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【資本政策詳解】アイ・ケイ・ケイ

2010年 7月 20日

アイ・ケイ・ケイの株式上場の概要は次の通りです。

アイ・ケイ・ケイは、ゲストハウス・ウェディング形式(注)の挙式・披露宴に関する企画・運営等のサービスの提供を、連結子会社である株式会社極楽は、葬儀に関する企画・運営等のサービスの提供を行っている企業グループです。

公募価格は1,320円、、予想PER5.2という水準での株式公開となりました。

アイ・ケイ・ケイの主な資本政策は (表2)の通りです。

2006年4月30日に極楽を株式交換により100%子会社としています。
2005年10月31日現在、極楽はアイ・ケイ・ケイ不動産が61.0%を直接所有し、当社役員金子和斗志、金子和枝、金子晴美および松本正紀が35.5%を直接所有していました。

アイ・ケイ・ケイ不動産は、2006年3月にアイ・エスへ社名変更しています。同社はそれまでアイ・ケイ・ケイの子会社でしたが、取締役の兼務の解消、取引の解消等により、2006年4月に支配力基準による子会社に該当しないことになりました。なお、アイ・エスは金子和斗志氏、金子晴美氏およびその近親者が100.0%を直接所有しているとのことです。

資本関係だけから見ると、何故アイ・エスが子会社に該当しないのかわかりません。

2006年4月にアイ・ケイ・ケイは、アイ・エスから婚礼事業(主として土地・建物およびこれに関連する借入金)を譲受けるとともにホテル事業を譲渡しており、ホテル利用に関し、少なくとも2008年10月期においてはアイ・ケイ・ケイとアイ・エスは取引を行なっていました(2009年10月期においては開示対象からはずれており、当該期間に取引があるかどうか不明です)。

第三者割当、株式交換比率、ストックオプションの行使価格等は、時価純資産価額に基づき決定されているのが特徴的です。

上場後時点で員金子和斗志氏、金子晴美氏および資産管理会社であるエム・ケイ・パートナーズ合計で2/3の持分を確保する資本政策となっており、昔ながらの伝統的な資本政策と言えます。

従業員に対するインセンティブは従業員持株会とストックオプションによっています。

吉永 資本政策詳解

「A-」以下の社債、発行額4年ぶり高水準

2010年 7月 17日

格付けがシングルAマイナス以上と相対的に低い普通社債の発行が増えている。2010年1~6月の発行額は前年同期比2倍の1兆273億円と、半年ペースでは4年ぶりに1兆円を上回った。超低金利で機関投資家は運用難に悩んでおり、調達コストが低い今のうちに発行しようという企業が多いためだ。欧州の財政不安はなお根強く、投資家が銘柄を選別する動きも強まっている。
(日本経済新聞2010年7月17日15面)

【CFOならこう読む】

社債の主な買い手である金融機関が貸し出しを増やせず、少しでも利回りの高い運用先を求めるようになったのが原因だ。発行条件の目安となる国債利回りへの上乗せ幅はシングルAマイナスで、0.95%と、リーマン・ブラザーズ破綻前の2008年2月の水準まで縮小した」(前掲紙)

主な社債の発行条件は次の通りです。

東芝
第48回無担保社債
社債総額    金500億円
各社債の金額  金100万円
利率      年1.05%
年限       3年
格付け     A─(R&I) BBB(S&P) Baa2(ムーディーズ)

第49回無担保社債
社債総額    金700億円
各社債の金額  金1億万円
利率      年1.18%
年限       4年
格付け     A─(R&I) BBB(S&P) Baa2(ムーディーズ)

三菱マテリアル
第23回国内普通社債
社債総額    金100億円
各社債の金額  金1億万円
利率      年1.61%
年限       5年
格付け    BBB+(R&I)BBB+(JCR)

アコム
第53回国内普通社債
社債総額    金100億円
各社債の金額  金1億万円
利率      年3.54%
年限       2年2ヶ月
格付け     A─(R&I)A(JCR)

日産
第53回国内普通社債
社債総額    金200億円
各社債の金額  金1億万円
利率      年1.744%
年限       10年
格付け     A─(R&I)

全日本空輸
第27回国内普通社
社債総額    金200億円
各社債の金額  金1億万円
利率      年1.71%
年限       5年
格付け     A─(JCR)

プロミス
第42回期限前償還条項付無担保社債
社債総額    金100億円
各社債の金額  金1億万円
利率      年3.5%
年限       5年
格付け     A─(JCR)BBB+(R&I)

【リンク】

東芝<6502.T>が4年・700億円SB発行条件決定、スプレッド0.50%=利率1.18% 2010年 01月 15日 10:21 JST

東芝<6502.T>、3年・500億円の個人向け国内SB発行条件を決定=利率1.05% 2010年 01月 15日 10:26 JST

三菱マテリアル<5711.T>、5年・100億円国内SBの発行条件を決定=利率1.61% 2010年 01月 29日 10:26 JST

アコム<8572.T>、2年2カ月・100億円の国内SB発行条件を決定=利率3.54% 2010年 01月 22日 11:05 JST

日産自動車<7201.T>、10年・200億円SBの発行条件を決定=利率1.744% 2010年 04月 22日 10:21 JST

全日本空輸<9202.T>、期間5年の国内SB発行条件を決定=利率1.71% 2010年 04月 16日 10:30 JST

吉永 資金調達

アパマン最高裁判決ー完全子会社化のための株式買取価格額面の5万円でOK?

2010年 7月 16日

貸仲介のアパマンショップホールディングスが傘下企業を完全子会社化した際、株式の買取価格を額面通りの1株5万円としたのは高すぎるとして、株主が経営陣に損害賠償を求めた株主代表訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は15日、株主側の請求を認めた二審・東京高裁判決を破棄した。経営側の逆転勝訴が確定した。
(日本経済新聞2010年7月16日42面)

【CFOならこう読む】

「アパマンショップHDは2006年、月決めマンション事業を手がける傘下の「アパマンショップマンスリー」を完全子会社化するため、同社の少数株主から1株当たり5万円、総額1億5800万円で株式を買い取った。これに対し、マンスリー社の資産状況が悪化していたことなどから、HDの株主が「(マンスリー社の)株式の評価額は8千万円余りにとどまる)と訴えていた」(前掲紙)

会社は、株式買取りに応じない株主が出てくることに備え、株式交換の準備も同時に進めていて、監査法人等2社に株式交換比率の算定を依頼していました。提出された交換比率算定書の一つにおいては,Aの1株当たりの株式評価額が9709円,他の一つにおいては,類似会社比較法による1株当たりの株主資本価値が6561円ないし1万9090円とされたおり、これと比べ5万円の株式買取価格は高いということで株主代表訴訟が提起されました。

マンスリー社は,主として,備品付きマンスリーマンション事業を行うことなどを目的として平成13年に設立された会社であり,設立時の株式の払込金額は5万円でした。マンスリー社の株式は,発行済株式の総数9940株の約66.7%に相当する6630株をHDが保有していたが,本体の事業の遂行上重要であると考えていた本体のフランチャイズ事業の加盟店等もこれを引き受け,保有していました。

加盟店の関係を良好に保つために、当初の払込み価額で株式買取を行なう必要性があると経営陣が判断し、またその判断の妥当性について弁護士の意見も聴取していたということです。

これに対し最高裁は次のように経営陣の責任は問われない旨判示しています。

「以上の見地からすると,参加人がAの株式を任意の合意に基づいて買い取ることは,円滑に株式取得を進める方法として合理性があるというべきであるし,その買取価格についても,Aの設立から5年が経過しているにすぎないことからすれば,払込金額である5万円を基準とすることには,一般的にみて相応の合理性がないわけではなく,参加人以外のAの株主には参加人が事業の遂行上重要であると考えていた加盟店等が含まれており,買取りを円満に進めてそれらの加盟店等との友好関係を維持することが今後における参加人及びその傘下のグループ企業各社の事業遂行のために有益であったことや,非上場株式であるAの株式の評価額には相当の幅があり,事業再編の効果によるAの企業価値の増加も期待できたことからすれば,株式交換に備えて算定されたAの株式の評価額や実際の交換比率が前記のようなものであったとしても,買取価格を1株当たり5万円と決定したことが著しく不合理であるとはいい難い。

そして,本件決定に至る過程においては,参加人及びその傘下のグループ企業各社の全般的な経営方針等を協議する機関である経営会議において検討され,弁護士の意見も聴取されるなどの手続が履践されているのであって,その決定過程にも,何ら不合理な点は見当たらない。

以上によれば,本件決定についての上告人らの判断は,参加人の取締役の判断として著しく不合理なものということはできないから,上告人らが,参加人の取締役としての善管注意義務に違反したということはできない。」

要するに、経営上の合理的な理由があれば、時価と異なる価格で株式の売買を行なうことが認められるということです。

【リンク】

「平成21(受)183 損害賠償請求事件 平成22年07月15日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所」[PDF]

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吉永 M&A ,

サンリオ優先株40万株強制償還

2010年 7月 15日

サンリオは14日、取引銀行2行が保有する優先株100万株のうち、40万株を買入消却すると発表した。普通株への転換による希薄化を避けるのが狙い。プレミアムなどを含めた取得額約43億円は手元資金でまかなう。7月末に買い取り、10月をめどに消却する。
(日本経済新聞2010年7月15日15面)

【CFOならこう読む】

B種優先株式は、2005年3月にA種優先株式とともに2010年3 月23 日以降普通株への転換請求権を行使できる条項が付されていました。B種優先株式の内容は次の通りです。

「1. 種類株式の名称 株式会社サンリオB 種優先株式(以下「B 種優先株式」という。)
2. 発行新株式数 1,000,000 株
3. 発行価額 1 株につき10,000 円
4. 発行価額の総額 10,000,000,000 円
5. 発行価額中資本に組み入れない額
1 株につき5,000 円
6. 資本組入額の総額 5,000,000,000 円
7. 申込期日 平成17 年3 月22 日(火)
8. 払込期日 平成17 年3 月23 日(水)
9. 配当起算日 平成17 年3 月23 日(水)
10. 発行方法
第三者割当の方法により、下記会社に以下のとおり割り当てる。
株式会社東京三菱銀行 900,000 株
株式会社みずほコーポレート銀行 100,000 株

B 種優先配当年率=日本円TIBOR(半年物)+4.0%

平成19 年3 月23 日(金)以降、いつでもB 種優先株主またはB 種優先登録質権者の意思にかかわらず、B 種優先株式の全部または一部を償還することができる。一部償還の場合は、直前期末の優先株主名簿に記載された所有株式数による比例配分とし、償還価額は、B 種優先株式1 株につき発行価額に107%を乗じた価額に、償還日の属する営業年度におけるB 種優先配当金の額を償還日の属する営業年度の初日から償還日までの日数(初日および償還日を含む。)で日割計算した額(小数第3 位まで算出し、その小数第3 位を四捨五入する。)を加算した額とする。」
(2005年2月9日 第三者割当増資(普通株式・優先株式)に関するお知らせ)

今回取得されるB種優先株式は、みずほ分が40,000株、三菱分が360,000株の合計400,000株です。

会社はこれに先立ち、2008年の定時株主総会で、資本準備金をその他資本剰余金へ振替を決議し、B種優先株式の強制償還の原資の一部として充当できることとしています。

【リンク】

2010年7月14日「自己株式(B 種優先株式)の取得に関するお知らせ」株式会社サンリオ
2010年5月29日「優先株式の強制償還に関するお知らせ」株式会社サンリオ
2010年2月9日「第三者割当増資(普通株式・優先株式)に関するお知らせ」」株式会社サンリオ

吉永 資金調達

リソー、配当株価に連動

2010年 7月 14日

塾運営のリソー教育は13日、配当政策として株価に連動した「利回り」を目安にする新制度を導入すると発表した。毎年、8月と2月の平均株価の3%に相当する額と、連結配当性向で40%になる額を比べ高い方を支払う。
(日本経済新聞2010年7月14日15面)

【CFOならこう読む】

新配当政策の概要は次の通りです。

「■年間配当金を(1)、(2)のいずれか高い方とします。
(1)今期の1株当たり当期純利益に連結配当性向40%を乗じて算出した金額
(2)第2四半期の最終月である8 月及び通期決算の最終月である2 月の当社終値平均株価に株価配当利率3 .0%を乗じて算出した金額(ただし連結配当性向75%を上限とする)
■第2四半期末は、上記算出の年間配当金の1/2とします。
※ 今期は、既に発表済の第2四半期末85 円、年間170 円を配当金の下限といたしますのでこれを下回ることはありません。
なお配当金は、法定の分配可能額の範囲内で決定いたします。」(リソー教育、新配当方針(「株価連動型配当制度」導入)に関するお知らせ)

確定利率の考え方を導入さした理由を会社は次のように説明しています。

「利率や利回りを基準に投資先を選択される場合に、他商品(国債など)との比較検討が容易になり、当社株式への投資の参考としていただけると考え、投資家の視点に立った投資金額に対する確定利率の考え方を導入しました。」

【リンク】

2010年7月13日「新配当方針(「株価連動型配当制度」導入)に関するお知らせ」株式会社リソー教育[PDF]

吉永 配当政策

会社分割巡る従業員転籍、事前協議なければ無効

2010年 7月 13日

会社分割で新会社に転籍することになった日本IBMの従業員が、同社に転籍の無効の確認などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷は12日、「会社が分割に関して従業員との協議や説明をまったく行なわなかった場合には、転籍は無効となる」との初判断を示した。
(日本経済新聞2010年7月12日18面)

【CFOならこう読む】

「そのうえで今回はIBM側が十分な説明をしたと判断、原告側の上告を棄却した。原告側敗訴の一、二審判決が確定した。会社分割は2001年施行の改正商法で制度化され、従来より柔軟に会社組織を再編できるようになった。
法律上、会社分割に伴って従業員の労働契約は原則として自動的に新会社に引き継がれるが、その際には会社は従業員に説明するよう定められた」
(前掲紙)

承継対象となる営業に主として従事する労働者が上記記載をされたときには当然に労働契約承継の効力が生じ(承継法3条),当該労働者が上記記載をされないときには異議を申し出ることによって労働契約承継の効力が生じます(承継法4条)。また,上記営業に主として従事する労働者以外の労働者が上記記載をされたときには,異議を申し出ることによって労働契約の承継から免れるものとされています(承継法5条)。

また、5条協議として,会社の分割に伴う労働契約の承継に関し,分割計画書等を本店に備え置くべき日までに労働者と協議をすることを分割会社に求めています(商法等改正法附則5条1項)。

当該判決は、特定の労働者との関係において5条協議が全く行われなかったときには,当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるものと解するのが相当であると判示しており、会社分割の際には留意する必要があります。

裁判では、5条協議が十分に行なわれたかどうかが争点となりました。この点について、最高裁の考え方を以下に抜粋します。

「次に5条協議についてみると,前記事実関係によれば,被上告人は,従業員代表者への上記説明に用いた資料等を使って,ライン専門職に各ライン従業員への説明や承継に納得しない従業員に対しての最低3回の協議を行わせ,多くの従業員が承継に同意する意向を示したのであり,また,被上告人は,上告人らに対する関係では,これを代理する支部との間で7回にわたり協議を持つとともに書面のやり取りも行うなどし,C社の概要や上告人らの労働契約が承継されるとの判別結果を伝え,在籍出向等の要求には応じられないと回答したというのである。

そこでは,前記2(3)のとおり,分割後に勤務するC社の概要や上告人らが承継対象営業に主として従事する者に該当することが説明されているが,これは5条協議における説明事項を前記のとおり定めた指針の趣旨にかなうものというべきであり,他に被上告人の説明が不十分であったがために上告人らが適切に意向等を述べることができなかったような事情もうかがわれない。なお,被上告人は,C社の経営見通しなどにつき上告人らが求めた形での回答には応じず,上告人らを在籍出向等にしてほしいという要求にも応じていないが,被上告人が上記回答に応じなかったのはC社の将来の経営判断に係る事情等であるからであり,また,在籍出向等の要求に応じなかったことについては,本件会社分割の目的が合弁事業実施の一環として新設分割を行うことにあり,分割計画がこれを前提に従業員の労働契約をC社に承継させるというものであったことや,前記の本件会社分割に係るその他の諸事情にも照らすと,相応の理由があったというべきである。そうすると,本件における5条協議に際しての被上告人からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため,法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかであるとはいえない。

以上によれば,被上告人の5条協議が不十分であるとはいえず,上告人らのC社への労働契約承継の効力が生じないということはできない。また,5条協議等の不十分を理由とする不法行為が成立するともいえない。」

それにしても、この分割対象となった事業部門が持株会社の下にぶら下がる子会社であり、この会社を他社と合併させるということであれば、このような手続きは不要であるわけで、何故会社分割の場合にだけ必要とされているのか判然としません。

【リンク】

「平成20(受)1704 地位確認請求事件 平成22年07月12日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所」[PDF]

吉永 M&A

税務巧者、税効果会計や低税率国を活用

2010年 7月 12日

民主党が参院選のマニフェストに法人税率の引き下げを盛り込み、企業の税負担が注目を集めている。日本の法人税率は40%超と、OECD諸国の平均26%超に比べて高いだけでなく、税負担を抑える意識が企業に希薄なことも問題視されている。
(日経ヴェリタス2010年7月11日14面)

CFOならこう読む】

「1位のいすゞ自動車など、将来払いすぎた税金が戻ってくることを見越して会計上の税額が減っている企業が多い。実際の税額と会計上の税金認識のずれを調整する「税効果会計」の影響が大きくなっている。」(前掲紙)

税効果関係の注記に、法定実効税率と税効果適用後の法人税率との差異の内訳が示されており、これを見ると法人税率の高低の原因がわかります。

例えばいすずの場合は次の通りです(平成22年3月31日)。

法定実効税率 40.00%
(調整)
評価性引当額等の増減等 △58.2%
在外子会社の税率差異 △47.3%
在外子会社の当年度損失 24.90%
持分法による投資利益 △14.4%
外国源泉税 5.00%
住民税均等割等 2.30%
その他 2.00%
税効果適用後の法人税率 △45.7%

評価性引当額の減少、つまり繰延税金資産の回収見込みの増大により繰延税金資産計上額が増加したことが主たる原因であり、恒常的な税務戦略によるものではありません。

「28位の日本電産はタイやフィリピンの海外子会社が税制優遇を受けている。優遇のある地域に意識的に進出する製造業は増えている」(前掲紙)

日本電産の注記は次の通りです(平成22年3月31日)。

法定税率 41.00%
税率の増減要因
海外子会社での適用税率の差異 △23.2%
未分配利益にかかる税効果の影響 3.30%
評価性引当金 0.40%
未認識税務ベネフィット 3.40%
特定子会社の留保金課税 △0.1%
その他 △1.4%
実効税率 23.40%

日本電産の場合、その具体的な内容についても注記の中できちんと説明されています。

「当連結会計年度の実効税率は、前連結会計年度の実効税率よりも低くなりました。この主な要因は、評価性引当金の影響の減少、低法定税率の海外子会社での適用税率の差異の影響によるものであります。
海外子会社の税制上の優遇措置は、主にタイ、及びフィリピンの海外子会社に起因する所得に関係するものであります。
タイでは、NIDECは平成17年5月及び平成18年12月に免税の特権を得ました。これらの特権の下で、NIDECは5~7年の期間、法人税の免除を受けました。
フィリピンでは、NIDECは平成15年10月に4年間の「タックスホリデー」を含む税制上の優遇措置を受け、平成19年9月にそのタックスホリデーは2年間延長されました。さらに、平成21年と平成22年にそれぞれ1年延長されております。平成19年4月NIDECは新プロジェクトに対する他のタックスホリデーを4年間受け、さらに2年間延長されております。」

こちらは恒常的な税務戦略の結果と言えます。

【リンク】

「有価証券報告書」いすゞ自動車株式会社

「有価証券報告書」日本電産株式会社

吉永 税制

米国会計基準の年金資産の情報開示

2010年 7月 10日

米国会計基準を採用する企業の間で、年金の運用方針の違いが明確に分かるようになった。新たな開示ルールの適用により、実勢価格を把握しやすい順に年金資産を3つに分類するなど、運用状況をより詳しく説明するようになったからだ。現状では米基準採用の一部の主要企業に限られるが、今後は日本基準を採用するすべての企業にも広がる可能性がある。
(日本経済新聞2010年7月10日15面)

【CFOならこう読む】

「2009年12月に終了した決算期から、有価証券報告書で年金の運用資産別の金額やリスク情報などを新たに開示するようになった。」(前掲紙)

ソニーは、公正価値の3段階のレベルを次のとおり定義しています。

レベル1
重要な基礎データが活発な市場における同一の資産・負債の未調整の取引価格。
レベル2
重要な基礎データがレベル1以外の観察可能なデータ。
例えば、活発な市場における類似商品の取引価格、活発でない市場における同一又は類似商品の取引価格、全ての重要な基礎データが活発な市場で観察可能な場合のモデル計算による評価が含まれています。
レベル3
1つあるいは複数の重要な基礎データが観察不能。」

公正価値の階層にもとづく、国内及び海外制度における年金制度資産の公正価値は、以下のとおりです。

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【リンク】

「2009年度 有価証券報告書」ソニー株式会社[PDF]

吉永 会計

国際石油開発帝石、公募増資で最大5,872億円調達

2010年 7月 9日

国際石油開発帝石は8日、公募増資で最大5,872億円を調達すると発表した。国内の事業会社としては今年最大規模の増資となる。同社は豪州沖の液化天然ガス(LNG)開発など、今後7年で総額4兆円に上る巨額投資を計画している。自己資本を増強し、成長投資に備える。
(日本経済新聞2010年7月9日1面)

【CFOならこう読む】

「新株発行による資金調達は、同社が2006年、国際石油開発と帝国石油開発の統合で発足して以来初めて。新たに発行する株式は最大130万株で、現在の発行済株式の55%に相当する。

(中略)

開発投資は12年から本格化。今後、借入金やプロジェクトファイナンスに向けた準備を始める方針で、自己資本を増強しておく必要があった」(前掲紙)

資金調達の必要性は理解できますが、これだけの増資を取締役会限りで決定できてしまう現行法制度は問題があると思います。

今日の新聞3面に最近の主な事業会社の公募増資が掲載されていましたので、に載せておきます。

2009年~2010年、単位億円

東芝 3,174
日立製作所 3,492
全日空 1,416
NEC 1,176
日本郵船 1,106
東レ 1,012
マツダ 932
ヤマハ発動機 742
エルピーダメモリ 601
三井化学 433

【リンク】

2010年7月8日「新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ」国際石油開発帝石株式会社[PDF]

吉永 資金調達

年金型生保に二重課税認定

2010年 7月 8日

保険金が年金形式で分割払いされる生命保険を受け取った遺族に対し、相続税と所得税を課税することが認められるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は6日、二重課税に当たり違法との初判断を示した。そのうえで「課税は適法」とした二審・福岡高裁判決を破棄。所得税の課税処分を取り消し、原告側勝訴とした一審・長崎地裁判決が確定した。
日本経済新聞7月8日

【CFOならこう読む】

「判決によると、原告の長崎市の女性(49)は夫が死亡した2002年、死亡保険金4000万円と、10年間分割支給される総額2300万円の年金のうちの初年分として230万円を受領。死亡保険金と年金受給権は相続税の課税対象(各種控除が適用され納税額はゼロ)となり、年金は所得税を源泉徴収された。
女性は「相続財産には所得税を課さないと定めた所得税法に違反する」として、課税処分の取り消しを求め提訴。一審は06年「同一資産に対する二重課税で許されない」として請求を認めたが、07年の二審は「年金受給権への相続課税と個々の年金への所得課税は別」として一審判決を破棄、原告側が上告していた。」

以下、判決分を引用します。

「年金の方法により支払を受ける上記保険金(年金受給権)のうち有期定期金債権に当たるものについては,同項1号の規定により,その残存期間に応じ,その残存期間に受けるべき年金の総額に同号所定の割合を乗じて計算した金額が当該年金受給権の価額として相続税の課税対象となるが,この価額は,当該年金受給権の取得の時における時価(同法22条),すなわち,将来にわたって受け取るべき年金の金額を被相続人死亡時の現在価値に引き直した金額の合計額に相当し,その価額と上記残存期間に受けるべき年金の総額との差額は,当該各年金の上記現在価値をそれぞれ元本とした場合の運用益の合計額に相当するものとして規定されているものと解される。したがって,これらの年金の各支給額のうち上記現在価値に相当する部分は,相続税の課税対象となる経済的価値と同一のものということができ,所得税法9条1項15号により所得税の課税対象とならないものというべきである。

本件年金受給権は,年金の方法により支払を受ける上記保険金のうちの有期定期金債権に当たり,また,本件年金は,被相続人の死亡日を支給日とする第1回目の年金であるから,その支給額と被相続人死亡時の現在価値とが一致するものと解される。そうすると,本件年金の額は,すべて所得税の課税対象とならないから,これに対して所得税を課することは許されないものというべきである。」

相続税法24条1項は、年金受給権の評価を次のように定めています。

「有期定期金については、その残存期間に応じ、その残存期間に受けるべき給付金額の総額に、次に定める割合を乗じて計算した金額。ただし、一年間に受けるべき金額の十五倍を超えることができない。
残存期間が五年以下のもの           百分の七十
残存期間が五年を超え十年以下のもの      百分の六十
残存期間が十年を超え十五年以下のもの     百分の五十
残存期間が十五年を超え二十五年以下のもの   百分の四十
残存期間が二十五年を超え三十五年以下のもの  百分の三十
残存期間が三十五年を超えるもの        百分の二十」

今回の保険は10年間にわたり年金が支払われるものなので、年金総額×60%が相続税評価額ということになります。

年金現価係数表を見ると、この場合の運用利回りは10%超となります。今の市場環境から見ると相当に高いと言えます。この運用利回りの相当する部分については所得税の課税対象となると思われます。

今回の判決では、第1回目の年金は被相続人の死亡日に受給しているので、年金額=現在価値なので、全額所得税の課税対象とならないと判示しているだけなので、以降の年金受給額のうちどれだけが所得税の課税対象とするかは今後の検討課題となります。

それにしても夫が残してくれた年金を1円でも無駄にしないという訴訟を提起した女性の思いには、夫に対する深い愛情を感じ胸が打たれます。

【リンク】

平成20(行ヒ)16 所得税更正処分取消請求事件
平成22年07月06日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄自判 福岡高等裁判所[PDF]

吉永 税制