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Archive for the ‘税制’ Category

各党の法人税率

2010年 6月 18日

民主党は17日、参院選マニフェスト(政権公約)を発表した。「税金の無駄遣い是正や予算の組み替えで財源はでてくる」とした2009年衆院選マニフェストの考え方を事実上、撤回。子ども手当などの目玉政策を現実的な政策に転換したのが特徴だ。政権交代当事から「成長戦略がない」と批判されていた反省から、法人税率の引き下げや官民連携によるインフラ輸出促進などをもりこんだ。
(日本経済新聞2010年6月18日1面)

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各党のマニフェストが揃い、法人税率の引き下げを打ち出しました。

◆民主党
法人税制は簡素化を前提に国際競争力の維持・強化、対日投資促進の観点から見直しを実施。中小企業向け法人税率の引き下げ(18%→11%)。

◆自民党
法人税率は企業の実質的な負担に留意しつつ、課税ベースの拡大とともに、20%台に引き下げ。中小企業向け法人税率はさらに引き下げを検討。

◆みんなの党
法人税実効税率を20%台に。

◆新党改革
法人税は現在の41%から25%に。

◆たちあがれ日本
法人税率は10%引き下げ。
」(前掲紙)

法人税率引き下げに伴いどの程度課税ベースを広げるのかを明確にしてもらいたいものです。

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吉永 税制

法人税まず5%下げへ

2010年 6月 11日

直嶋正行経済産業相は10日、日本経済新聞のインタビューに応じ、「法人税の税率を来年度にまず5%下げる必要がある。税制の抜本改革の議論を待つのでなく、成長戦略の一環として決断すべきだ」と強調した。
月内に政府全体でまとめる成長戦略では、環境、介護、医療(健康)、観光、アジア、科学技術、雇用・人材の6本柱に加えて「個人金融資産の活用など金融分野の活性化が不可欠だ」との考え方を示した。

(日本経済新聞2010年6月11日5面)

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「経財相は「法人税の高さが指摘され始めてもう10年はたつのに、日本はいっこうに動いていない。それが海外にはマイナスのメッセージになっている」と指摘。早期の税率下げで、日本の国際競争力回復や外資企業の日本への投資増につなげる考えを示した」(前掲紙)

日本の国際競争力と外資企業の日本への投資誘因という議論を同列に論じるべきではありません。

日本の国際競争力という点では、日本の法人税が現在採用している全世界所得課税方式から国外源泉所得非課税方式(テリトリアルシステム)に移行することが必要でしょう。

後者であれば国外で稼いだ所得にかかる税金は、その国の課税で完結するので、現地の製造者との競争において大きな不利益になることはないのです。

一方外資企業の日本への投資誘因という意味では、法人税の減税は有効でしょうが、それだけではもともとコストの高い日本への投資を促進することは難しいでしょう。何より株式持ち合い、買収防衛策、第三者割当増資の容易さ等が外資の誘因には大きな障壁になっています。

この点、役所も含め”外資の脅威から日本企業を守る”というメンタリティーからの脱却が重要なテーマになると思います。外資が日本企業から技術を強奪し、日本には何も残らなくなる、だから外資から日本企業を守らなければならない、という情緒的な議論がいまだに聞かれますが、それでは幕末の攘夷論と大差ありません。

ヒトもモノもカネも国境を越えることを前提に国家戦略は構築されるべきです。

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吉永 税制

日本版ライツイシュー1号:タカラレーベン46億円調達

2010年 6月 2日

マンション分譲のタカラレーベンは1日、株主割当増資として既存株主に割り当てた
新株予約権のうち、95.7%が行使され、手取り概算で46億円を調達したと発表した。

日本経済新聞2010年6月2日15面)

【CFOならこう読む】

タカラレーベンのライツイシューの仕組みは以下の通りです。

「1株の当社普通株式に1個の本新株予約権が割当て
られ、1個の本新株予約権の行使により1株の当社普通株式が交付されます。割当基準日時点の株主に持株数に応じて本新株予約権を無償で付与し、交付された新株予約権について行使期間において行使価額の払込みを受けた場合に、当社普通株式を交付します。本新株予約権は東京証券取引所の新株予約権の市場に上場されるため(東京証券取引所からの上場承認を前提とします。以下同様です。)、本新株予約権の上場期間中、市場での売買が可能です。 」
2010年3月5日「新株予約権無償割当て(ライツ・イシュー(ノンコミットメント型))*1 に関するお知らせ」株式会社タカラレーベン[PDF

新株予約権は市場で売却することができたわけですが、この場合の株主の税務上の処理が気になるところです。この点会社は次のように説明しています。

「無償割当てによる本新株予約権の取得は原則、簿価は0円であり、譲渡価格の全額が課税対象となると理解しております。本新株予約権の市場での売却が金融商品取引業者への売り委託等によって行われる場合、譲渡益に対する税率は税法の特例(平成20年税制改正)により10%(所得税7%、住民税3%)になると理解しております。また、軽減税率
の規定は、特定口座及び一般口座の双方に対して適用されると理解しております。」(同上)

また、国税の2010年3月31日付の文書回答事例、「株主に無償で割り当てられた上場新株予約権の行使により交付される端数金等の税務上の取扱いについて」の中で、無償新株予約権の取得価額は次の通り零円となることが確認されています。

「無償上場新株予約権は、会社法第277条の規定に基づき、同法第109条の株主平等原則に従い、発行法人に対し新たな払込みをしないで株主に対し一律に割り当てられるものであるため、居住者等に係る無償上場新株予約権は、所得税法施行令第109条第1項第3号の「発行法人に対し新たな払込み又は給付を要しないで取得した当該発行法人の株式又は新株予約権のうち、当該発行法人の株主等として与えられる場合(当該発行法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に限る。)の株式又は新株予約権」に該当するものと考えます。
したがって、居住者等に係る無償上場新株予約権の取得価額は、所得税法施行令第109条第1項第3号の規定により零円となります。
また、内国法人等に係る無償上場新株予約権についても、法人税法施行令第119条第1項第3号の「株式等無償交付(法人がその株主等に対して新たに金銭の払込み又は金銭以外の資産の給付をさせないで当該法人の株式又は新株予約権を交付することをいう。)により取得をした株式又は新株予約権(第4号に掲げる有価証券に該当するもの及び新株予約権付社債に付された新株予約権を除く。)」に該当するものと考えます。
したがって、内国法人等に係る無償上場新株予約権の取得価額は、法人税法施行令第119条第1項第3号の規定により零円となります。」

株主に無償で割り当てられた上場新株予約権の行使により交付される端数金等の税務上の取扱いについて」国税庁

つまり、新株予約権を市場で売却すると、売却額=売却益になってしまうわけです。

ところで、理論的には無償新株予約権の価値は、既存株式の希薄化部分と等価であるので、本来。新株予約権の売却益は既存株式の簿価から差し引く形で調整されるべきです。

株主としては、実質的な富の増加がないのに課税が生じるのは納得できず、それなら既存株式を売却して希薄化部分に相当する損失を実現させてしまおうと考えるかも知れません。

上記の税務上の処理を前提にすると、この資金調達手法は一般的なものにはならないように思います。

注:税務上の処理はあくまで私見です。実際の適用に際しては自己責任で行なってください。

【リンク】

2010年3月5日「新株予約権無償割当て(ライツ・イシュー(ノンコミットメント型))*1 に関するお知らせ」株式会社タカラレーベン[PDF]
「株主に無償で割り当てられた上場新株予約権の行使により交付される端数金等の税務上の取扱いについて」国税庁

吉永 税制 ,

日本企業の税負担率突出

2010年 5月 29日

国際的に見た日本企業の税負担の重さが改めて浮き彫りになっている。2009年度の日本の主要企業の税引前利益に占める税負担額の割合は49%と、米国や英国、ドイツ企業の20~30%台を上回った。法人税などの法定実効税率が高いことが主因だ。世界では台湾が法人税率を25%から17%にするなど引き下げ競争が加速している。高負担は日本企業の成長の足かせとなりそうだ。
(日本経済新聞2010年5月28日15面)

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各国企業の会計上の税負担率(2009年度、%、指数構成企業の平均)は次の通りです。

日経300 49.1
英FTSE100 種 36.0
ドイツ株式指数 34.4
米S&P500種 29.9

(トムソン・ロイター調べ)

確かに日本の法定実効税率は高いのですが、会計上の税負担率が高いのはそのせいばかとは言えません。同じ日本企業でもHOYAのように税負担率が非常に低い会社もあるのです(2009年6月3日エントリー「HOYA1,200億円還流」)。

重要なのはきちんとしたタックスマネジメントを行なうことです。

日本企業で税務部門が機能している会社はとても少ないでしょう。むしろ税金を多く払うことに誇りすら感じている上場企業も存在します

そしてそれ以上に重要なのは、税引後利益を経営指標として何より重視することです。
それは株主価値を重視するということに他ならず、結局コーポレートガバナンスの問題だと言うことになるのかも知れません。

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吉永 税制

消費・所得税上げ必要?

2010年 5月 18日

政府税制調査会の専門委員会は月内をメドに消費税や所得税を増税する必要性を明示した論点整理をまとめる検討に入った。神野直彦委員長(東大名誉教授)は17日、菅直人財務相ら税調幹部に論点整理のたたき台を説明した。福祉の充実などには、所得税と消費税を税収の「車の両輪」と位置付ける税制抜本改革が必要だと指摘。過去の減税で財源確保が困難になった現行税制を、所得税と消費税で立て直すべきだとの考えを示した。
(日本経済新聞2010年5月18日5面)

【CFOならこう読む】

この記事のとなりには、”法人税下げても税収増”という見出しが踊っています。

「経済産業省の分析によると、EU15ヶ国では1995年から2007年にかけて法人税の実効税率が37.7%から28.7%と9ポイント下がった。この一方で、GDPに占める法人税収の割合は逆に2.2%から3.2%に上昇。税率引き下げが税収を押し上げるパラドックスが生じる理由について、経産省は税負担の軽減が企業の投資や雇用を促し、成長の基盤を整えたとみる」(日本経済新聞2010年5月18日5面)

そしてたまたま僕のデスクの上にはEUの有害な租税競争に関するJETROのペーパー(JETRO ユーロトレンド 2001.11)が乗っていて、そこにはこんな風な記述があります。

「各国が雇用の確保などの観点から金融その他のサービス産業といった、いわゆる「足の速い」経済活動を国外から租税優遇措置を競って導入した結果、可動性の低い労働や消費に対する重課というかたちで課税の公平性、中立性が損なわれ、資本の移転や経済活動に歪みが生じるといった観点から、租税競争に対する国際的な協調が、近年問題となっている」

10年遅れて日本も漸くこの競争に参入しようとしているんだなあ、と今日の新聞の見出しを俯瞰で読んで、そんな風に感じました。

EUではその後何が有害であるかの基準について合意できず、「有害な租税競争」を排除する取り組みは停滞しています。

日本が租税競争に参戦することには賛成なのですが、それが何を目的とするものであるのかについてコンセンサスが得られていないのは大きな問題だと思います。

JETROのペーパーでは、まず始めに「雇用の確保」と書かれています。ところが今日の記事のどこを読んでも「雇用の確保」とは書かれていません。せいぜい「海外企業の進出意欲を高める効果があるという」という記述がある程度です。

目的が「雇用の確保」にあるのなら、日本企業の投資促進だけでなく、外資を国内に呼び込むことが非常に重要だと思います。そしてそのためには、法人税軽減以外にもやることがたくさんあると思うのです。

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吉永 税制

ユーロはギリシャに勝てるか

2010年 5月 17日

ギリシャは国内経済バランスの達成が急務だが、共通通貨ユーロが制約だ。通貨減価による財政赤字縮小はできず、政治的に困難な財政再建しか道はない。独立国家が通貨を共有するというユーロの実験は、政治的には壮大で野心的、理想主義が経済的現実に勝てるのか、ギリシャ問題が突きつけている。
(日経ヴェリタス2010年5月16日45面 異見達見 野口悠紀雄)

【CFOならこう読む】

ギリシャがユーロに加盟していなければ、ドラクマ(ユーロ加盟以前のギリシャ通貨)が減価し、インフレが生じること等により財政赤字が縮小し、経済バランスが達成できる可能性があるが、ギリシャがユーロに加盟し自国通貨を持たないため、こういった形で経済バランスを達成することはできず、政治的に困難な財政再建の道を歩まざるを得ない。こうした困難を強い政治力で克服できなければ、ギリシャはユーロを離脱するしか方法はない、

と野口氏は本稿で論じています。

さらにユーロの本質的な問題として次のような指摘を行なっています。

「ここに共通通貨ユーロの本質的な問題が表れている。すなわち「国内政治と財政は国ごとに独立し、他方では通貨を共有するため金融・為替政策の自由が各国から奪われている」という矛盾である。
ギリシャ問題は、ギリシャ一国の問題ではない。それは、ユーロを維持できるか否かという問題である。「独立国家が通貨を共有する」という経済的にはあり得ない奇妙な仕組みを維持できるのか、人類史上初めての壮大な実験が行なわれている」(前掲稿)

租税の分野でも同様の問題があります。

EUでは経済統合のために「4つの自由」(財・人・サービス・資本の自由な移動)を保障する法的枠組をつくっており、これを阻害する加盟国の国内法は内外無差別の原則に反するとして、禁止されています。

1990年代後半から、欧州裁判所が次々とEU加盟国の法人税制を無差別原則に反すると判断しています。ここに、税制は国ごとに独立しているが、4つの自由を守るため加盟国の税制が否定される、という矛盾があるのです。

野口氏は、本稿で、「(EUは)政治的にはきわめて野心的であるが、経済的には失敗することがほぼ確実なばかげた実験である」と冷たく言い放っていますが、これに反論することばが僕には見つかりません。

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吉永 税制 ,

金融所得一体課税に負の側面

2010年 4月 5日

・資本(金融)所得税が重いと成長を抑制
・主要国では税率が趨勢的に低下する傾向
・北欧諸国は労働諸国との二元的税を実現

(日本経済新聞2010年4月5日22面経済教室「包括的所得税に負の側面」土居丈朗)

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「昨年12月にまとめた税制改正大綱は今後の税制改革の方向性として、個人所得税は本来ならすべての所得を合算する「『総合課税』が理想」としつつ、「当面の対応」として「株式譲渡益・配当課税の税率の見直しに取り組むとともに、損益通算の範囲を拡大し、金融所得の一体課税を進める」と言及した」
(前掲稿)

これに対し、土居氏は、経済学の実証研究では、金融所得一体課税を行なうと経済活動を大きく阻害するため望ましくないという結果が数多く出ていると論じています。

例えば、ジャッド米スタンフォード大学教授やパリ・スクール・オブ・エコノミクスのチャムレイ教授は、

「資本所得は課税は長期的にはゼロとするのが望ましい」(前掲稿)

と結論づけています。

また米ハーバード大学のマンキュー教授も、「概して労働所得課税による労働供給への悪影響よりも資本所得課税による資本蓄積への悪影響のほうが大きいから、資本所得税はできるだけゼロに近い税率で課税するのが望ましいと主張している」(前掲稿)ということです。

さらにスウェーデンなど北欧諸国でも資本所得に累進課税は行なわれていないことが紹介されています。

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吉永 税制

グルメ杵屋、直営全店対象に退去費見積り

2010年 3月 20日

うどんチェーンのグルメ杵屋は2011年3月期、「資産除去債務」と呼ぶ新しい会計基準520店の直営店に適用する方針だ。将来、営業不振などで閉店・退去する可能性があることから、退去費用を見積もって財務諸表に反映させる。費用は11年3月期に特別損失として計上する予定だ。
(日本経済新聞2010年3月20日16面)

【CFOならこう読む】

「資産除去債務は工場などの固定資産を解体・撤去する際の費用をあらかじめ見積り、負債に計上するもの。グルメ杵屋は大半の飲食店を直営方式で商業施設を中心にテナント出店しており、退去の際は原状回復費用が平均で460万円かかる見通し。525店全店だと約24億円に上る」(前掲紙)

資産除去債務に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第21号)は、建物等賃貸契約に関連して敷金を支出している場合の会計処理として、敷金等から減額できる旨記載しています。

「9.建物等の賃借契約において、当該賃借建物等に係る有形固定資産(内部造作等)の除去などの原状回復が契約で要求されていることから、当該有形固定資産に関連する資産除去債務を計上しなければならない場合がある。この場合において、当該賃借契約に関連する敷金が資産計上されているときは、当該計上額に関連する部分について、当該資産除去債務の負債計上額及びこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法によることができる」

なおこの処理を行なう場合には、適用初年度の期首において、敷金の回収不能見込額のうち前期以前の負担に属する金額を、特別損失に計上します(適用指針15項)。

従って、グルメ杵屋が11年3月期に特別損失として計上するのは10年3月期以前負担分であると思われます。

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吉永 税制

IBMが4千億円申告漏れ

2010年 3月 19日

コンピューター製造販売大手「日本アイ・ビー・エム」(日本IBM、東京都中央区)の企業グループが、東京国税局の税務調査を受け、平成20年12月期までの5年間で、4千億円超の申告漏れを指摘されていたことが18日、分かった。法人税の追徴税額は300億円以上とされ、申告漏れ額は過去最大規模とみられる。日本IBM側は争う意向を示している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100318-00000504-san-soci

【CFOならこう読む】

「財政悪化が進む中業界関係者によると、日本IBMの親会社「アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス」(APH、同区)は平成14年ごろ、米IBMから日本IBMの全株(約2兆円相当)を購入。その後、株式の一部を購入時より安く日本IBMに売却した結果、20年12月期までの5年間で4千億円超の赤字を計上したとされる。
APHは20年から子会社を含むグループの所得の損益を合算して申告・納税する連結納税制度を導入しており、同年は日本IBMの黒字がAPHの赤字と相殺されたことでグループの法人税納税額がゼロになったという」(前掲紙)

購入価格より安く売却したことにより赤字が計上された点ではなく、自社株取得であるところが本件のポイントです。

法人が、市場等から時価で購入した株式を同じ価格で発行会社に買い取らせたとしても(発行会社にとっては自社株買い)、赤字を作ることができるのです。

楽天・TBSの案件その他の場面で、このことについては当ブログでは何度かお話ししています。

つまりこういうことでした。

税務上、自己株取得の場合、取得対価のうち、取得会社の「1株当たり資本等の金額」を上回る金額が「みなし配当」とされ、「1株当たり資本等の金額」と株主の譲渡原価との差額が株式譲渡損益となります。

例えば100円で市場から購入した株価を発行会社に100円で自社株買いさせるとします。発行会社の「1株当たり資本等の金額」が10円だとすると取得対価100円と「1株当たり資本等の金額」10円の差90円が「みなし配当」となり、「1株当たり資本等の金額」10円と株式の簿価100円との差90円が株式譲渡損となります。

法人の場合、受取配当の一部又は全部が益金不算入となるので譲渡損失だけを税務上赤字として計上することができるのです。

IBMの場合は、連結納税制度を採用していることにより、APHで生じた損失を日本IBMの利益と損益通算することにより納税額が圧縮されます。税務当局はこれを租税回避行為と認定したというのが今日の記事です。

・日本に持株会社を作るためにAPHが日本IBM株式を米IBM社から購入する。
・この株式を日本IBMがAPHから自社株買いする。
・連結納税により親子の赤字と黒字を損益通算する。

という一連の行為はそれぞれを見た場合異常な取引とは言えず、異議申立その他今後の進展が注目されます。

なお平成22年税制大綱では、この手のスキームを塞ぐべく以下の手当がなされています。

「 資本に関係する取引等に係る税制
イ みなし配当の際の譲渡損益
(イ) 100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、その譲渡損益を計上しないこととします。(再
掲)
(ロ) 自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずるみなし配当については、益金
不算入制度(外国子会社配当益金不算入制度を含みます。)を適用しないこととします。
(ハ) 抱合株式については、譲渡損益を計上しないこととします。 」

【リンク】

2009年12月22日「平成22 年度税制改正大綱」[PDF]

吉永 税制

ビックカメラの池袋本店を巡る決算修正に伴う更正請求、税務署は認めず

2010年 3月 17日

ビックカメラは、2002年に池袋本店などを対象に実施した不動産流動化の課税処理について、東京国税局に意義申し立てをする見通しだ。流動化の適否を巡り、証券取引等監視委員会と税務当局の判断が分かれたためで、東京国税局に再調査を求めたい考えだ。
(日本経済新聞2010年3月16日17面 一目均衡)

【CFOならこう読む】

「同社は2002年、不動産流動化により池袋本店などを会計上、売却処理した。しかし、日本公認会計士協会の実務指針では売却先のSPC(特別目的会社)に出資する豊島企画(東京・渋谷)がビックカメラの子会社にあたると監視委に指摘され、売却処理を取り消した」(前掲紙)

本件については、当ブログでは2008年7月15日(http://cfonews.exblog.jp/8305889)及び2008年9月30日(http://cfonews.exblog.jp/8688347)に取り上げました。

ところで会計上誤謬が発見され、決算修正を行なった場合の税務処理はどのようになされるべきでしょうか?

この点、企業会計基準24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(平成23年4月1日以後開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更および過去の誤謬の訂正から適用)

との関連もあるので少しだけ触れてみたいと思います。

以下、KPMG ニューズレターから引用します(http://www.kpmg.or.jp/resources/newsletter/tax/201002/03.html

「誤謬として取り扱われる事項を次の2つの類型に区分して、それぞれのパターンにおける法人税法上の取扱いを見てみよう。

(ア)法人税法の規定に従っていなかった、あるいはその計算に誤りがあった場合

(イ)法人税法の規定には従っており、かつ、計算に誤りはないが、一般に公正妥当な会計処理基準には則していなかった場合

(ア)については、修正申告の提出あるいは更正の請求もしくは更正処分の対象になる。

(イ)については、法人税法の規定自体には則して作成された確定申告書であるため、修正申告あるいは更正の請求もしくは更正処分の対象となる事象とは考えられない。」

本件についての税務署の判断は、「売買がなかったものとして金融取引とする理由はない」ということから(イ)のケースに相当するということなのでしょう。

会計上流動化が否定されたにも関わらず、税務上は流動化を肯定するということがあり得るのか、異議決定が注目されます。

税務署としては3億円程度の所得隠しを挙げたばかりに、法人税26億円の減額を求める更正請求を受けることになったわけで、更正請求は認められないと言いたい気持ちは心情的には理解できます。

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吉永 税制