米企業の積極的な自社株買いが、米国株の最高値を下支えしている。手元資金は収益の拡大で過去最高まで積み上がっており、増配や自社株買いで株主に報いている構図だ。M&A(合併・買収)により成長を模索する動きもあるが、自社株買いで1株利益を向上するよう求める株主の圧力は強い。米企業が有力な株式の買い手として、米株式市場で存在感を増している格好だ。
(日本経済新聞2013年12月26日7ページ )
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「米国では経営者に株主還元の強化を求める「物言う株主(アクティビスト)」の台頭が目立つ。アップルに自社株買いの拡大を求める、代表格は米著名投資家カール・アイカーン氏だ。大手の米公的年金も企業に資金の有効活用を求める姿勢を強め、経営者は株主還元を最優先の課題に掲げつつある。」(前掲紙)
米国と同じことは、時間差があるにしても日本でも起きます。
来年は、今年ソニーであったようなアクティビストとの対話を多くの企業で求められることになりそうです。
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なし
驚異的な運用成績から「オハマの賢人」との異名をとる米著名投資家がウォーレン・バフェット氏が動いた。時価総額が世界2位のエクソン株を大量購入したのだ。米国株式相場が高値のなかでの大胆な決断。その背景を探る。
(日経ヴェリタス2013年11月24日20ページ )
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「長期投資を志すバフェットは必ずしも株式の値上がり益を追うわけではないというのだ。仮に株価が下がったとしても、企業は自社株買いのコストが下がるし、投資家にとっても買い増すチャンスが生まれる。企業が盛んに自社株買いをしてくれると必然的に、持株比率が上がり1株当たりの価値も増すので、長期の投資家にとって有利だというのがカリスマの考え方だ。」(前掲紙)
バフェットは、投資先が自社株買いを行うことを、間接的に株式を買うと表現しています。
自社株買いにより既存株主の出資比率が上がることをこう表現しているのです。
エクソンも高水準の自社株買いを継続しており、バフェットの大量購入の理由もここにある、というのが今日の記事です。
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なし
株式市場で自社株買いを発表した銘柄の値動きが堅調だ。通期業績の予想を下方修正したにもかかわらず、自社株買い発表をきっかけに資金が向かい大幅高となった例も相次いでいる。目立った材料がないなかで、自社株買いが投資家の買い安心感につながり、株価を下支えしているとの指摘もある。
(日本経済新聞2013年11月7日19ページ)
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10月以降に自社株買いを発表した主な銘柄は次のとおりです。
銘柄名 |
発表日 |
発表後騰落率 |
フジクラ |
10月28日 |
14.21% |
●ケーズHD |
10月21日 |
13.83 |
イズミ |
10月3日 |
12.89 |
●CTC |
10月16日 |
9.66 |
●キヤノンMJ |
11月1日 |
9.65 |
●ヤマダ電 |
10月15日 |
6.87 |
宝HLD |
11月1日 |
6.78 |
富士通ゼ |
10月24日 |
6.73 |
● アステラス |
11月1日 |
4.25 |
積水化 |
10月30日 |
2.90 |
●ユニーGHD |
10月3日 |
2.49 |
ヤフー |
10月25日 |
▲ 5.59 |
●ワコム |
10月18日 |
▲ 21.15 |
(出所:前掲紙、●は通期や4~9月期の純利益もしくは経常利益予想を下方修正)
「りそな銀行の下出衛氏は「株主還元策への積極姿勢が評価されている」と指摘。自社株買いの実施は財務面での余力があるとの思惑にもつながり、投資家に買い安心感が広がりやすいという。」(前掲紙)
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世界的に珍しいとされる総合商社のビジネスモデルや将来像を分析したリポート「総合商社原論」を、日本貿易会がまとめた。総合商社は2012年3月期の予想純利益ランキングで上位10社に4社入るなど業績好調だが、株式市場での評価はなかなか高まらない。商社の強みや今後の方向性、海外IRの課題などについて、リポートのとりまとめを指示したう槍田松瑩会長(三井物産会長)に聞いた。
(日経ヴェリタス2012年3月18日20面)
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「-配当や株主還元をどのように充実させていきますか。
三井物産の社長時代、欧米企業の例を調べて、急成長が見込めない会社は配当還元率が高いことが分かった。それならばということで、配当性向を20%に引き上げました。今の飯島社長は25%位にしており、以前より株主還元の充実の方向にカジを切っています。確かに商社は、これから急成長する感じじゃないから、そういう流れになってきたのは間違いないですね」(前掲紙)
急成長が見込めないから、配当還元率を上げるというより、NPVがプラスな投資ニーズがないため、投資機会に乏しく、余剰キャッシュが生まれるから、このキャッシュは、配当か自社株買いに回す、ということです。
「商社のように多様な収益源で成長を担うような業態は、投資の効率性を求める海外の投資家からは敬遠されがち。PER(株価収益率)が高まらない要因のひとつといわれる」
(前掲紙)
確かにファイナンス的には、ポートフォリオは投資家が考えるから、企業は、コア事業に特化すれば良いとよくいわれますが、商社の事業ポートフォリオを機関投資家が簡単に再構築できるとは思えません。リスク分散に長け、安定配当を長期的に継続できるのであれば、それはそれで貴重な銘柄だと思うのです。ウォーレン・バフェットが言うように、株価が上がる銘柄だけが良い銘柄というわかでもない(2012年3月5日「自社株買いの意義 − バフェットの手紙より」)ので、この辺を海外IRで強調すればよいのではないでしょうか。
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・MM命題では配当と企業価値は無関係
・現実には株主還元策が株価に影響及ぼす
・配当や自社株買いのあり方に様々な仮説
(日本経済新聞2009年12月07日21面経済教室土井丈朗慶大教授)
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MM理論によると配当も自社株買いも企業価値には無関連とされていますが、日本では配当の方が好んで行われています。
畠田敬・相馬利行「自社株買いに関する展望」によると、
「配当と自社株買いの両方を行った企業は全体の24%で、配当のみの企業は全体の62%、自社株買いのみの企業は全体の1%弱だった(2002年度~2005年度)」(前掲紙)
米国では、
「2000年に配当だけを行ったのは全体の20%、自社株買いだけ行った企業は45%、両方行った企業は35%と株主還元策として自社株買いが主流」(前掲紙)
との調査結果が紹介されています。
特に自社株買いのみ行った企業が日本の1%に対し、米国では45%もあるというのが面白いですね。
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