株式市場で高度経済成長期以来の増資に踏み切る企業が相次いでいる。東洋紡で43年ぶり、東武鉄道も40年ぶりに増資が復活した。長い停滞を抜け出し、反転攻勢が始まるといえるか否か。市場はまだ疑心暗鬼だ。
(日本経済新聞2011年2月25日17面)
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昨日東武の40年ぶりのエクイティ・ファイナンスをとりあげましたが、今日はその続報です。
「東武の場合は、調達資金の大半を新株予約権付社債の買い入れ消却に使い、成長期待に結びつくとは言い難い。金融危機以降、安易な大型増資が繰り返されたことが、世界の投資家の日本株離れを引き起こしてきた。
増資発表を受けた東武株は前日比12%安、東洋紡株は9%安と急落。やはりまた「増資イコール株売り」の洗礼を浴びた」(前掲紙)
今回買い入れ消却されるCBの転換価格は787円、東武株の23日の終値は455円でしたから、現時点では転換される可能性は薄く、そういう意味ではこのCBはほとんどデットと見て良いでしょう。
とすると、今回の増資は、資本構成をデットからエクイティにシフトするだけの意味しかなく、成長期待云々というより、最適資本構成はどこにあるかがポイントになります。
2010年12月末現在の東武の自己資本比率は13.3%にすぎず、自己資本を厚くする必要性はあるとは思いますが、株価が400円そこそこの今やるべきであったかについては疑問が残ります。
【リンク】
なし
東武鉄道は23日、3月に公募増資などで最大932億円を調達すると発表した。公募増資は1970年12月以来およそ40年ぶり。調達資金で2008年に発行したCBを買入消却し、財務を強化する。
(日本経済新聞2011年2月24日15面)
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今回の増資の主たる目的は、2008年10月に発行された2014年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)及び東武の海外特別目的子会社であるTR Preferred Capital Limitedが発行したユーロ円建交換権付優先出資証券を、普通株式による調達に切り替えることにあります。
2008年10月に発行されたCBの概要は当ブログでも2008年9月26日のエントリー「東武のハイブリッド証券」で取り上げています。
CBと優先出資証券の買い入れの概要は以下の通りです(プレスリリースから転載します)。

※クリックすると拡大表示します。
なお、本優先出資証券の買入れに関して、本優先出資証券の全保有者から本日時点において、新株式発行による資金調達の完了を前提に買入れに応じる旨の内諾を得ております。
また、本優先出資証券は、ハイブリッド証券(※)と称されるもの(以下「本ハイブリッド証券」という。)であり、本ハイブリッド証券と同等以上の資本性を持つ手段での調達資金を原資とする借替条項(リプレイスメント)の規定に基づいて、買入れを実施するものであります。
※ハイブリッド証券は、資本と負債の中間的な性質を有する証券であり、負債性調達手段の特性を有すると同時に、主要格付機関から一定の資本性が認定され、格付目的上の実質的な財務構成比率を改善し、財務の安定性を高める資本性調達手段としての特性を兼ね備えている証券であります。 当社グループが2008年10月に発行した本ハイブリッド証券は、主要格付機関(株式会社格付投資情報センター及び株式会社日本格付研究所)より70%以上の資本性認定がなされております。
なお、本ハイブリッド証券及び当該証券に係る借替条項等の詳細については、平成20年9月25日に公表いたしました「第三者割当による2014年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行及び当社海外特別目的子会社によるユーロ円建交換権付優先出資証券の発行に関するお知らせ」をご参照ください。
(2011年2月23日「2014 年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)及び ユーロ円建交換権付優先出資証券の買入れ、 子会社の解散並びに特定子会社の異動に関するお知らせ」東武鉄道株式会社 [PDF])
参考までにCBに付されていたリプレイスメント条項を記載しておきます。
借替証券
当社は、本社債の払込期日以降転換された当社の2016年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権社債の額面総額相当額を除き、当社又は資金調達子会社のいずれかが本社債の償還日、取得日又は買入日以前6ヶ月間に、償還、取得又は買入れされる本社債の額面金額の総額(及びその未払残高)以上の額面総額又は払込金額総額で借替証券を発行又は販売することにより資金を調達していない限り、本社債につき、上記(ア)から(オ)記載の償還若しくは買入れ又は下記5.(12)記載の現金及び株式を対価とする取得をしないことを意図している。
「借替証券」とは、下記(i)から(iv)までの証券又は債務をいい、下記(ii)から(iv)まで証券又は債務の場合には、本社債の借替証券である旨公表されており、かつ、本優先出資証券の発行日における本優先出資証券と同等以上の資本性をすべての格付機関から得ているものをいう。
(i) 本株式
(ii) 同順位証券
(iii) 同順位劣後債務
(iv) 当社のその他一切の証券及び債務
(2008年9月25日「第三者割当による 2014 年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行及び当社海外特別目的子会社によるユーロ円建交換権付優先出資証券の発行に関するお知らせ」東武鉄道株式会社 [PDF])
【リンク】
2011年2月23日「新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ」東武鉄道株式会社 [PDF]
2011年2月23日「2014 年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)及び ユーロ円建交換権付優先出資証券の買入れ、 子会社の解散並びに特定子会社の異動に関するお知らせ」東武鉄道株式会社 [PDF]
2008年9月25日「第三者割当による 2014 年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行及び当社海外特別目的子会社によるユーロ円建交換権付優先出資証券の発行に関するお知らせ」東武鉄道株式会社 [PDF]
伊藤園が、議決権がない代わりに配当額が多い優先株を発行して3年あまり。普通株より高い配当利回りに着目した個人を中心に株主の裾野が広がるなど成果は出ている。だが認知度は上がらず売買の流動性も高くない。
(日経ヴェリタス2011年1月24日14面)
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昨年12月27日に、伊藤園は優先株の自社株買いと消却を行うことをリリースしました。その内容は次の通りです。
◯取得に関する条項
| 取得に関する株式の種類 |
当社第1種優先株式 |
| 取得し得る株式の総数 |
300,000株(上限) |
| 取得価額の総額 |
350百万円(上限) |
| 取得する期間 |
平成22年12月28日から平成23年2月22日まで |
◯自己株式の消却について
| 消却する株式の種類 |
当社第1種優先株式 |
| 消却する株式の総数 |
900,000株(予定) |
| 消却後の発行済株式総数 |
34,346,962株(予定) |
| 消却予定日 |
平成23年3月31日 |
「自社株買いや金庫株消却は株価の買い材料になるはずだが、翌28日の優先株は992円で前日比12円高どまり。最初に優先株自社株買いを発表した2009年12月のときに翌日の優先株の株価が8.2%も上昇したのと比べると反応は鈍い」(前掲紙)
記事では実態以上に優先株が割安になっている可能性があると、次のような分析を行っています。
「普通株の株価は1400円で優先株は1014円(21日終値)。普通株の1株利益は約53円でPERは26.6倍。配当が10円多い優先株の1株利益は約63円になり、PERが普通株と同じと考えれば優先株の理論株価は1675円になる。つまり実際の株価との差(661円)が議決権に相当する部分と考えられる。議決権部分が普通株に占める割合は47%。上場直後はこの比率が12%だったので、結果的に優先株の経済価値部分が大きく目減りしたことになる」」(前掲紙)
日本企業の議決権の価値は外国企業に比べ相対的に高いという分析も存在しますが(2008年7月19日「無議決権株の価格」)、後に続く会社が出てこない現状では、議決権の客観的な価値評価を行うことは出来ません。
したがって、伊藤園の優先株の価格形成の妥当性は良くわからない、というのが今日の記事の結論です。
【リンク】
2010年12月27日「伊藤園の優先株、実態以上の割安水準?」株式会社伊藤園 [PDF]
金融庁は19日、既存株主の保護を重視したライツ・イシューの使い勝手を高めるための規制緩和案を正式に発表した。障害になっていた増資の際の事務負担を軽減することが柱。
(日本経済新聞2011年1月19日4面)
【CFOならこう読む】
「金融庁が今回公表した規制緩和は、新型増資の導入を妨げていた実務上のハードルを大きく下げるものだ。増資の際の導入を妨げていた実務上のハードルを大きく下げるものだ。
増資の際の有価証券目論見書の作成・送付義務を株主割当増資については撤廃し、「実務上の最大の障害がなくなる」(米大手証券の引受担当者)。
行使されなかった予約権を証券会社が取得する際の規制もなくし、活用促進に向けて前進することになる」(前掲紙)
この「証券会社が取得する際の規制」とは、大量保有報告書の提出やTOBの義務のことで、この規制を緩和することについて、金融庁・開示制度ワーキング・グループ報告~ 新株予約権無償割当てによる増資(いわゆる「ライツ・オファリング」)に係る制度整備について~は次のように記載しています。
「現行制度上、証券会社が引受け業務により所有・保有する株券等については、払込期日の翌日まで株券等所有割合・株券等保有割合の対象から除外する特例が定められている。
コミットメント型ライツ・オファリングにおいて証券会社がコミットメントを行う行為を「有価証券の引受け」と位置付けて上記の特例を適用する場合には、証券会社が新株予約権を行使して株式を取得するために要する期間等を考慮し、より長い猶予期間を設けることが必要であるとの指摘がなされている。」
要するに、
「証券会社による一時的な取得には、大量保有報告書の提出や公開買い付けの義務をなくす」(前掲紙)
ということです。
【リンク】
2011年1月19日「金融庁・開示制度ワーキング・グループ報告 ~ 新株予約権無償割当てによる増資(いわゆる「ライツ・オファリング」)に係る制度整備について~」[PDF]
金融庁は、企業が既存の株主に新株を購入する権利を渡す新型の増資手法の規制を大幅に緩和する方針を決めた。すべての株主への情報開示書類の送付を企業に義務付けたルールを改め、インターネット上での開示で済むようにする。新株を購入する権利を証券会社が買い取る際の規制も緩め、株主が換金しやすくする。日本市場では企業の増資による株式価値の低下が、外国人投資家の市場離れを招いている。株主利益に配慮した手法の活用を促し、市場の国際競争力を高める。
(日本経済新聞2011年1月10日1面)
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ライツ・イシューとは、
「株主割当増資の一種で、既存の全株主に対して時価よりも低い価格で新株を買える権利(新株予約権)を無償で割り当てる資本調達の仕組み」(日本経済新聞2011年1月11日3面)
です。
「日本では時価を基準に市場から資金が調達できる公募増資が主流だが、株式数の増加で1株当たり利益は減るが、株式の購入に応じれば、株主は出資持分の低下を避けられる。株主が保有株を増やしたくない場合や、購入資金が手当てできないケースは予約権を売却して損失を穴埋めすることが可能だ。株主が手放した予約権を証券会社が買い取り、他の投資家に販売することで、企業は計画通りの規模で資金を調達できる」(前掲紙)
現状ライツ・イシューの実施例は昨年5月のタカラレーベンによる1件しかありません。(2010年3月15日「日本版ライツイシュー第1号:タカラレーベン株急」)
利用が進まない理由として、発行会社側の事務手続きの負担が重いこと、ライツを証券会社が買い取る際の規制があること、が挙げられており、今日のニュースはこういった規制を緩和し、ライツ・イシューの活用を促す、というものです。
「目論見書を(全株主に)送付する代わりに、同(金融)庁の電子開示システムに届出書を登録し、閲覧できるインターネットのアドレスを新聞で告知する仕組みに改める。
(中略)
証券会社が発行済み株式の5%超を取得する契約を結ぶ際に義務付けられている大量保有報告書の提出や、3分の1超を取得する場合に必要となるTOB手続きを省けるようにする」
(前掲紙)
望ましい方向の規制緩和であると思いますが、TOBの潜脱として利用できない仕組みを組み込む必要があると思います。
【リンク】
なし
日銀が10月に決めた追加金融緩和を受けて、社債やREITへの資金流入が加速している。3日から日銀がこれらのリスク資産の買い入れを順次始めるのに先駆けた動きだ。社債の発行件数は週間で3年ぶりの高水準に膨らみ、REIT相場は約2年ぶりの水準に値上がりした。
(日本経済新聞2010年12月3日3面)
【CFOならこう読む】
「3日に社債の買い取りが始まるのを前に、市場では社債発行に踏み切る企業が増えている。今週(11月29日~12月3日)に発行条件を決める社債の銘柄数は25前後になる見通しで、週間ベースでは2007年11月2週(26銘柄)以来、約3年ぶりの高水準になる」(前掲紙)
日銀が買い入れ対象にしたことでトリプルB格の社債の発行が増加しています。
「日興コーディアル証券によると、11月末時点では残存期間1~2年のトリプルB格債の国債に対する上乗せ金利は平均0.68%と1ヶ月間で0.13%縮小した」(前掲紙)
【リンク】
なし
東京証券取引所と金融庁は、企業の公募増資時の空売りを規制する検討に着手した。増資の発表前後に大量の空売りで株価が急落する事例が相次いで
いるためだ。
(日本経済新聞2010年11月12日5面)
【CFOならこう読む】
「東証などが検討しているのは、米国の「レギュレーションM」と呼ばれる規制の導入だ。1997年にSECが導入したルールで、発行価格決定の5営業日前
以降に空売りを実施した投資家については、増資で発行される新株を購入することを禁止している」(前掲紙)
規制も必要ですが、空売りの前提には、増資→ダイリューションというベクトルがあるわけで、そこが一番の問題だと思うのです。
増資により調達した資金が、資本コストを上回る投資に向けられれれば、理論的にはダイリューションは生じません。逆に言うと増資によりダイリューションが起きるのは、市場は調達資金が有効に使われないと見ているからです。
調達資金が良い投資に向かわない限り、いくら規制の網をかけても増資→ダイリューションという方向性は変わらないと思います。
【リンク】
なし
社債市場で需給が逼迫した状況が続いている。先行きの不透明感から企業の設備投資意欲が盛り上がらず、金融機関などの余剰資金が社債市場に流入しているためだ。特に高格付け債にその傾向が顕著で、国債に対するスプレッドが縮小した
状態が続いている。
(日本経済新聞2010年10月6日17面)
【CFOならこう読む】
「社債の流通市場でのプレミアムは、R&IがトリプルAを付与する社債(残存4年未満)で平均0.17%(5日時点)。リーマンショック前の2008年8月以来の低い水準が続いている」
(前掲紙)
日銀が昨日ゼロ金利政策に舞い戻ることを決めました。デフレ脱却を謳い文句に、金利を下げ、資産価格を上げるという政策が、市民の視点から見たときに是認されるのか甚だ疑問です。
市場に潤沢に提供された資金が、次の世代のための実物投資に向かうならまだしも、国債と高格付け社債のバブルを生むだけなら実益はないと思います。
CFOとしてはバブルははじけることを前提に資金調達と余資の運用を考えるべきでしょう。
【リンク】
なし
東京電力は29日、公募増資で最大5549億円を調達すると発表した。国内の事業会社としては今年の最大規模。同社が公募増資するのは29年ぶり。東電は今後10年間で原子力発電所など二酸化炭素の発生を抑える設備投資に2.5兆円、海外を中心とした成長事業に最大1兆円を投じる計画を掲げている。増資資金を充てることで、投資のスピードを自己資本の増強を両立させる考え。
(日本経済新聞2010年9月29日9面)
【CFOならこう読む】
「東電は13日に発表した中期計画で、低炭素化事業と海外事業への投資拡大を明確に打ち出した。今回の調達資金も東通原発1号機(青森県)の建設費や、豪州の液化天然ガス開発事業の権益取得などに振り向ける」(前掲紙)
今回の調達資金のうち2,700億円については低炭素化に向けた新規設備として、発電時にCO2を排出しない原子力発電と熱効率の高い最新鋭火力発電への投資に充当される予定です。
具体的には、今東通原発1号機(青森県)の建設費等に2,200億円、川崎火力発電所2号系列第1軸の建設費等に500億円に充当される予定です。
また残額については、米国サウステキサスプロジェクト原子力発電所3・4号機建設プロジェクトへの参画資金及び現在鉱区開発権益取得等の契約締結に向けて協議中の豪州ウィートストーンLNGプロジェクトへの参画資金等、主に海外事業における投資等に充当される予定です。
現在の発行済株式総数1,352,867,531株に対し公募増資による増加株式数は227,630,000株なので、この増資により、15%程度の希薄化が生じます。
29日の株式市場では東電株は一時8%強下落しました。
【リンク】
2010年9月29日「新株式発行及び株式売出しに関するおしらせ」東京電力 [PDF]
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