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Archive for the ‘M&A’ Category

Uアローズ自己株TOB、エービーシー・マート保有株全株売却へ

2010年 8月 31日

靴専門店大手のエービーシー・マートは30日、発行済株式の24.3%を保有する若者向け衣料品専門大手、ユナイテッド・アローズ(UA)の全株を売却すると発表した。UAが31日から実施する自己株式のTOBに応じる。売却額は最大約107億円となる見込み。一部業務の共通化など連携を模索したが、UAの抵抗が強く資本関係を解消する。
(日本経済新聞2010年8月31日13面)

【CFOならこう読む】

当ブログでは、2009年6月4日のポスティングでABCマートのUA買収
はうまく行かないであろうことを指摘していました。
http://www.cfonews.jp/2009/06/04/abcマート、uアローズ株23取得/

「UAの公開買付価格は1株1000円で、30日終値1132円を11.66%下回る。ABCマートのUA株の取得価格は1株当たり約670円で、保有株をすべて売却した場合には単純計算で約34億円の利益が発生する」(前掲紙)

ディスカウントTOBですね。UAの自己株TOBには上限25%が設定されているため、ABCマート以外の株主が応募してきた場合、あん分比例方式により買付されるため、ABCマートの保有株の一部が売却されないことになることを避けるため、市場価格を下回る価格をTOB価格として設定するのです。

ディスカウントTOBの場合、価格の算定根拠を説明するのが難しいのですが、UAは次のような説明を行っています。

「当社普通株式を保有し続ける株主の利益にも配慮し、資産の社外流出をできる限り抑えるべく、当社普通株式の市場価格に一定のディスカウントを行なった価格により買い付けることにいたしました」

なお本件ではGCAサヴィアンが第三者機関として株価算定をおこなっていますが、市場価格法では1093円〜1148円、DCF法では1167円〜2737円と評価されており、1000円というTOB価格はサポートされていません。

【リンク】

2010年8月30日「自己株式の取得および自己株式の公開買付けに関するお知らせ」株式会社ユナイテッドアロース [PDF]

吉永 M&A ,

住友信託と中央三井、統合比率1.49対1に

2010年 8月 25日

住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスは24日、2011年4月に予定する経営統合の最終契約を結んだと発表した。統合比率は住友信託1.49に対し、中央三井1とする。存続会社は中央三井で、持株会社「三井住友トラスト・ホールディングス」に衣替えする。
(日本経済新聞2010年8月25日4面)

【CFOならこう読む】

本経営統合の内容は以下の通りです。

本経営統合は持株会社方式によるものとし、既に持株会社体制となっている中央三井トラスト・ホールディングスが新しい信託銀行グループの持株会社として活用されます。

具体的には、住友信託銀行が中央三井トラスト・ホールディングスと株式交換を行うと共に、中央三井トラスト・ホールディングスは、三井住友トラスト・ホールディングス株式会社に商号変更します(第一ステップ)。 また、本株式交換後、三井住友トラスト・ホールディングスは、傘下の信託銀行を合併により統合する予定です(第二ステップ)。

従って中央三井トラスト・ホールディングスが住友信託銀行を100%子会社化することになりますが、会計上は住友信託銀行が
中央三井トラスト・ホールディングスを取得した形で処理されることになります(逆取得です)。
昨日の終値ベースで中央三井トラスト・ホールディングスのPBRは0.78倍なので、負ののれんが発生する可能性が高いと思われます。

統合持株会社の概要は次の通りです。

1.商号
三井住友トラスト・ホールディングス株式会社
(英文)Sumitomo Mitsui Trust Holdings, Inc.

2.本店所在地
東京都千代田区
(住友信託銀行が現在他社と共同で開発を進めている「丸の内1-4計画」ビルを本店の所在場所とする予定です。なお、それまでの間は、住友信託銀行の東京本部ビルとする予定です。)

3.代表取締役の役職・氏名
代表取締役会長には常陰 均(現住友信託取締役社長)、代表取締役社長には田辺 和夫(現中央三井取締役社長)が就任する予定です。

4.役員体制
取締役及び監査役の構成は別途協議し合意の上決定されますが、中央三井トラスト・ホールディングスと住友信託銀行がそれぞれ指名する取締役及び監査役は同数となる予定です。

要するに形式的にはあくまで両社対等な経営統合です。

両社のFAは中央三井側がJPモルガン証券と野村証券、住友信託側がUBS証券と大和証券キャピタル・マーケッツで、それぞれからフェアネス・オピニオンを取得しています。

【リンク】

2010年8月24日「中央三井トラスト・グループと住友信託銀行グループの経営統合に関する最終合意等について ~専門性と総合力を併せ持つ「The Trust Bank」の創設に向けて~」中央三井トラスト・ホールディングス株式会社 [PDF]

吉永 M&A

日本企業のM&Aは家を買う感覚に近い?

2010年 8月 24日

「米国ではM&Aは家を買う感覚に近いが、日本では結婚のようなものだ」。米スリーエム(3M)のジョージ・バックレーCEOは23日、こう語った。
(日本経済新聞2010年8月24日11面)

【CFOならこう読む】

「日本では買収する側とされる側の信頼関係が重視されるため、長い時間がかかる」(前掲紙)

いえいえ日本では家を買うのも一生に一回の大仕事です。こういった比喩からして米国とは違うのですね。この相違はどこから来るのかと考えてみると、やはり市場が機能しているかしていないかという点が一番違うと思うのです。

日本で家を買うのが一生の問題なのは、一回買ったものはそう簡単に売れないからです。

日本のM&Aに時間がかかるのは、中堅以上の従業員の再就職が難しいため、雇用が確保される形でないとなかなか従業員の賛同が得られないからです。

いずれも市場の問題です。単純に規制緩和すれば全てが解決するとは思いませんが、政治の役割はとても重要だと思います。

市場原理主義などといって市場を軽視する発言は厳に慎んでもらいたいものです。

【リンク】

なし

吉永 M&A

アパマン最高裁判決ー完全子会社化のための株式買取価格額面の5万円でOK?

2010年 7月 16日

貸仲介のアパマンショップホールディングスが傘下企業を完全子会社化した際、株式の買取価格を額面通りの1株5万円としたのは高すぎるとして、株主が経営陣に損害賠償を求めた株主代表訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は15日、株主側の請求を認めた二審・東京高裁判決を破棄した。経営側の逆転勝訴が確定した。
(日本経済新聞2010年7月16日42面)

【CFOならこう読む】

「アパマンショップHDは2006年、月決めマンション事業を手がける傘下の「アパマンショップマンスリー」を完全子会社化するため、同社の少数株主から1株当たり5万円、総額1億5800万円で株式を買い取った。これに対し、マンスリー社の資産状況が悪化していたことなどから、HDの株主が「(マンスリー社の)株式の評価額は8千万円余りにとどまる)と訴えていた」(前掲紙)

会社は、株式買取りに応じない株主が出てくることに備え、株式交換の準備も同時に進めていて、監査法人等2社に株式交換比率の算定を依頼していました。提出された交換比率算定書の一つにおいては,Aの1株当たりの株式評価額が9709円,他の一つにおいては,類似会社比較法による1株当たりの株主資本価値が6561円ないし1万9090円とされたおり、これと比べ5万円の株式買取価格は高いということで株主代表訴訟が提起されました。

マンスリー社は,主として,備品付きマンスリーマンション事業を行うことなどを目的として平成13年に設立された会社であり,設立時の株式の払込金額は5万円でした。マンスリー社の株式は,発行済株式の総数9940株の約66.7%に相当する6630株をHDが保有していたが,本体の事業の遂行上重要であると考えていた本体のフランチャイズ事業の加盟店等もこれを引き受け,保有していました。

加盟店の関係を良好に保つために、当初の払込み価額で株式買取を行なう必要性があると経営陣が判断し、またその判断の妥当性について弁護士の意見も聴取していたということです。

これに対し最高裁は次のように経営陣の責任は問われない旨判示しています。

「以上の見地からすると,参加人がAの株式を任意の合意に基づいて買い取ることは,円滑に株式取得を進める方法として合理性があるというべきであるし,その買取価格についても,Aの設立から5年が経過しているにすぎないことからすれば,払込金額である5万円を基準とすることには,一般的にみて相応の合理性がないわけではなく,参加人以外のAの株主には参加人が事業の遂行上重要であると考えていた加盟店等が含まれており,買取りを円満に進めてそれらの加盟店等との友好関係を維持することが今後における参加人及びその傘下のグループ企業各社の事業遂行のために有益であったことや,非上場株式であるAの株式の評価額には相当の幅があり,事業再編の効果によるAの企業価値の増加も期待できたことからすれば,株式交換に備えて算定されたAの株式の評価額や実際の交換比率が前記のようなものであったとしても,買取価格を1株当たり5万円と決定したことが著しく不合理であるとはいい難い。

そして,本件決定に至る過程においては,参加人及びその傘下のグループ企業各社の全般的な経営方針等を協議する機関である経営会議において検討され,弁護士の意見も聴取されるなどの手続が履践されているのであって,その決定過程にも,何ら不合理な点は見当たらない。

以上によれば,本件決定についての上告人らの判断は,参加人の取締役の判断として著しく不合理なものということはできないから,上告人らが,参加人の取締役としての善管注意義務に違反したということはできない。」

要するに、経営上の合理的な理由があれば、時価と異なる価格で株式の売買を行なうことが認められるということです。

【リンク】

「平成21(受)183 損害賠償請求事件 平成22年07月15日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所」[PDF]

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吉永 M&A ,

会社分割巡る従業員転籍、事前協議なければ無効

2010年 7月 13日

会社分割で新会社に転籍することになった日本IBMの従業員が、同社に転籍の無効の確認などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷は12日、「会社が分割に関して従業員との協議や説明をまったく行なわなかった場合には、転籍は無効となる」との初判断を示した。
(日本経済新聞2010年7月12日18面)

【CFOならこう読む】

「そのうえで今回はIBM側が十分な説明をしたと判断、原告側の上告を棄却した。原告側敗訴の一、二審判決が確定した。会社分割は2001年施行の改正商法で制度化され、従来より柔軟に会社組織を再編できるようになった。
法律上、会社分割に伴って従業員の労働契約は原則として自動的に新会社に引き継がれるが、その際には会社は従業員に説明するよう定められた」
(前掲紙)

承継対象となる営業に主として従事する労働者が上記記載をされたときには当然に労働契約承継の効力が生じ(承継法3条),当該労働者が上記記載をされないときには異議を申し出ることによって労働契約承継の効力が生じます(承継法4条)。また,上記営業に主として従事する労働者以外の労働者が上記記載をされたときには,異議を申し出ることによって労働契約の承継から免れるものとされています(承継法5条)。

また、5条協議として,会社の分割に伴う労働契約の承継に関し,分割計画書等を本店に備え置くべき日までに労働者と協議をすることを分割会社に求めています(商法等改正法附則5条1項)。

当該判決は、特定の労働者との関係において5条協議が全く行われなかったときには,当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるものと解するのが相当であると判示しており、会社分割の際には留意する必要があります。

裁判では、5条協議が十分に行なわれたかどうかが争点となりました。この点について、最高裁の考え方を以下に抜粋します。

「次に5条協議についてみると,前記事実関係によれば,被上告人は,従業員代表者への上記説明に用いた資料等を使って,ライン専門職に各ライン従業員への説明や承継に納得しない従業員に対しての最低3回の協議を行わせ,多くの従業員が承継に同意する意向を示したのであり,また,被上告人は,上告人らに対する関係では,これを代理する支部との間で7回にわたり協議を持つとともに書面のやり取りも行うなどし,C社の概要や上告人らの労働契約が承継されるとの判別結果を伝え,在籍出向等の要求には応じられないと回答したというのである。

そこでは,前記2(3)のとおり,分割後に勤務するC社の概要や上告人らが承継対象営業に主として従事する者に該当することが説明されているが,これは5条協議における説明事項を前記のとおり定めた指針の趣旨にかなうものというべきであり,他に被上告人の説明が不十分であったがために上告人らが適切に意向等を述べることができなかったような事情もうかがわれない。なお,被上告人は,C社の経営見通しなどにつき上告人らが求めた形での回答には応じず,上告人らを在籍出向等にしてほしいという要求にも応じていないが,被上告人が上記回答に応じなかったのはC社の将来の経営判断に係る事情等であるからであり,また,在籍出向等の要求に応じなかったことについては,本件会社分割の目的が合弁事業実施の一環として新設分割を行うことにあり,分割計画がこれを前提に従業員の労働契約をC社に承継させるというものであったことや,前記の本件会社分割に係るその他の諸事情にも照らすと,相応の理由があったというべきである。そうすると,本件における5条協議に際しての被上告人からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため,法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかであるとはいえない。

以上によれば,被上告人の5条協議が不十分であるとはいえず,上告人らのC社への労働契約承継の効力が生じないということはできない。また,5条協議等の不十分を理由とする不法行為が成立するともいえない。」

それにしても、この分割対象となった事業部門が持株会社の下にぶら下がる子会社であり、この会社を他社と合併させるということであれば、このような手続きは不要であるわけで、何故会社分割の場合にだけ必要とされているのか判然としません。

【リンク】

「平成20(受)1704 地位確認請求事件 平成22年07月12日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所」[PDF]

吉永 M&A

KKR、インテリジェンス買収へ

2010年 6月 21日

米大手買収ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は18日、総合人材サービスを展開するインテリジェンスを、親会社のUSENから買収することで合意した。2006年に日本拠点を開設して以来、KKRにとって第1号の日本企業の買収となる。ただ、買収規模が、325億円と小ぶりなうえ、人材サービス業は一般的にファンド向きの投資対象とはいえない。「動かざる巨人」が長い沈黙を破って本格始動した理由を探ると、米老舗ファンドの投資哲学が見えてくる。
(日経ヴェリタス2010年6月17日17面)

【CFOならこう読む】

「人材サービス業は一般的にファンド向きの投資対象とはいえない」というより、高レバレッジの投資には向かないというべきでしょう。

私も最初にこのニュースを聞いたときに、何故インテリジェンスなんだろうか、と思いました。

この点、KKR日本代表の簑田氏は「景気変動の影響はあるが、日本の旧来の終身雇用制度の転換を迫られる中、人材サービス業は社会インフラとして絶対伸びていく」(前掲紙)と投資の理由を語っています。

KKRというと、80年代のハイレバレッジでタックスメリットをとことん追求するファンドというイメージが強いので、簑田氏の発言は意外な感じがしましたが、真っ当な投資をしようとしているんだなあと妙に感心してしまいました。

【リンク】

なし

吉永 M&A

「メガ百貨店」勝ち組なし

2010年 6月 3日

縮む内需に対応すべく、大再編時代に入った流通業界。だが新たな成長につながるはずだった百貨店やスーパーの合従連衡は、なかなか規模を利益に結ぶつけられない。
流通M&Aは果実を得ることができるのか。

(日本経済新聞2010年6月2日15面)

【CFOならこう読む】

2003年6月 ミレニアムリテイリング(そごうと西武)発足
2007年9月 J・フロントリテイリング(大丸と松坂屋)誕生
2008年4月 三越伊勢丹ホールディングス発足
2008年10月 高島屋とエイチ・ツー・オーリテイリング(阪急と阪神)が2011年までの経営統合発表
2010年3月 大丸と松坂屋合併
高島屋とエイチ・ツー・オーリテイリング、統合断念

「生き残りを目指して相次ぎ誕生した売上高1兆円クラスの「メガ百貨店」が統合効果を引き出せない。
歴史や経営理念の異なる老舗統合は試行錯誤の連続だ。大丸・松坂屋は統合前に掲げた本部による商品一括仕入れを中止した。仕入コストの削減を狙ったが、「地域ごとの需要が違いすぎて、機能しなかった」」(前掲紙)

規模のメリットをお題目に掲げるM&Aは、うまくいかない場合が多い、ということをこのブログで何度かお話ししています。

規模のメリットは、究極的には単位当たりの固定費を引き下げることにより実現します。
流通業界でM&Aが求められるのは、需要に比し供給が過剰であるので、固定費を引き下げるためにはブランドの統一、店舗閉鎖等のリストラといった大きな痛みを必要とします。

しかしこれまでに行なわれた百貨店の統合にはその覚悟が感じられません。共同持株会社の下に従来通りのブランドを付した会社をぶら下げただけで規模のメリットが得られるはずはないのです。

供給が過剰なのだから、供給を減らすしか百貨店業界が生き残る道はない、という現実をもっと直視すべきです。そういう意味では、強者が弱者を力づくで吸収する、というタイプの再編がこの業界には必要なのかも知れません。

強者がいれば・・・、の話ですが。

【リンク】

なし

吉永 M&A

カネボウ株式買取価格高裁上告棄却

2010年 5月 25日

今日は、備忘記録です。

旧カネボウの株式買い取り価格を巡り、「360円が妥当」とした東京地裁決定を不服とする一部株主の抗告について、東京高裁(大坪丘裁判長)は24日、これを棄却した。地裁が決定した買い取り価格は、会社側提示の価格(162円)の2.2倍だったが、株主側は「低すぎる」などと主張していた。
(日本経済新聞2010年5月25日15面)

吉永 M&A , ,

金融庁、TOB資金の詳細文書要求

2010年 4月 26日

日本の企業買収ルールがさりげなく変わったのは今年3月末のことだ。金融庁が公表したTOBを巡る「Q&A集」の32番目に、それは記してある。TOB資金の出し手である銀行や投資ファンドなどに、詳細な融資・出資条件の開示を求める内容だ。一般には知られていないが、M&Aの専門家は「回復しつつあるM&A機運に水を差す」と危ぶんでいる。
(日経ヴェリタス2010年4月25日13面)

【CFOならこう読む】

「株券等の公開買付けに関するQ&A」問32の内容は次の通りです。


公開買付けに要する資金について、公開買付けの開始後に第三者から貸付けを受ける場合、公開買付届出書の添付書類である「公開買付けに要する資金・・・の存在を示すに足る書面」としてどのような書面を添付する必
要がありますか(法第27条の3第2項関係)

「公開買付けに要する資金・・・の存在を示すに足る書面」(他社株府令第13条第1項第7号)は、決済に要する資金の調達が可能であることを相当程度の確度をもって裏付けるものでなくてはならないと考えられます。

したがって、公開買付けに要する資金について、公開買付けの開始後に第三者から貸付けを受けるため、「公開買付けに要する資金・・・の存在を示すに足る書面」として融資証明書等を添付する場合には、当該融資証明書等によって、当該貸付けが相当程度の確度をもって実行されるものであることが裏付けられなければならないと考えられます。相当程度の確度があるか否かは、貸付人の状況及び貸付けに係る契約又は合意の内容等の事実関係に照らし、個別事案ごとに判断する必要があります。

具体的には、例えば、以下のような場合には、相当程度の確度がある場合には該当しないと考えられます。

・ 貸付人の資力に疑義があることが明らかである場合
・ 貸付けに係る契約の締結又は貸付けの実行のための前提条件が付されており、当該前提条件の内容が、重要な点において具体的かつ客観的ではない場合
・ 貸付人において、貸付けの実行のために当該時点において必要な内部的な手続(事前の条件提示に係る稟議・決裁等)が行われていない場合

また、相当程度の確度があるというためには、以下の点が確保されている必要があると考えられます。

・ 貸付人の承諾なく公開買付期間が延長されていないことを貸付けに係る契約の締結又は貸付けの実行のための前提条件とする場合には、与信判断に与える影響が軽微な事由による延長について当該承諾を不合理に拒否しないこととなっていること
・ 当該融資証明書等の効力に期限が付されている場合には、少なくとも、当初の公開買付期間(当初から予定されている延長を含みます。)及び公開買付けの終了から決済までの期間に10営業日を加えた期間をカバーするような期限であること

なお、当該貸付けに係る契約の締結又は貸付けの実行のための前提条件が付されている場合には、当該前提条件のうち、重要な事項の内容(いわゆる表明・保証等、当該前提条件において言及されている事項のうち、重要な事項の内容を含みます。以下この問において同じです。)を公開買付届出書に具体的に記載し、又は、当該前提条件のうち、重要な事項の内容が記載された書面を添付する必要があると考えられます。

(注)当該前提条件の内容が個人のプライバシーや会社の営業秘密に関わるなどの理由により、その開示をすることが、貸付人、公開買付者又は対象者その他の者の利益を著しく害するおそれがある場合には、当該利益に配慮した開示の方法が認められると考えられます。 」

このQ&Aが出てから最初の案件となったジェイ・エー・エーのMBOのケースでは17~18頁の融資証明書が開示されています。

たとえば三菱東京UFJ銀行の融資証明書には、別紙として以下の書類が添付されています。

融資引受条件
本件融資の実行の前提条件
借入人の表明・保証
期限の利益喪失事由

記事では、「本来なら正面から議論し、内閣府令の改正といった立法上の手立てをすべきだ」と言う弁護士の見解が紹介されています。

しかし「公開買付けに要する資金・・・の存在を示すに足る書面」の内容を金融庁がより明確化するためにQ&Aの手法によることが問題であるとは思えません。

「金融庁の見解はどうだろう。総務企画局の幹部は「規制を強化したのではなく、明確化したということだ」と説明する。詳しい融資条件などがわかれば「一般の投資家でも」TOBの確実性を見極めることができる」という」(前掲紙)

全くもって正論であると私は思います。

【リンク】

「株券等の公開買付けに関するQ&A」問32

吉永 M&A ,

株式移転による経営統合は中間段階、合併を要求ーNKSJの筆頭株主ファンド

2010年 4月 22日

大手損保グループのNKSJホールディングスの筆頭株主である米投資ファンド、サウスイースタン・アセット・マネジメントは21日、NKSJに傘下の損保2社の合併や共同最高経営責任者(CEO)体制の見直しを要求したことを明らかにした。合併によるコスト削減に加えて、取引先との株式持ち合いの解消などで収益力向上を迫る意向だ。
(日本経済新聞2010年4月22日4面)

【CFOならこう読む】

(同ファンドの)メイソン・ホーキンス氏は次のように述べています。

「持株会社は中間段階。2つの損保会社を速やかに合併して早期にコストを削減する必要がある、と述べた。

損保ジャパンの佐藤正敏社長と日本興亜の兵頭誠社長が共同CEOを務める体制には、リーダーであるCEOは一人であるべきだ、として佐藤社長が単独でCEOを務めるよう
求めた」(前掲紙)

日本はいまだM&A草創期にあります。ついこの前まで経営統合と言えば、対等の精神に基づく、という前置きが必ず付されたものです。

株式移転による共同持株会社を設立する形態での経営統合が多いのも、対等という衣を着せることができるのと、それぞれの会社がとりあえずは存続することができるので、
統合後も一定の自治を維持することができるからです。

日本企業が経営統合の際にこだわるのは、
トップ人事
役員人事
社名
本店所在地
です。

NKSJの場合で言うと、
トップ人事
共同CEO 兼 代表取締役会長 兵頭 誠 (日本興亜)
共同CEO 兼 代表取締役社長 佐藤 正敏 (損保ジャパン)

役員人事
取締役 藤井 康秀 (日本興亜)
取締役 山口 雄一 (日本興亜)
取締役 櫻田 謙悟 (損保ジャパン)
取締役 山口 裕之 (損保ジャパン)
社外取締役 6名

監査役 角川 与宇 (日本興亜)
監査役 飯田 二郎 (損保ジャパン)

社名
NK=日本興亜が先

本店所在地
損保ジャパンの本店

と見事に対等の精神に基づいた経営統合の形式を取っています。

これに加え持株会社の部室長10名の人事も両社5名ずつになっています。

しかしシナジー実現のためには早期に一つの会社になる必要があり、そのためにはホースキンス氏が言うように合併するのが望ましいと言えます。

今後日本企業でも、共同持株会社の形態ではうまく統合が進まないということで、合併に向かう事例が増えて来るものと思われます。

そのときにはどちらが主導権を握るかはっきりします。つまり買い手がどちらであるかがはっきりするということです。

そういう段階を経ることで上場会社が買収されるということが徐々に普通になっていくのだと思います。

それがどれくらい先のことになるかはわかりませんが、そのときには共同持株会社なんて意味がない、ということになっているかも知れません。

【リンク】

2009年10月30日「株式移転計画書の作成および事業計画の策定について」株式会社損害保険ジャパン[PDF]

吉永 M&A