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米国、アクティビスト台頭

米企業の積極的な自社株買いが、米国株の最高値を下支えしている。手元資金は収益の拡大で過去最高まで積み上がっており、増配や自社株買いで株主に報いている構図だ。M&A(合併・買収)により成長を模索する動きもあるが、自社株買いで1株利益を向上するよう求める株主の圧力は強い。米企業が有力な株式の買い手として、米株式市場で存在感を増している格好だ。
(日本経済新聞2013年12月26日7ページ )

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「米国では経営者に株主還元の強化を求める「物言う株主(アクティビスト)」の台頭が目立つ。アップルに自社株買いの拡大を求める、代表格は米著名投資家カール・アイカーン氏だ。大手の米公的年金も企業に資金の有効活用を求める姿勢を強め、経営者は株主還元を最優先の課題に掲げつつある。」(前掲紙)

米国と同じことは、時間差があるにしても日本でも起きます。
来年は、今年ソニーであったようなアクティビストとの対話を多くの企業で求められることになりそうです。

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なし

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規制改革、新規上場時の企業情報開示の合理化

政府の規制改革会議は5日、答申をまとめ、安倍晋三首相に提出した。
(日本経済新聞2013年6月6日5ページ )

【CFOならこう読む】

答申の項目の中に、新規上場時の企業情報開示の合理化があります。その要旨は次の通りです。

「新規上場のコスト低減のため、有価証券届出書で提供が求められる財務諸表の年数限定や内部統制報告書の提出にかかる負担を一定期間低減するなど、情報開示の合理化を検討」(前掲紙)

この具体的な内容については、4月11日の創業等ワーキング・グループ 議事概要に記載があります。

「現在の制度ですと、 IPOのときに提出いただく有価証券届出書には、5年分の財務諸表を記載する必要がござい ます。また、上場いたしますと、事業年度ごとに内部統制報告書を提出しなければならな いということになっておりまして、この内部統制報告書は公認会計士による監査を受けて、 監査証明をつけていただかないといけないという取扱いになってございます。こういうこ とがIPO企業の負担になっているという御指摘もございますので、この新規上場のコストを 低減させるという観点から、内部統制報告書の提出に係る負担を一定期間軽減することと か、有価証券届出書において提供が求められている財務諸表の年数を限定するというよう な見直しができないかということを今、考えているところでございます。」(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg/sogyo/130411/summary0411.pdf 23頁)

特に上場申請期から内部統制監査を必要とするので、その準備を上場準備と合わせて進める必要があり、この負担が大きいという声は確かにあります。上場申請期の翌年から内部統制監査を要することに変えれば、負担はかなり減るものと思われます。

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なし

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企業財務箴言集ージョンソン・エンド・ジョンソン ゴースキー最高経営責任者

ダウ工業株30種平均が市場最高値に迫る米国株。大胆な経営資源の組み替えで企業の利益水準は戦後最高に達し、自社株買いで資本効率化の手を緩めない。株式の価値をいかに磨き上げるか。
その飽くなき追求こそが米国の株式文化であり、力を改めて見せたのが危機後の5年間だといえる。
(日本経済新聞2013年2月19日17ページ 一目均衡 藤田和明「株式価値磨く米の伝統」)

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「50年連続増配の医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン。1月の決算発表もゴースキー最高経営責任者は自信にあふれていた。
『株主へのリターンこそが我々にとっての品質証明だ』。
研究開発も利益配分の方針もバリューという言葉に常に結びつけて説明していた。昨年夏には1超円超の自社株買いも実施し、株価は最高値を更新中だ。」(前掲紙)

「株主へのリターンこそが我々にとっての品質証明だ」。

至極、名言。
こういう言葉が日本企業の経営者から普通に聞かれるようになるのはいつの日か。

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なし

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ソニー自己資本比率40%目標

ソニーの加藤優最高財務責任者(CFO)は4日、日本経済新聞の取材で、2015年3月期の自己資本比率を40%以上に引き上げる考えを示した。業績回復による利益の積み上げや、11月末に発行した1500億円のCBの株式転換などで、9月末(27.1%)に比べ、10ポイント以上の改善を狙う。
(日本経済新聞2012年11月30日1面)

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「4~9月期の決算発表以降も格付け会社による格下げが相次いでおり、4日にはR&Iが、収益回復の遅れなどを理由に発行体格付けをシングルAに引き下げると発表した。」(前掲紙)

CBの株式転換による希薄化をきらって株価を大きく下げている中、CFOが今言うべきことではないように思います。今強調すべきは、格付けなんぞではなく成長シナリオでしょう。

CFOの一言は場合に寄っては会社の命運を左右します。

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中期経営計画、当期純利益では75%もの企業が未達

・企業価値の長期低落の一因は経営能力低下
・資本市場からの信頼感低下も価値低落招く
・日本企業では中期経営計画の未達が恒例化
(日本経済新聞2012年9月5日29面経済教室 伊藤邦雄一橋大学教授)

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3番目の点について、伊藤教授は次のように指摘しています。

「横浜市立大学の中條祐介教授が昨年3月に日本企業の経営企画担当者を対象に実施した調査結果で証明されている。日本企業の約9割が中期経営計画を策定し、6割強がそれを外部に開示しているが、約15〜20%の企業が社内用と社外用で中期経営計画を使い分けている。驚くべきは、中期経営計画の達成状況である。売上高では20%、営業利益では約50%、そして当期純利益にいたっては75%もの企業が未達である」(前掲紙)

中期経営計画の未達の原因は、いろいろだとは思いますが、もともと計画を達成目標と位置付け、あえて達成が困難な水準に設定する会社も少なからず存在します。従って、この結果だけをもって、日本企業の経営者の経営能力に問題があるとするのは、少し言い過ぎだと思います。

この数値から見えてくるのは、売上目標だけは何としても達成させたいという経営者の意思です。

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東証、予想の開示推奨

上場企業による業績予想の開示多様化を検討している東京証券取引所は、社内に収益の計画や目標数値がある場合、従来通り売上高、利益の予想を公表するよう推奨する方針を決めた。
(日本経済新聞2011年12月28日13面)

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「新しい予想開示は2012年3月期の決算発表から実施する方針。自主的で多様な開示方法を認める。予想に幅を持たせて開示したり、米国企業のように1株当たり利益の予想を公表したりする企業も出てきそうだ。予想を出さない場合に求めていた事前相談や理由の公表なども不要にして、企業の自主性を重視する」(前掲紙)

新しい予想開示の方向性は、今年7月に公表された「「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書」に従った形で行われます。

報告書の概要は以下の通りです。

「通期の決算発表時に売上高・利益等の所定の項目について特定の値による開示を行うと いう原則的な取扱いにこだわり過ぎると、合理的とは言えない業績予想の開示が行われた り、上場会社に必要以上の負担をかけたりするおそれが高い。そこで、経営者自身の合理 的な評価や見通し等に基づいて、経営成果に係る直接的な予想が示される規格化された開 示の有用性を確認しつつ、上場会社各社の実情に応じて、多様な方法による柔軟な開示を 積極的に行い得るようにすることが望まれる。

✔ 開示内容
・ 予想値に一定の幅が出るケースやすべての項目を予想することが難しいケースについては、
諸外国で、一定の幅を持った表現が使われていたり、開示項目が各社で異なっていたりする
ことが参考となる。
✔ 開示時期
・ 決算発表の時点で業績予想を有していない場合には、投資判断上重要な情報格差を生じさ せないという観点から、その後、合理的な業績予想を有した時点で開示をすることが重要。
✔ 予想対象期間
・ 1年の見通しが難しい場合には、各社の状況に応じた期間を対象として開示する例が参考
となる。
✔ 将来予測情報の提供、補足説明等の充実
・ 売上高・利益以外の経営指標など、様々な将来予測情報を開示することは有用。また、前 提条件や変動可能性等の説明が重要。今後補足説明の重要性は一層高まる。」

予想を出さないことも容認されますが、大幅な財務数値の増減が見込まれる場合、具体的には予算や計画が前期実績と比べ売上高で1割、利益で3割以上増減する場合は、適時開示の義務が生じる、というのが今日のニュースです。

多くの会社において、予算は達成目標と位置付けられています。達成目標ですから、売上高1割増なんていうのは普通に見られます。こんなものを適時開示する必要性は全くないでしょう。東証の方向性は良いと思いますが、詳細なガイドラインがないと実務サイドは相当に混乱すると思います。

年内の更新はこれで終わりにします。2012年が世界中の人々にとって良い年でありますように。

【リンク】

「決算情報の適時開示制度 業績予想開示」

 

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東証、業績予想の多様化検討

上場企業が決算時に公表している業績見通しについて、東京証券取引所は2012年春に、公表方法を多様化する方向で調整に入った。売上高、利益、配当の予想数値を定型の書式に従って決算短信に記入することを求めてきたが、独自の方法で見通しを公表したい企業や経営状況の変化が激しい企業などに配慮。こうした企業には、統一様式にこだわらず「自主的に予想を開示するよう促す」(東証幹部)方針。
(日本経済新聞2012年10月14日15面)

【CFOならこう読む】

「今回の業績予想の多様化は、表記方法に自由度が増すため、運用を誤れば投資家への情報開示が後退しかねないリスクをはらむ」(前掲紙)

確かにそういうリスクはありますが、統一様式による業績予想の開示を事実上強制する現在のやり方が、経営者に対し必要以上のプレッシャーを与え、場合によっては決算操作や粉飾につながる、というケースも少なからずあるように思えます。

現代のようにマクロ環境や最終消費者の嗜好の変化が激しい時代においては、多くの企業の経営者にとって1年後の業績を予想するのは困難です。また、それは本来経営者の仕事ではなく、投資家の仕事です。

ただし、経営者は、投資家の意思決定にとって有用なディスクローズを今まで以上に適時的確に行うことで、情報開示の質を高める努力を求められるようになることは間違いありません。

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総配分性向

精密大手が株主への利益配分方針を明確に打ち出そうとしている。リコーやセイコーエプソンは総配分性向(純利益のうち配当・自社株買いに充てる比率)などの数値目標を導入する考え。リストラ効果で安定して収益を確保できる体制が整ったと判断し、株主重視を鮮明にする。
(日本経済新聞2011年6月22日15面)

【CFOならこう読む】

「富士フィルムホールディングスは2005年3月期以降、総配分性向を30%以上としてきた。今期も増収増益の公算が大きく、この水準を維持する見通しだ」(前掲紙)

富士フィルムの場合、記事では30%と書かれていますが、ウェブでは配当額と自己株式取得額を合算した金額の連結純利益に対する比率である株主還元性向(注)の目標を25%としています。
「株主還元」富士フイルムホールディングス

ただ有価証券報告書の配当政策には株主還元性向についての記載はなく、IRとしては分かりづらいように思います。

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2010年3月決算企業の有価証券報告書の株主総会前提出

上場企業の間で、定時株主総会前に有価証券報告書を開示する動きが徐々に広がっている。3月期決算企業で総会前開示を行う企業は18社と前年から4社増える見通しだ。ヤマトホールディングスなどが開示に踏み切っており、株主や投資家への情報開示を充実する狙いがある。
(日本経済新聞2011年6月15日15面)

【CFOならこう読む】

2009年12月の「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正により、有価証券報告書を定時株主総会前に金融庁に提出することが可能になりました。それ以前は有報の添付書類として、総会で提出した計算書類と事業報告書を求められていましたが、総会で報告・承認予定の内容の添付で済むように変更になっています。

株主総会前に有価証券報告書を提出する(又は提出する予定の)主な企業は次の通りです。

提出日 総会日
滋賀銀行 9日 24日
三洋化成 10日 17日
大阪証券取引所 14日 22日
鳥居薬品 16日 22日
松井証券 20日 26日
ヤフー 22日 23日
ヤマトHD 24日 28日
日産化学工業 27日 28日

(前掲紙)

こう書いてみて、株主総会の集中日である29日に株主総会を開催する企業がないことに気づきました。株主を大切に考えているのでしょうね。

ヤフーのように、総会日の前日提出であっても、株主にとっては有益でしょう。CFOの負荷は重くなりますが、早期開示に向けて努力する必要があるように思います。

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なし

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業績見通し「非開示」と株価への影響

東日本大震災の影響で、今期の業績見通しを公表しない企業が相次ぎ、投資家が対応に苦慮している。買いか売りか判断が難しく、値動きが荒くなるケースが多い。2011年3月期決算発表の本格化を控え、相場の混乱要因となる可能性も指摘されている。
(日経ヴェリタス2011年4月24日24面)

【CFOならこう読む】

3月期決算で業績「非開示」と発表した安川電機とJFEの株価の反応は次の通りです。

安川電機 20日大引け後に決算発表

21日 前日比 2.3%下落
22日 前日比 7.3%上昇

JFE 21日14時に決算発表

21日 発表後買いで反応
22日 前日比 2.8%下落

「「非開示」の初期反応としては今のところ明確な反応は見られず、投資家は判断の軸を見失っているように映る」(前掲紙)

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なし

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