半数、種類株の潜在的な議決権を含めて3分の2以上の取得を目指す。
(日本経済新聞2012年3月15日1面)
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種類株式とは、「剰余金の配当や残余財産の分配、株主総会での議決権などについて、「普通株式」とは異なる権利内容を持った株式をいいます。
「機構は普通株式で過半の議決権を取ることに加え、種類株による出資を検討する。種類株は普段は議決権がないが、コスト削減や収益改善などの目標を達成できなかった場合に議決権が生じたり、普通株に転換したりする仕組みを検討する」(前掲紙)
【リンク】
なし
国内で唯一上場する伊藤園の優先株が、普通株との価格差を縮小している。2009年には普通株より4割安かったが、足元では約2割と3年3ヶ月ぶりの水準まで差を縮めた。
(日本経済新聞2012年1月21日13面)
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「同社の優先株は議決権がない代わりに配当は普通株の25%増し。今期は普通株の年38円に対し48円で、配当利回りは普通株より1.6%高い」(前掲紙)
伊藤園の優先株の価格が普通株の価格を大きく下回る理由として、以前次のように説明されているのを紹介したことがあります(2008年7月19日「無議決権株の価格」)。
①無議決権優先株が東証株価指数に採用されていないため流動性が低い
②普通株にあって優先株にない議決権の価値が大きいから、価格差が拡大している
さらにイタリアや韓国の会社が伊藤園と同様に優先株の価格が普通株の価格を大きく下回る理由として次のような分析がされていることを紹介しました。
「国の法制度や市場のルールが未整備で、企業経営に対する規律付けが弱いと、株主は自ら議決権を握り、株主の利害に背かないよう経営を監視する必要性が増す。その場合、議決権の価値は増大し、結果として無議決権株と普通株の価格差が広がる。」
((日本経済新聞 2008年7月19日 14面 無議決権株を追う㊦))
だとすると、伊藤園の優先株の価格の上昇は、オリンパスや大王製紙の事件を受けて日本企業のガバナンスが今後改善するという期待を反映したものなのかもしれません。
【リンク】
なし
コスモイニシアは23日、金融機関などが保有する優先株を10株に1株に併合する議案を6月29日の定時株主総会で提案すると発表した。
(日本経済新聞2011年5月24日15面)
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株式併合の理由は次の通りです。
「平成21 年11 月6日、当社普通株式10 株を1株に併合したことにより、当社が発行している議決権制限株式(第1種優先株式及び劣後株式)の数が発行済株式の総数の二分の一を超えた状態となっております。
このため、会社法第115 条に基づき、議決権制限株式の数を発行済株式の総数の二分の一以下にするために必要な措置として、第1種優先株式の併合を行うものとし、第1種優先株式について株式併合を禁止する定めを削除するものであります。(変更案1 第11 条の2 第11 項)」
(2011年5月23日「定款一部変更、第1種優先株式の併合及び 第1種優先株式の配当予想の修正に関するお知らせ」株式会社コスモスイニシア [PDF])
株式併合に伴い、配当総額の変更はありません。普通株式を対価とする請求権の実質的な内容にも変更はありません。
また、株式併合に伴い1株に満たない端数も生じない予定であるとのことです。
【リンク】
2011年5月23日「定款一部変更、第1種優先株式の併合及び 第1種優先株式の配当予想の修正に関するお知らせ」株式会社コスモスイニシア [PDF]
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