ゴルフ場運営2位のPGMホールディングスが同首位のアコーディア・ゴルフに対して実施していた敵対的TOB(株式公開買い付け)が不成立となったことが分かった。応募株式の比率が買い付け予定の下限である20%にとどかなかったとみられる。
(日本経済新聞2013年1月18日9ページ)
【CFOならこう読む】
12月4日のエントリー「TOB開示資料分析】PGM・アコーディアー敵対的買収成るか?」及び
昨日のエントリー「投資会社レノ、アコーディア株買い増し」の続報です。
「最終日の17日、アコーディア株は一時、TOB価格(8万1000円)を上回る8万3800円まで上昇、終値は8万1100円だった。株主配分の強化を巡る思惑などもあり、応募株式が下限を下回ったようだ。」(前掲紙)
投資会社レノがホワイトナイトの役回りを担うことになったということでしょう。
TOBは不成立に終わりましたが、アコーディアはPGM との買付価格を含めた諸条件について交渉(PGM によ るデューディリジェンスの受け入れを含む)の場につくことを約束しており、今後の成り行きが注目されます。
【リンク】
なし
業績不振の企業を買収し経営を立て直した後で売却して利益を得る買収ファンド。危機後の低迷で長引く大手銀を尻目に復調傾向が鮮明になってきた。最大手フラックストーンの運用資産は昨年末時点で1660億ドル(約13兆円)。1年前と比べ3割増え、過去最高となった。
(日本経済新聞2012年6月29日7面)
【CFOならこう読む】
復調の原因は、金融緩和と年金マネーの流入です。
「世界景気の先行き不安もあり、年金基金は株式投資を拡大しにくい。長引くゼロ金利で債券投資の妙味も薄れている。運用不振に伴う積み立て不足に直面する多くの年金は、残る選択肢としてファンドへの資金配分を増やしている」(前掲紙)
日本の特殊性を嫌って一旦縮小したファンドマネーの日本への流入も今後回復してくるものと思われます。何せPBR1倍割れの会社がごろごろ転がっているのですから。
そのためには買収防衛ルールの見直し等、価値創造の重要な担い手であるファンドが、普通に日本で活動できるようインフラを整備することが必須であると思います。
【リンク】
なし
ルノーとの二人三脚でEV時代の盟主をめざす戦略だが、ルノーと日産自動車の間には「資本のねじれ」が横たわっている。
(日本経済新聞2011年10月20日17面)
【CFOならこう読む】
「ユーロネクスト市場に上場するルノーの株式時価総額は約8500億円相当。日産自動車(3兆2000億円)の1/4強にすぎない。ルノーは日産自動車の発行済株式の43%を保有しており、その価値(約1兆4000億円)だけでルノーの時価総額を上回る。
仮にルノーを買収すれば、より価値のある日産自動車を手中にできる計算だ。「小」が「大」を支配する構図となっている」(前掲紙)
グローバル化が進めば、あちこちでこういう問題が起きてくるのでしょう。
買収防衛問題と絡む話なので事は重大です。
以前、親子逆転問題を解決するために、イトーヨーカ堂グループが実行したような組織再編を世界規模で実行する必要があるかも知れませんね。
【リンク】
なし
金融庁は、ライツ・イシューと呼ばれる資金調達手法の利用促進に向け、年内をメドに規制を緩める。ライツ・イシューは既存の全株主に新株予約権を無償で割り当てるのもので、株価下落手法圧力が小さい増資手法として注目を集めている。
ただ、米国法に基づく財務諸表の提出が必要なことが多く、普及の妨げとなってきた。この提出をしなくても済むようにして、企業の機動的な資金調達を後押しするのが規制緩和の内容だ。
(日本経済新聞2011年8月23日4面)
【CFOならこう読む】
「米国株主が10%以上いる場合は、日本企業であってもSEC規則が適用され、目論見書や決算書などをSECに登録し、増資後も継続的に開示する必要が出てくる。
(中略)
そこで金融庁は、資金調達目的のライツ・イシューに限り、米国に居住する株主に新株予約権を割り当てても、行使しないよう制限することを認める。こうすれば、米国法に基づく財務諸表の提出などをしなくて済むようになるからだ」(前掲紙)
要するに、ブルドックソースがスティール・パートナーズに対し行った買収防衛策を、国として正式に認めるということですか。
大前研一氏が『お金の流れが変わった』は、外資が日本に背を向ける契機になったのは、ブルドックソース事件であったと指摘しています。こんなものを国家として正式に認めることになれば、未来永劫外資は日本の市場に背を向けることにもなりかねません。そうなれば、必然的に日本のグローバル企業も日本を出ていかざるを得なくなるでしょう。
関係当局にはぜひとも再考をお願いしたいところです。
【リンク】
なし
学習塾の栄光は15日、通信教育大手、Z会を持つ増進会出版社を引受先とする11億4300万円の第三者割当増資を実施すると発表した。増進会の栄光への出資比率は現在の16%から27.52%に高まる。中部地区を中心に約280の学習塾を運営する、さなるが9月に栄光の筆頭株主となっており、買収防衛的な意味があるとみられる。
(日本経済新聞2010年10月16日12面)
【CFOならこう読む】
プレスリリースによると資金使途は次の通りです。
① 英語教育事業への投資 1,000百万円
② 教材開発 133百万円
この資金使途の合理性について会社は次のように説明しています。
本第三者割当増資により調達する資金は、当社の英語教育事業への投資や教材改訂に充当することにより、収益基盤の多様化・強化を図ることができ、厳しい環境の中、当社の成長を図るとともに、財務体質の一層の健全化につながり、ひいては当社の企業価値及び株式価値の向上に寄与するものと考え、当該資金使途には合理性があるものと判断いたしております。
発行価格は、平成22年10月14日(取締役会決議日の前営業日)の株式会社東京証券取引所における当社普通株式の終値390円に対して、2.31%のディスカウントとなっています。
第三者割当増資の主要目的は買収防衛にあるのか、英語教育事業への投資資金調達にあるのか。前者にあるとすると著しく不公正な方法によって株式を発行することによって株主が不利益を受けるおそれがある場合(不公正発行)に相当する可能性があり、株主は新株発行差止の訴えを提起することができます。また、訴えによって請求を行う場合には、発行差止の仮処分を申請することもできます。
さなるの次の一手が注目されます。
【リンク】
2010年10月15日「業務資本提携、第三者割当により発行される株式募集、主要株主である筆頭株主の異動並びに「その他の関係会社」の異動に関するお知らせ」株式会社栄光 [PDF]
パルコと日本政策投資銀行との資本・業務提携について、パルコの筆頭株主で発行済株式の33.26%を保有する森トラストが反対していることが3日明らかになった。将来の株式数が増加する提携策で株式の希薄化につながるため。ただ、パルコは大量買付行為への対応方針(買収防衛策)を導入済みで、森トラスト側は「敵対的に株式を買い増すことは事実上難しい」としている
(日本経済新聞2010年9月4日)
【CFOならこう読む】
「パルコは8月25日に政投銀を引受先とするCBを発行し150億円を調達することを発表。中国進出など事業拡大を進める計画だ。一方で森トラストは1月下旬にパルコに第三者割当増資の引き受けを提案、出資比率を45~49%前後に引き上げようとしていた」(前掲紙)
パルコとしては森トラストによる1/3超の持分取得を拒否すべく、ホワイトナイトとして白羽の矢が立ったのが政投銀ということなのでしょう。
「森章社長は日本経済新聞の取材に対し「敵対的TOBは考えていないが、株主総会で経営陣の解任動議をだすことを検討したい」と述べた」(前掲紙)
パルコの買収防衛策は、所定のルールを遵守した場合、防衛策の発動はせずTOBによる株主の判断に委ねる、というタイプのものなので、森トラストとしてはTOBを仕掛けても良かったのにと思いますが、後手を踏んでしまった今となっては攻め手が難しくなりました。
CBの株式への転換権は向こう3年間行使できないという条件が付与されているのですが、パルコ側の承認があればこの制限は解除できる設計になっています。
【リンク】
2010年8月25日「株式会社日本政策投資銀行との資本・業務提携及び第三者割当による無担保転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」株式会社パルコ [PDF]
2010年4月10日「大規模買付行為への対応方針(買収防衛策)に関するお知らせ」株式会社パルコ [PDF]
上場企業の間で敵対的買収に対する防衛策を廃止する動きが相次いでいる。10日はモスフードと東洋シャッターが廃止を発表した。リーマン・ショック後の海外投資ファンドの退潮や、買収防衛策の存在が市場で否定的に受け取られかねないとの企業の懸念が背景にあるようだ。
(日本経済新聞2010年5月11日13面)
【CFOならこう読む】
「防衛策廃止の背景にはTOB(株式公開買い付け)ルールの改正もある。金融商品取引法の改正で、買収企業は買収目的などに関する被買収企業からの質問に回答する義務が生じ、企業は自前で防衛策を設ける必要性が薄れた」(前掲紙)
事前警告型の買収防衛策は、公開買付者に対し株主がTOBに応募するか否かを判断するための十分な情報提供を行なわせることを主たる目的として会社が自主的に導入しているものです。
法改正により、公開買付者による情報提供内容の充実や公開買付対象者に質問権の付与等(質問がある場合には「意見表明報告書」に記載されます。これを受けて公開買付者は質問に対する回答を「対質問回答報告書」に記載して5日以内に提出する義務があります)がなされ、情報提供の強化が図られたため、事前警告型の買収防衛策を維持する意義がうすれている、とい今日の記事は報じているのです。
【リンク】
なし
学習研究社 <9470> は13時30分に、事実上の筆頭株主である投資ファンドのエフィッシモキャピタルマネージメントから株式の買い取り請求を受けたと発表した。買い取り価格や支払時期については今後協議するため、未定としている。
(Yahoo!ファイナンス 2009年9月30日)
【CFOならこう読む】
学研は本日(10月1日)を効力発生日として株式会社学研ホールディングスに社名を変更、株式会社学研エデュケーショナルなど14社に分社化し持株会社制に移行しました。
本件については、6月25日の定時株主総会で承認決議されていますが、エフィッシモキャピタルマネジメントは総会に先立ち本件議案に反対し、株式買取請求権の行使を行ったということです。
会社法では、株式買取請求をする株主は、当該行為の効力発生日の20日前から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の種類・数を明らかにしなければならないとされています(会社法116条5項)。
会社法制定前は、株式買取請求ができる期間は、総会決議の日から20日以内とされていましたが、会社法では、株式買取請求の撤回に制限が設けられたことから、請求者に従来より慎重な判断が要求されるので、行使期間を効力発生日に近づけ、会社の状況の把握を可能にする趣旨で改正がなされています(商事法務1753号 「組織再編行為」相澤哲/細川充)。
したがって効力発生日前日である9月30日における株式買取請求権の行使は適法です。
ところで、エフィッシモキャピタルマネジメントとは、「村上ファンド」の元社員が立ち上げたファンドとして有名ですね。同ファンドは、昨年、学研の遠藤社長の解任要求を突きつけたりもしたわけですが、ここでお開きということなのでしょう。
学研は買収防衛策発動ができるのは20%以上の株主としており、株式の買い増しもできず、ファンドの声は会社に届かず、で打つ手がないという判断なのでしょうか?
【リンク】
2009年6月25日「第 63 回定時株主総会決議ご通知」株式会社学習研究社[PDF]
東京証券取引所は8月をめどに、東証の規則に違反した上場企業への罰則の種類を増やす方針だ。同じ違反行為に対して複数の罰則を用意し、悪質さに応じて使い分けるようにする。上場企業に法令順守や情報開示への姿勢を強化するよう促し、投資しやすい環境整備に役立てる。
(NIKKEI NET 2009年7月23日)
【CFOならこう読む】
今回の改正で、
1.大幅な株式分割で市場が混乱した場合
2.MSCBの発行で株主の権利を損なった場合
3.第三者割当増資で株主の権利を損なった場合
4.大規模な株式併合で株主の利益を侵害した場合
企業名の公表、違約金の徴収、改善報告書の提出、特設注意市場銘柄に指定、のいずれも可能になります。
「発行済株式数の25%以上3倍未満の第三者割当増資では、外部の有識者に客観的な意見を求めることなどを義務づけた。違反すると従来は公表措置どまりだったが、今後は違約金の支払いなど複数の罰則を受ける可能性がある。3倍以上の第三者割当増資をした企業は、上場廃止の審査対象とすると新たに規定した」(前掲紙)
何故20%ではなく、25%なのかについて納得できる説明して頂きたい。
もともと25%という水準には、株式相互保有の規制の必要性から、これ以上の株式を有する場合、保有された会社が有する保有した会社の議決権を行使できないという会社法の規定があり(会社法308条1項括弧書き、325条)、一定の抑止力が働いています。
北越・王子のケースで、北越の三菱商事に対する第三者割当増資は24%(25%ではなく)でした。
こういう買収防衛策を市場ルールで規制しようというのが、もともとの議論の発端であったと記憶していますが、東証はこの点どのように考えているのでしょうか?
【リンク】
なし
今年の株主総会では買収防衛策の新規導入案が急減する。M&A助言会社のレコフによると、2008年6月~2009年5月末に導入を発表した企業数は20社強と、前の1年間に比べ約9分の1に減った。5月末時点の導入企業は約570社。前年同月とほぼ同水準だった。有力企業による導入が一巡したほか、金融危機を受けて投資ファンドなどの投資余力が弱まり、企業の警戒感が薄れてきたことが背景だ。買収防衛策を廃止する動きも徐々に広がっており、直近1年間で防衛策の継続を止めた企業は19社に上った。廃止を決めたロームは「導入当時と比べ制度整備が進んだうえ、経済情勢が変わって濫用的買収のリスクが減った」(広報IR)という。
(日本経済新聞2009年6月17日9面)
【CFOならこう読む】
5月11日にロームがリリースした、「当社株式の大量買付けに関する適正ルール(買収防衛策)」の廃止に関するお知らせで、廃止の理由が次のように説明されています。
「一方、適正ルールを導入後、改正された金融商品取引法により、1 経営関与に向けた重大提案行為等を目的とした株式取得には特例報告制度の適用が認められず「大量保有報告書」提出(5営業日以内)が義務付けられ、2 公開買付けが開始された場合には発行会社による「買付期間延長請求」、「質問権行使」が可能になる等、当社株主によるインフォームド・ジャッジメントに必要な情報と時間の確保に向け、一定程度、制度上の進展がみられることとなりました。」
ここに書かれている金商法の規定を以下解説します。
上場株券等の保有者でその保有割合が5%を超える者を大量保有者といい、大量保有者となった日から5営業日以内に大量保有報告書を提出しなければなりません。しかし、機関投資家は日常の営業活動を通じて反復継続的に株券等の売買を行っているので、そのつど大領保有報告書を提出することになると、事務負担が過大になります。
そこで機関投資家については、それぞれ基準日(月2回)を届け出ておいて、その日の保有株券等の数を報告すればよいということになっています。企業側にとっては、この制度は買収者が現れてもタイムリーにその把握が出来ず、十分な対応が出来ないということにもなりかねないため、金商法は、「発行者の事業活動に重大な変更を加え、又は重大な変更を加え、又は重大な影響を及ぼす行為として政令で定めるもの(重要提案行為等)を行うことを保有の目的」とする場合には、特例報告制度の利用を許さなないとしています(金商法27条の26第1項)。
公開買付期間は、公開買付の公告を行った日から起算して20営業日以上で60営業日以内でなければならないのですが、買付者が設定した買付期間を20営業日台に設定した場合には、対象者は、買付期間を30営業日まで延長することを請求できます(金商法27条の10第2項2号)。対象者に対抗提案をしたり、株主に十分な情報提供を行う時間的余裕を与えるためです。
また、公開買付の対象者による意見表明報告書に公開買付者に対する質問を記載することができます。この場合、買付者は、意見表明報告書の送付を受けた日から5営業日以内に「対質問回答報告書」を提出しなければなりません(金商法27条の10第11項・13項、27条の14)ロームが言っているのは、買収防衛策を使わなくても、「株主が、十分な情報に基づき相当な検討期間をかけて適正な判断ができること(インフォームド・ジャッジメント)」が可能となるような法整備がなされたということなのです。
「エービーシー・マートによる株取得が注目を集めているユナイテッドアローズは、4月に取締役会決議で防衛策を導入したが、総会では改めてその是非を株主に判断してもらう」(前掲紙)
ABCマートは濫用的買収者(強圧的買収者又はグリーンメーラー)であるはずがなく、買収防衛策の発動は出来ません。また、ロームが言うようにインフォームド・ジャッジメントが法的に確保されいるなら、Uアローズの買収防衛策導入に全く意味がないということになります。
6月4日に書いたように、私自身はABCマートがUアローズを買収しても価値創造につながらないと思っていますが、それと買収防衛策の導入の是非は全く別の議論です。
この点株主がどのように判断するか注目されます。
【リンク】
2009年5月11日「当社株式の大量付けに関する適正ルール(買収防衛)の廃止に関するお知らせ」ローム株式会社
最近のコメント