日本板硝子は15日、米化学大手デュポン元上席副社長のクレイブ・ネイラー氏(61)を6月29日付で社長兼最高経営責任者(CEO)に起用すると発表した。藤本勝司社長兼CEO(66)は代表権のない会長兼取締役会議長に就任する。経営トップを外部から迎え入れるのは欧米企業では珍しくないが、日本の大手製造業では異例。
(日本経済新聞2010年4月16日1面)
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「同社は29カ国に拠点を持ち、社内の公用語は英語。事業部門を統括する取締役執行役4人のうち3人、従業員全体の80%が外国人。「もう日本人の経営者に逆戻りはできない」と指名委員会の一人は解説する」(日本経済新聞2010年4月16日3面)
多くのグローバル企業の進む道は基本的にはこのようになるのでしょう。いやグローバル企業に限らず、内需型企業であっても希少な資源である経営者を世界に求めるというのが普通になるかもしれません。
日本板硝子の外国人株主比率は30%を超えています。こういう会社を見ると、会社はだれのものか、という議論に意味がないことがわかります。にも関わらず、日本企業同士で株式を持ち合い、外資を排除するというメンタリティはどこから来ているのでしょう?
岸田秀氏の「ものぐさ精神分析」(中公文庫)を読むと、日本人の精神構造がわかります。
少し長くなりますが、同書の「日本近代を精神分析する」から以下に引用します。
「はじめに結論めいたことを言えば、日本国民は精神分裂病的である。しかし、発病の状態にまで至ったのはごく短期間であって、たいていの期間は、発病の手前の状態にとどまっている。
だが、つねに分裂病的な内的葛藤の状態にあり、まだそれを決定的に解決しておらず、将来、再度の発病の危険がないとは言えない。現在は一応、寛解期にある。
日本国民の精神分析病的素質をつくったのは、1853年のペリー来航の事件である。鎖国していた徳川時代は、個人で言えば、外的世界を知らないナルチシズムの時期に相当する。日本は、極東の島国という得意な地理的条件のため、他の諸民族、とくにヨーロッパの諸民族とくらべると、はるかに長いあいだこのナルチシズムの自閉的状態に安住しつづけることができた。
(中略)
そのような甘やかされた気ままな生活に安住しているときに突如やってきたのが、ペリー率いる東インド艦隊であった。日本は、おとなの人間関係を結べるほど精神的に成熟していなかった。だからと言って、つき合いたくないとペリーを追い返す力はなかった。日本は無理やりに開国を強制された。司馬遼太郎がどこかで日本はアメリカに強姦されたと言っていたが、まさに日本は無理やりに股を(港を)開かせられたのである。別な譬えを用いれば、苦労知らずのぼっちゃんが、いやな他人たちとつき合わなければ生きてゆけない状況に突然投げこまれたのである。それまでの状況とその状況との落差がひど過ぎた。それは日本にとって耐えがたい屈辱であった。このペリー・ショックが日本を精神分裂病質にした病因的精神外傷であった。
(中略)
ペリー・ショックによって惹き起こされた外的自己と内的自己への日本国民の分裂は、まず、開国論と尊王攘夷論との対立となって現れた。開国は日本の軍事的無力の自覚、アメリカをはじめとする強大な諸外国への適応の必要性にもとづいていたが、日本人の内的自己から見れば、それは真の自己、真実の伝統的日本を売り渡す裏切りであり、屈辱であった。この裏切りによって、日本は自己同一性の喪失の危険にさらされることになった。
(中略)
明治維新が成り、開国論(外的自己)と攘夷論(内的自己)との抗争は一応、前者の勝利に終わり、後者は神風連の乱から西南の役に至る一連の事件を通じて散発的にふき出したものの、深く潜行することになった。だがもちろん消滅したわけではない。抑圧されたものは必ずいつかは回帰する。開国は一時の便法であり、本音は攘夷にあった。政治機構から風俗習慣に至るまで、急速な欧米化が実行される。不平等条約の改定をめざして、一方では富国強兵が叫ばれ、他方ではグロテスクなほど卑屈な鹿鳴館外交が展開される。これらのことは和魂洋才というスローガンによって合理化された。
和魂洋才とは外面と内面とを使いわけるということである。これこそまさに精神分裂病質者が試みることである。あるいはこう言った方がよければ、ある危機的状況にあって、外面と内面との使いわけというこの防御機制を用いることが、精神の分裂をもたらすのである。
(中略)
外的自己はますます他者に屈従し、内的自己はますます他者を憎悪するようになる。他者は実際以上に脅威的となる。そうなれば、他者に対しては全面的な服従か全面的な攻撃かの両極端の態度のいずれしかとれなくなる。しかも、その両極端の一方の態度から他方への転化は突然である。もちろん、当人の主観としてはその転化を起こすに当たっては、然るべきいろいろな理由を積み重ねてもっているつもりだが、とにかく相手はいわれのない、だしぬけの変化と感じてびっくりする。
このような分裂病質者の行動特徴は、幕末から現代に至るまで、アメリカをはじめとする欧米諸国に対する日本の対外態度をつらぬいている特徴である。和魂洋才は日本の近代化のためのやむを得ない応急策としてある程度の成功を収めたかもしれないが、それが日本人の人格に残した傷跡は大きい」
いかがでしょうか?
日本企業が外資を異常なまでに拒絶する理由がわかるような気がします。
日本企業が真にグローバル化するためにはまずは分裂状態から脱する必要があるのかも知れません。
【リンク】
「株主軽視」是正こそ急務
・「市場主義の失敗」は改正論拠になり得ず
・日本的経営は従業員の利害を反映しすぎ
・最近の企業買収に投資家利益損なう例も
(日本経済新聞2010年4月14日29面 経済教室 大杉謙一中央大学教授)
【CFOならこう読む】
昨日のエントリーで、日本企業で企業統合が進まない理由として、経営者が村と村人を守ることが一番の仕事だとおもっており、自らの権益の縮小につながるM&Aは是認できないことを指摘しました。
そして有無を言わさず再編を迫れるのは市場をおいて他にないということを書きました。
今日の経済教室の大杉氏の論稿は私とほぼ同じ問題意識からより具体的な結論を導いています。
「欧州型TOBの導入を英国やドイツでは日本とは異なり、上場会社の株式を30%以上取得するには市場取引で買い集めることはできず、必ずTOBによらなければならない。また、このときにはすべての株主に対して買い付けを申し出なければならない(全株買い付け義務)。
株式を30%以上取得した買収者は、他の株主に対して同じ条件で株式を買い取ることを申し出る義務がある(義務的公開買付)。このようなルールにより、投資家に株式売却の機会を与えている」(前掲稿)
もっとも大杉氏は昨日の経済教室の執筆者である上村達男氏が批判するファイナンス至上主義的な商法学者(笑)ですので、経済界はもとより多くの学者も大杉氏の問題意識や提言に必ずしも肯定しないものと思われます。
【リンク】
なし
桜咲くころは「別れと出会いの季節」といわれるが、経済界を見渡すと、今年は「出会い」よりも「別れ」の目立つ春である。ここで論じたいのは、企業統合やその破綻劇のことだ。「日本初の(初)のグローバル食品企業」と期待されたキリンホールディングスとサントリーホールディングスの統合は白紙に戻った。高島屋とエイチ・ツー・オーリテイリングの百貨店再編も頓挫した。
(日本経済新聞2010年4月13日15面)
【CFOならこう読む】
「日本企業にとって再編の原動力は何だろうか。あえて乱暴に言い切ってしまえば、「不況」だと思われる。景気悪化で業績が傾けば、危機感が募って再編機運が高まる。逆に景気が回復し始めると、潮が引くように再編への熱意が薄れ、白紙撤回が相次ぐのは現状が示す通りだ」(前掲紙)
全くもってその通りです。
ですがそれはどこから来ているのでしょう。
一言でいうとコーポレートガバナンスの欠如に起因しているのだと思います。
多くの日本企業の経営者は会社は自分のモノだと考えています。そして会社という村とその村人を守ることが一番の仕事であると信じているのです。
ですから村の勢力が弱くなるような企業統合には極めて消極的です。一方相手が弱っていて丸ごと自らの村に取り込めるような企業統合には積極的なのです。
「有無を言わさず企業に再編を迫る力が、日本では著しく弱い」(前掲紙)
どうすれば日本企業に有無も言わさず再編を迫れるか?政府や官僚にその仕事を委ねても彼らにそれだけの力はありません。
日本企業に再編を迫れるのは市場をおいて他にないと私は思います。
上場企業である限り、株価が下がれば、村長や村人がいかに抵抗しようとも、他者のコントロール下に入ることがあり得ることを当然の前提として法制度や市場ルールを再整備することが緊急の課題であると私は思います。
本日の日経新聞の経済教室で、上村達男教授が「公開会社法」について書いておられます。
「その理念とは、米国流の人民資本主義であり、市民が株主となって企業社会をコントロールするとともに、個人投資家を中心とした証券市場が一体となって機能するような構造、すなわち企業社会と市民社会の結節点としての証券市場を構想するものであった。
(中略)
今こそ、戦後改革の証券民主化の理念を呼び戻し、証券市場と一体の株式会社法制、および企業社会と市民社会の結節点としての証券市場を構想することで、60年遅れの戦後改革を断行し、日本の市民社会の再構築を展望するタイミングだと考えるべきでないか」(日本経済新聞2010年4月13日27面)
至極真っ当な意見です。
しかしその真っ当な試みが法務省やら金融庁やらの縦割り行政のおかげで骨抜きにされる可能性があるようです。
村と村人が小さな権益を巡って争っている場合ではないでしょう。
【リンク】
なし
東京証券取引所は5日、一般株主の保護を目的に上場会社に導入するよう義務付けた「独立役員」の3月31日時点の設置状況を公表した。届け出済み2094社のうち「未確保」と届け出たのは、9%にあたる187社。3月期決算企業は、2011年6月末以降に未確保ならば上場規則違反となり、企業名公表などの措置が適用される。
(日本経済新聞2010年4月6日13面)
【CFOならこう読む】
独立役員とは、一般 株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役を いい、上場企業は1名以上確保することが求められるようになりました。
さらに「独立役員届出書」を取引所に提出し、公衆の縦覧に供することに同意することが求められます。
上場企業は、独立役員の確保の状況(独立役員とし て指定する者が、以下のaからeまでのいずれかに該当する場合は、それを踏まえてもなお独立役員として指定する理由を含む。)を開示しなければなりません。
a 当該会社の親会社又は兄弟会社の業務執行者等(業務執行者 又は過去に業務執行者であった者をいう。以下同じ。)
b 当該会社を主要な取引先とする者若しくはその業務執行者等 又は当該会社の主要な取引先若しくはその業務執行者等
c 当該会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得て いるコンサルタント、会計専門家又は法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、当該団体に所 属する者及び当該団体に過去に所属していた者をいう。)
d 当該会社の主要株主
e 次の(a)又は(b)に掲げる者(重要でない者を除く。)の 近親者
(a) aから前dまでに掲げる者
(b) 当該会社又はその子会社の業務執行者等(社外監査役を 独立役員として指定する場合にあっては、業務執行者でない取締役若しくは業務執行者でない取締役であった者又は 会計参与若しくは会計参与であった者を含む。)
独立役員の確保に係る規定は、平成22年3月1日以降に終了した事業年度に係る定時株主総会の翌日から(3月期決算会社であれば、平成22年6月末までに開催される定時株主総会の翌日から)適用となります。
平成22年3月末日現在で就任している社外取締役又は社外監査役のうちに、東証の規定する独立役員の定義に該当する者が存在していない場合には、遅くとも、平成23年3月1日以降に終了する事業年度に係る定時株主総会の翌日までに、独立役員を確保することが義務付けられています。
平成22年3月31日までに受理された独立役員届出書一覧を概観する限り、ほとんどの企業の独立役員は上記a~eに該当しない旨記載がなされています。
【リンク】
2010年4月5日「独立役員届出書一覧」東京証券取引所
米経営学者ジム・コリンズ氏は、企業勝ち残りの条件を描いた1994年のベストセラー「ビジョナリー・カンパニー」の著者として知られる。昨年は一転、前途洋々だった企業が没落する過程を描く「企業はどう落ちぶれるのか」を出版し、話題をさらった。
優良企業に潜むワナと、窮地から再生するための条件を聞いた。
(日経ヴェリタス2010年3月28日21面)
【CFOならこう読む】
ジム・コリンズ氏は成功から没落までを5段階に分けて説明しています。
1.成功と思い上がり
幸運を実力と勘違いする
2.規律なき欲望
実力以上の拡張に走る
3.リスクと危機の否定(株価は最高に)
都合の悪い事実を無視
4.救済への渇望
やみくもな対策で事態は悪化
5.降伏、あるいは死
身売りや破綻
「既存事業と合わない大型の買収も、無規律に成長を追っている兆しです。信じられないほどの高成長を何年も続けている会社は、「巨大化した会社を回していけるのか」と疑うべきです」(前掲紙)
無意味なM&Aは第2段階だけでなく第4段階でも行なわれます。
日本企業のM&A、特に供給過剰な業界で行なわれる、規模の追求をお題目とするM&Aはこの段階で行なわれるケースが多いように思います。
「ノックアウトされない限り、企業は生還できます。経営危機に直面した(90年代前半の)IBMも、(2000年前後の)ゼロックスも4段階の後半に追い込まれていました。再建できたカギはいくつもあります。まず有能なリーダーを得ること。再建を託されたIBMのルイス・ガースナー氏、ゼロックスのアン・マルケイヒ氏に共通するのは、名声を目的とせず、会社再建に集中したことです」(前掲紙)
有能なリーダーが日本にいないのだとすれば、日本企業は国外にその人材を求めざるを得ません。
そんな時代に1億円以上の年棒の経営者だけを懲悪的に開示させるのは、全くもって間違っていると僕は思います。
今重要なのはパイの取り合いではなく、パイそのものを大きくする施策です。
【リンク】
なし
千葉景子法相が法制審議会に、会社法の見直しを諮問した。2005年に現在の会社法が制定されてから、初めての見直しとなる。日本企業の経営の質を高めるような法改正を望む。
(日本経済新聞2010年3月1日2面 社説)
【CFOならこう読む】
「経営者の暴走や誤った経営判断に歯止めがかからなければ、会社は倒れ、株主も損害を被る。企業が持続可能な成長を遂げるための最低条件として、企業統治の役割を高める
ことには意義がある。
その意味で、民主党の「上場企業の社外取締役の条件を強める」(公開会社法(仮称)の制定に向けて)との提言には耳を傾けるべき面がある。
社外取締役は会社の外にいて、独立の立場で経営の意思決定にかかわる。経営陣の影響を受けず独自の判断ができるかどうかがポイントになる。現在の会社法は肝心の独立性に関する定義があいまいだ。そのうえ、すべての会社に社外取締役を置くことまでは義務づけていない」(前掲紙)
独立取締役の要件として、日本取締役協会「独立取締役コード(2005年10月13日)は次のように定めています。
「実質的独立性に疑義がある者①大株主又はその利益を代表する者、②経営者又は従業員である(あった)者、③グループ会社の経営者又は従業員である(あった)者、④重要な取引関係がある(近い過去にあった)別の会社の経営者又は従業員である者、⑤当該会社のアドバイザーとして、取締役としての報酬以外に高額の報酬を受け取っている(近い過去に受け取っていた)者、⑥上記のいずれかに該当する近親の親族を有する者、⑦会社間における取締役の相互兼任がある場合の取締役である者、⑧当該会社の取締役に就任してから、すでに長期間が経過している者」
これを法制化するか市場ルールで規制するか議論があるところですが、日本の場合、コーポレートガバナンスに関わる事項は極力法制化し、役所に監視させるという方向性が良いと思います。
【リンク】
2009 年 7 月X日「公開会社法(仮称)制定に向けて」民主党公開会社法プロジェクトチーム[PDF]
2005 年 10 月 13 日「独立取締役コード」日本取締役協会 社外取締役委員会[PDF]
2008年9月の米大手証券リーマン・ブラザーズ破綻とその後の経済危機は、世界経済を動かしてきた「金融資本主義」の限界を露呈した。危機から脱しても、経済の姿は危機前とは様変わりが予想される。震源地、ウォール街の経営者が得た教訓と今後の展望をゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファインCEOに聞いた。
(日本経済新聞2010年2月6日11面)
【CFOならこう読む】
「ー市場の担い手として人々の貧困を和らげることも、金融機関が持続的に経営していく条件といえますか。
ロイド・ブランクファイン「条件ではなく結果だ。企業家は貧困を減らすことを目指しているのではなく、自らが豊かになりたいのだ。そのために製品を考案し、工場を建て、雇用を創造し、結果的に世界が豊かになる。金融機関も有望な企業に融資し、資金調達を助け、投資をすれば経済成長にもつながる」(前掲紙)
ドキュメンタリー作家であるマイケルムーアの最新作、「キャピタリズム~マネーは踊る~」という映画は、マイケル・ムーア自らがあちこちの主要な投資銀行の建物の回りを、”犯罪現場につき立ち入り禁止”と書かれた黄色いテープを覆うシーンで終わります。自らの金儲けのために多くの弱者からカネを巻き上げた、とマイケル・ムーアは怒っているのです。
国富を創造するような偉大な企業家には必ずビジョンがあります。
自分が豊かになりたい、ということが最初にあるわけでは決してありません。
ロイド氏のような考え方の経営者が世界を代表する投資銀行のトップでいること自体、その不健全性を象徴しているように感じます。
【リンク】
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民主党が政権公約に掲げている「公開会社法」の審議が法制審議会で始まる。時宜を得たテーマであり、株式会社と証券市場の本質を踏まえた重厚な議論を期待したい。
(日本経済新聞2010年1月29日19面 大機小機)
【CFOならこう読む】
「上場会社の経営(者)が負うべき責任の相手は、今現在の株主のみならず、投資家一般、証券市場であり、ポスト法人資本主義社会の主人公の市民、国民である。理念を実現するには制度と、制度の器に盛る魂が不可欠だ。一町一夕にできるものではないだけに、理念を共有するための国民的な議論が必要になる。米欧にあって日本にないものに、株主総会に代わって経営者を監督する機関(スーパーバイザリーボード)がある。企業統治の要の役割を、米英は独立取締役会、ドイツは株主と従業員代表で構成する監査役会が担っているが、日本の上場会社にどうつくるのか」(前掲紙)
日本の法人資本主義の王様は役員とそれを担ぐ正社員でした。ここにドイツ型を持ってくると、現在の状況が強化されるだけで、いつまでたっても市民が主人公にはなる時代はやって来ないと思います。
「株式会社を巡る権利と義務の相克が頂点に達するM&Aのルールは、会社法と市場法にまたがる。「自由演技」で個別紛争を裁判所の判断に委ねる現行方式を改め、強制力のある第三者機関の監視下で制度化された「規定演技」とすべきではないか」(前掲紙)
イギリスのテイクオーバー・パネルを想定しているのでしょう。
テイクオーバー・パネルの是非について、岩井克人さんは次のように述べています。
「会社買収の手続きが、テイクオーバー・パネルという民間の団体の監督のもと、シティコードという買収ルールにもとづいて厳格に行なわれます。テイクオーバー・パネルのメンバーは英国保険業協会、英国銀行業協会、英国投資顧問協会、公認会計士協会等の各教会などから精鋭が集まって構成されます。
(中略)
日本も同じ仕組みにすべきだという議論がよくなされます。特に市場関係者のなかには、そういう考え方は多いようです。しかし日本での実現可能性はどれほどあるのでしょうか。
一番大きな問題は人材でしょう。イギリスの買収ルールは19世紀から連綿と続くシティの伝統に完全に支えられている制度です。テイクオーバー・パネルに集まる人たちは、実際にシティで経験を積み、自主的な組織としてシティ全体の長期的な利益に貢献するという使命感を持って活動しています。それゆえ、社会的に信頼され、尊敬されています。伝統のあるシティはイギリスにとっては無形文化財のようなものですから、これを絶対守るという強い意志と気概があります。
日本では会社買収はまだ始まったばかりで、イギリスと比較すると人材の蓄積がありません。金融業全体のインフラが整えば、長期的には可能かもしれませんが、そのまま現状の日本に導入することは難しいでしょう」(「M&A国富論」岩井克人・佐藤孝弘 プレジデント社)
私は日本に人材はいると思っています。
一度理念が共有されれば、テイクオーバー・パネルは十分機能するでしょう。
一番重要なものは、「制度の器に盛る魂」です。
長期的な視点から、日本国の進むべき方向を議論する必要があります。
日本がどうやって食っていくかということもはちろん大切ですが、日本という国をどういう国にするかということはもっと大切です。
そういった理念なくして、例えば社会保障の問題やその財源について議論しても意味がないと僕は思います。
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日本相撲協会の役員改選をめぐる二所ノ関一門の会合が19日開かれ、一門を離脱して理事に立候補を表明していた貴乃花親方(37、元横綱)を支持する間垣親方(56、元横綱2代目若乃花)ら6人の親方が一門を離脱した。これを受け、同一門では放駒親方(61、元大関魁傑)と二所ノ関親方(61、元関脇金剛)の現職2人を候補者として擁立することを決めた。
(NIKKEI NET 2010年1月21日)
【CFOならこう読む】
私は以前このブログで相撲と相撲協会について書いたことがあります(2008年10月4日エントリー「日本相撲協会と経営の規律」)。
要点のみ再掲します。
「充実していないのは、経営者たる相撲協会の理事連中です。経営努力が全く足りていません。全ては部屋任せで、組織としての経営は行われていないに等しい。
顧客にも全然目が向いていない。相撲協会に注文は山ほどあります。
一番の問題は経営に規律が働いていないことです。
みんな身内ですから、責任が問われることがありません。従業員同士が殺し合いをしているのに、経営陣が責任を全く認識していない、全く稀有な組織なのです。経営を規律付けするにはどうしたら良いか。仲良しの有識者を外部理事として迎え入れれば万事解決なんてことは絶対にありません。
そう、これはコーポレートガバナンスの問題なのです。
日本の多くの経営者に相撲協会は腐っているなんて言う資格はありません。自社のコーポレートガバナンスと相撲協会を比べてみてください。
50歩100歩じゃないでしょうか?」
私はこれを書いたときに、新聞記事のような変革の動きが内部から出てくるとは夢にも思っていませんでした。しかも貴乃花がリーダシップを発揮するとは。。
ガバナンスが効いていない組織の末路は悲惨ですよ、相撲協会を見てください、そんなことを言いたくてあのときブログ記事を書いたのです。相撲協会は絶対に変わらないと思っていました。
その相撲協会がもしかしたら変わるかも知れません。理事選で理事候補は、それぞれマニフェストを掲げ戦えば良いのです。貴乃花が主張するように「子どもや若いファンを増やす」ための努力は全くと言っていいほど、行なわれていない現状で、例えば北の湖が何を主張するのか是非聞いてみたいものです。
相撲協会でも企業でも国家でも、決議機関の場が議論の場ではなく、多数派工作の結果形骸化してしまっていることが問題なのです。最も重要なのはオープンで建設的な議論が行なわれることでしょう。
力士としての貴乃花は嫌いでしたが、今の貴方は支持します。
ぜひとも頑張ってください。
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経営難に陥っていた日本航空は19日、2子会社とともに東京地裁に会社更生法の適用を申請し、同日手続き開始の決定を受けたと発表した。グループの負債総額は2兆3200億円で、金融機関を除く事業会社では過去最大。日航から支援要請を受けた企業再生支援機構も支援を正式に決定、日本政策投資銀行とともに出融資として総額9000億円の公的資金を投入する。一連の決定を受け、東京証券取引所は日航株式を同日から1カ月間、整理銘柄に指定、来月20日に上場廃止にすると発表した。
(NIKKEI NET2010年1月20日)
【CFOならこう読む】
私はこのブログで当初から法的整理を主張していました。そういう意味では、とりあえず落ち着くところに落ち着いたと感じています。
既得権益者の密室でのネゴで物事が決まるのではなく、司法に解決が持ち込まれたのは取り敢えず良かったと思います。債権者平等が原則の更生法手続きの中で、一般債権者を保護するという前例のない枠組みにゴーサインを出しことも評価できます。
しかしこの先はどうなるのでしょう?
稲盛氏なら、とてもまともとは言えないこの会社を、普通の会社に変えることはできると思います。ですが年齢から言ってもキャリアから言っても、V字型の収益回復を望むのは到底不可能だと思うのです。
自主再建はあり得ない。
Exitは外資への売却しかない。
僕はそんな風に思っています。
稲盛氏はこの仕事を引き受けた理由を次のように述べています。
「私は既に経営の第一線を引いた身であり、航空事業には全くの素人なので会長就任の要請を受けるか迷った。しかし日航の現在の状況は低迷する日本経済を象徴しているとも言われ、再建できれば日本経済全体に良い影響を与えることができる」
外資へ売却されることになったとき、本当の意味で日本は変わるのかも知れません。
重要なことは日本人の雇用の場が確保されることです。
世界中の企業に、日本人という希少な資源を活用してもらうこと、それこそが最も重要なのです。
日本人だけで資本も経営も何もかも賄う時代は終わったのです。
再生機構が株を手放す3年後に日本は大きく変わる。
だとするとそこに向けた準備を日本国民全員が今から始めなければなりません。
日本人だけで仕事ができる時代がそう長くは続かないとすれば、いまやるべきことは山ほどあります。
またそこに新たなビジネスチャンスも生まれる筈です。
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