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オリンバス損失隠し

オリンバスが証券投資の損失を隠していた問題で、1990年代に財テクに失敗した同社が保有していた金融商品の含み損は最大で約1千数百億円に上ったことが8日、関係者の話で分かった。
(日本経済新聞2011年11月7日1面)

【CFOならこう読む】

「2001年3月期に金融商品の一部についてそれまでの簿価による評価ではなく、含み損を実際の損失として決算に計上する時価会計制度が導入された。同社は損失の表面化を回避するため、当時、付き合いのあった証券関係者らとともに社外の投資ファンドに含み
損を抱えた金融商品を移し替える「飛ばし」を考案したという。
飛ばしには、2000年3月期に同社が300億円を出資したケイマン諸島籍のファンドなど複数のファンドを活用。含み損を抱えた金融商品と、ファンドが発行する債券を簿価で等価交換したという」(前掲紙)

もともとは、含み損を抱えた有価証券の時価が戻るのを待とう、というのがファンドに飛ばした動機だったのでしょう。

含み損を含み損のまま抱えている分には損失補填のためにキャッシュを必要とすることはないのですが、問題となっている買収を行った2006年当時に、何らかの理由で損失を実現させる必要性が生じたものと思われます。

この点、2006年9月に公表された「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第20号)が公表され、支配下にあるファンドも連結対象となることが明確になったことが影響しているのかも知れません。

損失補填や架空売上の原資を資産取得の際、価格を膨らませることで捻出する、というのは典型的な手口です。取得される資産が固定資産や会社そのものである場合には、減価償却やのれんの償却を通じて損失が徐々に認識されることになります。損失そのものを永遠に「飛ばす」ことは不可能で、経営者もそのことは知っていたはずです。要するに問題先送りですね。

この問題先送り対質はあらゆる日本の組織に見られる傾向で、そういう意味では組織の責任あるポストにあるすべての人が、今回のオリンパスの事件を教訓とすべきです。

経団連会長が、昨日、「トップの倫理観(の問題)」とご立派なコメントを残されたそうですが、日本のエスタブリッシュメントのトップとして、人ごとではなく自己の問題として猛省する姿勢が必要ではないでしょうか。

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なし

Olympus shows Japan’s negative side

オリンパスの菊川剛会長兼社長と社長職を解かれたマイケル・ウッドフォード氏との間で解任理由や過去の買収を巡り主張が対立している問題について複数の海外メディアが詳報を伝えている。
(日本経済新聞夕刊2011年10月20日3面)

【CFOならこう読む】

「英紙フィナンシャル・タイムズは「オリンパス問題は日本のネガティブな側面をあらわにした」と報じた。日本企業は(株主の方を向かずに)取締役の内輪の議論で意思決定がなされているとして「日本企業は変革を遂げる時期に来ている」と強調した。」(前掲紙)

フィナンシャル・タイムズは次のカルロス・ゴーンの言葉を引用しています。
FT has quoted Carlos Ghosn’s following words.

“If you’re French and you come to Japan, you have no chance, zero, of budging the system an inch”

But I would like to say to the all excellent managers of the World, “Nissan has changed”.

Olympus is a company unusual also in Japan.

Please come to Japan.
Japan changes.

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オリンパス社長解任、続報

14日突然解任されたオリンパスのマイケル・ウッドフォード前社長兼最高経営責任者(CEO)は15日、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、解任直前に、書簡で「重大な企業統治上の懸念」を理由に、菊川剛会長と森久志副社長に対し辞任を求めていたことを明らかにした。
(ウォールストリートジャーナル日本版2011年10月17日)

【CFOならこう読む】

インタビューの中で、ウッドフォード氏は、ジャイラス案件についてプライスウォーターハウスクーパースに調査を依頼し、先週30頁の報告書を受領、この報告書とともに、菊川氏と森氏の辞任を求める書簡を送ったと話しています。

「報告書の大半は、ジャイラス買収の際にアドバイザー会社であるケイマン諸島に登記のあるアグザム・インベストメント(Axam Investment)と、ニューヨークに登記のあるアグゼス・アメリカ(Axes America)に支払われた報酬に関するものだった。ウッドフォード氏は両社にコンタクトを取れなかったと言い、本紙も両社の連絡先を確認できなかった。

報告書は「買収の規模及び性質から鑑みて、通常買収総額の1%程度が報酬として適切だと考える」と述べた上で、オリンパスがアグザム及びアグゼスに対し、6億8700万ドルの報酬を払ったことを指摘した。これは買収価格の36.1%に相当する。」(前掲紙)

この件に関し、M&Aのアドバイザリー報酬に関する会計処理について指摘しておきます。

わが国では、アドバイザリー報酬等、企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる特定の報酬や手数料は取得原価に含めることとされています(企業結合会計基準26項)。

取得価額と対象企業の純資産との差額はのれんになるので、ジャイラス案件で支払われた多額のアドバイザリー報酬はのれんを構成することになります。

実際、オリンバスの場合、BS上ののれんの計上額が、2007年3月 787億円から2008年3月 2,998億円と激増しています。

仮に、この支出が実はアドバイザリー報酬の対価性を有していなかったとすると、一体このカネはどこに消えたのか?
いろいろな可能性が考えられますが、ここから先は想像の世界の話になるので、皆さんにお任せしたいと思います。

ちなみに、IFRSでは、取得に要した支出(アドバイザリー、法律、会計、評価その他専門家の手数料やコンサルタントフィー等)は、その費用の発生時またはサービスの提供を受けた時の費用とすることとされています。

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オリンパス、前社長「不明朗買収、調査で解職」

15日付の英紙フィナンシャル・タイムズは、14日付でオリンパスの社長を解職された英国人のマイケル・ウッドフォード氏が、解職の原因は今年4月の社長就任以前に同社が行った買収事案に不適切な行為がなかったかを調査したためだと語ったと報じた。
(毎日新聞2011年10月17日東京朝刊)

【CFOならこう読む】

これが事実なら大事です。これからの日本において、日本国内にヒト、モノ、カネを誘致して行くことが重要であり、中でも優れた経営者の重要性、緊急性は高いのに、こういうことがあると誰も来てくれなくなります。スティール・プルドック以降、海外からカネが入って来なくなったのと同じことがヒトの分野でも起きるように思います。

フィナンシャルタイムズのインタビューに応えてマイケル・ウッドフォード社長は次のように述べています
(翻訳:吉永)。

「英国医療機器会社であるジャイラスの2008年の買収に関し$1brn以上の不正支出の可能性について調査を開始したところ、取締役会で突然解任された。

特に問題視したのは、買収価格$2.2brnの1/3に当たる$687mがケイマンに本店登記があるAXAMというフィナンシャルアドバイザーに支払われたが、それがどこの誰かは明らかにされることはなく、AXAM自体はディールクロージング後3ヶ月で登記を抹消している点。

その当時監査人であったKPMGも、この買収に関し十分な会計記録が残されていないことを問題視していた(オリンバスの監査人は2009年にあずさから新日本に変更になっています)。」

マイケル・ウッドフォード氏は、取締役会で意見を述べる機会を与えられないまま、取締役会終了後すぐに空港行きのバスに乗れ、と言われたそうです。

オリンバスの菊川社長は、14日の記者会見で、

「独断専横の経営判断をするため、組織内は混乱し、社員の信頼がなくなった」
「企業風土や日本の文化を経営に生かすことを理解できなかった」

と説明したそうですが、わずか半年での解任の理由としては???と感じていたので、フィナンシャルタイムズの記事を読んで何だかとても納得してしまいました。

オリンパスには、ジャイラス案件に関する支出についての再調査と調査結果の開示を望みます。

【リンク】

2007年11月19日「英国Gyrus Group PLC社の買収手続き開始の合意について」オリンパス株式会社 [PDF]

2009年5月25日「会計監査人異動に関するお知らせ」オリンパス株式 会社 [PDF]

http://www.olympus.co.jp/jp/corc/ir/data/tes/2009/pdf/nr20090525_3.pdf

村上春樹氏のスピーチ全文を読んで思う。効率至上主義は悪か?

スペイン北東部のカタルーニャ自治州政府は9日、人文科学分野で功績のある人物に贈るカタルーニャ国際賞を作家、村上春樹さんに授与した。バルセロナの自治州政府庁舎での受賞スピーチで村上さんは、東日本大震災と福島第1原子力発電所の事故に触れ、原爆の惨禍を経験した日本人は「核に対する『ノー』を叫び続けるべきだった」と述べた。
(日本経済新聞夕刊2011年6月10日14面)

【CFOならこう読む】

早速、スピーチ全文を読んでみました。

「村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(上)」毎日.jp
「村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(下)」毎日.jp

スピーチは英語でもスペイン語でもなく、日本語で行われました。本当に素晴らしいスピーチで、言っていることすべてについて深く共感できます。ただし大震災や原発の問題から離れ、一般論としてスピーチを読み直すと引っかかるところがあります。

「急速な経済発展の途上で、「効率」という安易な基準に流され、その大事な道筋を我々は見失ってしまったのです。
(中略)
我々は夢を見ることを恐れてはなりません。そして我々の足取りを、「効率」や「便宜」という名前を持つ災厄の犬たちに追いつかせてはなりません。」

「効率」を追求するのはいけないことなのでしょうか?そうだとすると、希少な資源を有効利用することでとことんまで「効率」を追求する資本主義というシステムも否定されることにならないでしょうか?

ムダを省き、リーンな生産方式を追求したジャストインタイム方式は間違いだったのでしょうか?ROEの向上を目指し、地道な努力を重ねる会社や経営者の姿勢は否定されるのでしょうか?

いうまでもなく答えは否です。このブログの読者にいまさらその理由を説明する必要はないと思います。

しかし村上さんの言う通り、「効率」追求のために生命や安全が失われることがあってはなりません。われわれは、資本主義というシステムを採用することで、この優先順位を間違えることがあってはならないのです。

私はいま「信託法」を勉強しています。「信託法」の権威、四宮和夫さんは、「信託は信認関係である」と言っています。

そしておそらく真剣に「信託法」を勉強されている岩井克人さんは、信認(岩井さんは信任と言っていますが、四宮さんに従い信認と言います)を、「他の人のために一定の仕事を行うことを信頼によって任されていること」と定義した上で、相手への依存を基軸とした信頼関係がその横にあるような市民社会、これこそが21世紀われわれが目指すべき方向だと言っています。

そして信認関係においては、依存される側の高い倫理性が要求されるので、司法を中心とした国家の介入が不可欠であると説くのです。
「もちろん信認された側の倫理観、とくにその職業倫理に任せるのがもっとも望ましい。そして、現に職業倫理の存在は信認関係を成立させるうえで大きな役割を果たしてきている。

ただ不幸にも、倫理観とは希少な資源であり、万人が共有しているわけではない。そして、信認関係に依存しなければならない人間は、それが濫用されたとき、まったく無抵抗な存在になってしまうのである。それゆえ、信認関係は法律によって厳格に規制される必要があるのである」(二十一世紀の資本主義論 「契約と信任ー市民社会の再定義」)

いま「効率」的な経営を否定されたら、多くの経営者は途方に暮れてしまいます。重要なことは、経営者は、株主やステークホルダーや消費者からの信認に高い倫理性をもって応えること、これを担保するために厳格な規制を設けること、

そして、国家の安全にかかわる重要な事柄については、民間に任せるのではなく、国家が国民からの信認を受けた上で責任をもってこれを遂行すること、だと思います。

岩井さんの論稿は次のように締めくくっています。

「グローバル化の名の下に国家の黄昏が語られている現在、日本社会の市民社会に向けた改革のためには、逆説的だが、市民と国家の相互依存関係を今一度確認することが必要なのである」

1998年に書かれたこの文章が、現在の日本においてもそのままあてはまります。

【リンク】

「村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(上)」毎日.jp
「村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(下)」毎日.jp

「ベキ分布」とデットとエクイティ

・特異な性質を持つ「ベキ分布」の研究進む
・大震災、ブラック・スワン現象が随所に発生
・想定外への対処、ヒト、モノ、知恵総結集で

(日本経済新聞2011年4月7日24面 経済教室 高安秀樹明治大学客員教授)

【CFOならこう読む】

今日の経済教室の高安さんは、「経済物理学の発見」 (光文社新書)の著者です。

ベキ分布とは何かについて、高安さんは、「経済物理学の発見」で次のように説明しています。

「岩石に衝撃を与えて破砕するとその破片の大きさの分布はベキ分布になることが知られています。ガラスのコップを固い床に落として割ったときに出来る破片も同じです。大きな破片はほんの数個で、中くらいの破片はかなりの数になり、小さな破片は無数にあります。目に見えないような小さな破片の数はさらに多くて、顕微鏡で拡大してみても同じような分布が観察されます。顕微鏡でも見えないくらいのほこりのような破片の数が最も多いので、1つずつの破片の大きさの平均値を求めると、事実上ゼロになってしまうのです。
破片の大きさの標準偏差を計算すると、今度は小数の大きな破片の寄与が無視できなくなり、非常に大きな値になります。何桁も大きさの違う破片が混在しているのですからゆらぎの幅を表す標準偏差が大きな値になるのは当然といえるでしょう。」

ベキ分布のグラフは次のようになります。

冪乗則にしたがうグラフの例。横軸が商品のアイテム数、縦軸が販売数量を表す。このモデルは「80:20の法則」として知られ、右に向かう部分はロングテールと呼ばれる。

「ベキ分布の裾野は桁違いに大きいところまで伸びている」(前掲紙)

この裾野はロングテールとも呼ばれます。また、ナシーム・タレブの著書「ブラックスワン」は、これを象徴的にブラックスワンと表現しています。

「身の回りにたくさんの事例があるベキ分布が、長い間、確率・統計の理論の主流から外れ、ほとんど教えられもしなかったのは、ベキ分布では、平均値や標準偏差といった最も基本的な統計量が意味をなさないからだ。
例えば、地震のエネルギーの平均的な大きさを求めよ、といわれれば、与えられた観測期間の間に起きた全地震のエネルギーを足し合わせた量を地震の回数で割るだろう。だがこの平均値が、現実にはあまり意味を持たない。観測期間を変えると、その平均値が大きく変化してしまうからだ」(前掲紙)

大震災があったばかりなので、このロングテールの部分から、とんでもなく悪いことが起こるというネガティブな事象を想起してしまいますが、ナシーブ・タレブはこれをポジティブに捉え、とんでもなく良いことが起きるようなロングテールを追求する生き方を推奨しています。

私はデットとエクイティの本質的な違いを、このロングテールの部分に見ることができると思っています。エクイティを所有権として見るのではなく、ロングテールの持分権者として見るのです。そうすると、コーポレートガバナンスや最適資本構成や会計上の連結範囲等々、CFOが普段接しているような事柄の見え方が全く違ってきます。

例えば、株主が、ロングテールの裾野を厚くするという方向の意思決定を株主総会で自由に行えるという統治構造は、ロングテール部分の持分権者ではない他のステークホルダーにとって望ましくないということになるかも知れません。

また、行き過ぎたレバッレジは、株主が小さなリスクでロングテールの持分権を獲得できてしまい、フェアでないということになるかも知れません。

さらにロングテールの持分権者が必ずしも会社を支配しているとは限らないという意味で、持分割合を基準に連結範囲を決めることが妥当ではないということになるかも知れません。

まっ、とりあえず、タレブは、「本を書こう。パーティーに行こう。」と言っているので、私は本を書くことにします。

【リンク】

経済物理学の発見 (光文社新書)
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監査・監督委員会

・取締役会は企業価値増大のために経営監視
・「監査・監督委員会」は法令順守偏重の検討
・国際標準導入せねば日本の資本市場は孤立

(日本経済新聞2011年4月1日27面 経済教室 田村達也全国社外取締役ネットワーク代表理事 )

【CFOならこう読む】

「内外の投資家から「社外取締役の義務化」の要望が強い中、現在、会社法制部会で検討され、有望視されているのが「監査・監督委員会」制度だ。これは監査役や指名・報酬委員会を置く代わりに、社外取締役をメンバーとする「監査・監査委員会」を設置する新しいガバナンス形態を法制化しようという考え方である」(前掲紙)

田村氏は、次の理由からこの制度はコーポレートガバナンスの向上にに寄与しないと主張しています。

1.監査・監督委員会は経営者の指名・報酬事案を審議しない
2.監査・監督委員会の審議事項は、現在の監査役会と実質的に同じで、現在すでにコンプライアンス問題に傾きがちな多くの企業の取締役会の役割を、一層その方向に定着させることになり得る
3.世界の潮流からはずれることにより、海外資本が積極的に参加しにくい環境となる、日本がグローバル経済の発展から取り残される

田村氏の言っていることは至極もっともだと思います。何故監査・監督委員会というような妥協の産物のような発想が出てくるのでしょう?
この点について、田村氏は次のように説明しており、これについても首肯できます。

「コーポレートガバナンスの改善という各ステークホルダー間の複雑な利害が絡む会社経営に関わる問題を、経済体制のあり方として各界を含めた幅広い検討の場で議論するのではなく、いきなり法制審で法律問題として審議していることにも原因があるのではなかろうか」(前掲紙)

例えば、税制に関しては学際領域にあるという共通理解のもと、法律学者が法律問題として議論すべき領域を踏み越えてはいけないという意識が、法律学者の側に強く働いているように思います。コーポレートガバナンスの問題も、税制と同様、法律学者が議論すべき領域とそうでない領域があり、会社法制部会の議論はその一線を越えているように感じます。

【リンク】

法務省 法制審議会 – 会社法制部会

M&A、本来は日本のお家芸(?)

日本企業の国際競争力低下の理由の1つに、企業の規模の小ささがある。株式時価総額で日本トップのトヨタ自動車ですら世界では30位である。会社の売買には否定的な声もあるが、戦前の日本はM&A大国だった。日本企業の再生は、M&A大国のDNA復活がカギだ。
(日経ヴェリタス2011年3月7日52面)

【CFOならこう読む】

「グローバルなハイテク時代において、M&Aは必要不可欠な経営戦略である。最近、日本でも新日本製鉄と住友金属工業の経営統合を始め、大型M&Aが増加する兆しがある。しかし、日本のM&Aは活発でない。10年末の世界に占める日本の株式時価総額構成比は8.5%だったが、世界のM&A金額に占める日本の構成比は5.9%(10年)にすぎない。歴代M&A金額上位20件のうち日本の事業会社同士の経営統合はKDDI、アステラス製薬しかない。
(中略)
戦前の日本はM&A大国だった。M&A大国のDNA復活が日本企業復活のカギを握ると思われる」(前掲紙)

日本でM&Aが少ないのは、ガバナンスの構造にあります。どれだけ経済合理性があっても、従業員にとって相対的にポストが減るようなM&Aは実行に移されないようなガバナンスの仕組みが日本的経営には埋め込まれているのです。

これを変えるにはDNAうんぬんというような情緒的な話をするより、起きるべきM&Aが容易に行えるような法制度を構築すべきです。第三者割当増資の比率の上限を引き下げる等経営陣/従業員が株主を選択できる仕組みを排除する、経営陣/従業員の保身につながらないような新たな買収防衛策のルールを設ける、社外取締役の増員を促す施策を講ずる等、立法や市場ルールで手当てできることがたくさんあります。

日本でこういう議論がなかなか進まないのは、すぐに資本の力で従業員を切り捨てることは許されないというような話になってしまうからです。しかし、従業員にしても沈没する船にしがみついていていても将来がないことは明々白々です。

ですから従業員にとっても起きるべきM&Aが起きないような仕組みは是正される必要があるのです。

それでは誰がこういう議論を主導すべきか?

本来的には政治の役割でしょう。
ですが、今の日本にはこういう議論を進められる政党がありません。

今の日本に必要なのは米国の共和党のような政党なのかもしれません。

【リンク】

なし

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FCレジデンシャル投資法人、投資主の解散総会請求で投資口価格が急伸

25日REIT市場で、FCレジデンシャル投資法人の投資口価格が前日比15.4%高と急伸した。24日にFCレジデンシャルが「投資主のエスジェイ・セキュリティーズ・エルエルシーが、投資法人の解散についての投資主総会の招集を請求した」と発表したことが材料だ。
(日本経済新聞2010年11月15日15面)

【CFOならこう読む】

「FCレジのPBRは0.57倍と、理論上の解散価値である1倍を下回っている。仮にFCレジがこの水準で解散し保有資産を売却すれば、投資主は利益を得られる計算になる。これが解散目的の投資主総会を請求した理由とみられる」(前掲紙)

PBRとは株価/簿価純資産のことです。簿価純資産は会計上把握されるものなので、含み損益が反映されたものではありません。時価純資産に近い評価指標としてREITの場合NAV(Net Asset Value)が用いられます。NAVとは、J-REITが保有する物件等の時価評価から負債を差し引いたものであり、解散価値としては簿価純資産よりNAVで見る方が適切であると言えます(もちろん物件の時価評価が適切に行われていることが前提です)。

投資口価格を1口当たりのNAVで割ったものを「NAV倍率」と言います。

少し古いデータですが、↓のサイトでJ-REITのNAV倍率を一覧できます。この指標で見てもFCレジデンシャルは1倍を大きく下回っていることがわかります。
J-REITTレポート Vol.4 「注目の投資尺度『NAV倍率』」みずほ投信投資顧問株式会社 [PDF]

【リンク】

2010年11月24日「投資主による投資主総会の招集の請求に関するお知らせ」FCレジデンシャル投資法人 [PDF]

政府税調。「雇用促進税制検討」へ

政府税制調査会は2011年度からの創設を目指す「雇用促進税制」について、雇用を増やした企業に対する法人税の税額控除を導入する検討に入る。成長企業の雇用増加を後押しする狙い。併せて、雇用を増やしたと偽って減税を受ける不正を防ぐため「雇用保険」制度を活用する方向だ。
(日本経済新聞2010年11月18日1面)

【CFOならこう読む】

「ザ・ワーク・オブ・ネーションズ」、「勝者の代償」の著者で、クリントン政権で労働長官も務め、また現在はオバマ政権の政策アドバイザーを務めるロバート・B・ライシュの「暴走する資本主義」(Supercapitalism)は現代資本主義の特質を次のように説明しています。

「1970年代以降、資本主義の暴走、つまり超資本主義と呼ばれる状況が生まれたが、この変革の過程で、消費者および投資家としての私たちの力は強くなった。消費者や投資家として、人々はますます多くの選択肢を持ち、ますます「お買い得な」商品や投資対象が得られるようになった。
しかしその一方で、公共の利益を追求するという市民としての私たちの力は格段に弱くなってしまった。労働組合も監督官庁の力も弱くなり、激しくなる一方の競走に明け暮れて企業ステーツマンはいなくなった。民主主義の実行に重要な役割を果たすはずの政治の世界にも、資本主義のルールが入り込んでしまい、政治はもはや人々のほうでなく、献金してくれる企業のほうを向くようになった。
私たちは「消費者」や「投資家」だけでいられるのではない。日々の生活の糧を得るために汗する「労働者」でもあり、そして、よりよき社会を作っていく責務を担う「市民」でもある。現在進行している超資本主義では、市民や労働者がないがしろにされ、民主主義が機能しなくなっていることが問題である。
私たちは、この超資本主義のもたらす社会的な負の面を克服し、民主主義より強いものにしていかなくてはならない。個別の企業をやり玉に上げるような運動で満足するのではなく、現在の資本主義のルールそのものを変えていく必要がある。そして「消費者としての私たち」、「投資家としての私たち」の利益が減ずることになろうとも、それを決断していかなければならない。その方法でしか、真の一歩を踏み出すことはできない。」

相対的に弱くなっている「労働者」の立場を護るために「雇用促進税制」を導入することは一定の意義があるとは思います。

昨日の税調の配布資料を見ると、「雇用促進税制」の基本的な位置づけが次のように説明されています。

「◯雇用の受け皿となる成長企業を支援し、雇用が拡大することにより、消費需要が刺激され、成長に繋がる好循環を実現するというマクロ経済的な効果を発現させるため、本税制措置を成長企業の雇用拡大を支援するものと位置づける
◯既存の助成金は就職困難者等の支援や厳しい状況下での雇用維持が中心となっており、上記のように成長企業の雇用拡大支援と位置づけることにより、助成金との役割分担を明確化。」
「雇用促進税等PT経過報告」内閣府税制調査会 [PDF]

いまの日本にとって雇用が最重要課題であることは間違いありません。

ですから「雇用促進税制」を導入するのも良いとは思います。

しかしより重要なのは、日本で活動する企業(当然外国の企業が含まれます)を増やすことです。
特に外国の企業を日本に誘致する政策を戦略的に講ずるべきです。

そのためには規制緩和、インフラ整備そのほかやるべきことは山ほどあります。

また労働者自身(特に若い人)は、そういう時代がやってくることを見据えて、自らを鍛える必要があると思います。

【リンク】

「雇用促進税等PT経過報告」内閣府税制調査会 [PDF]