バフェットは同モデル(ブラック・ショールズ・モデル)には欠陥があると主張する。期間が数ヶ月単位のオプションなら同モデルは有効だが、バフェットが手がけている期間の長い保険(オプション)契約では、合理的な評価にならないという。
(日経ヴェリタス2011年4月10日56面バフェットからの手紙)
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「大学でブラック・ショールズ・モデルを、当然の真実として教える現在の慣行を見直す必要があります。さらに言えば、オプション価格の勉強に時間をかける傾向も改めるべきです。」(前掲紙)
私は10年ほど前、数理ファイナンスの専門家である上智の津野先生にお願いして、学部の授業に1年間通わせてもらい、ブラック・ショールズ・モデル理論について懇切丁寧な指導を受けたことがあります。
バフェット氏は、大学でオプション理論を勉強したことがないのでしょう。大学でブラック・ショールズを当然の真実として教えるなんてことはありません。むしろブッラク・ショールズの限界を教えることに時間をかけていると思います。
一番悪いのは、モデルの前提を理解せずに機械的にブラック・ショールズ・モデルやCAPMにパラメータを放り込みその結果を無批判に受け容れることでしょう。専門家にはまずそのモデルを使用することの是非を判断する能力が求められます。そのためには大学なりできちんと勉強することは有意義だと私は思います。
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なし
・特異な性質を持つ「ベキ分布」の研究進む
・大震災、ブラック・スワン現象が随所に発生
・想定外への対処、ヒト、モノ、知恵総結集で
(日本経済新聞2011年4月7日24面 経済教室 高安秀樹明治大学客員教授)
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今日の経済教室の高安さんは、「経済物理学の発見」 (光文社新書)の著者です。
ベキ分布とは何かについて、高安さんは、「経済物理学の発見」で次のように説明しています。
「岩石に衝撃を与えて破砕するとその破片の大きさの分布はベキ分布になることが知られています。ガラスのコップを固い床に落として割ったときに出来る破片も同じです。大きな破片はほんの数個で、中くらいの破片はかなりの数になり、小さな破片は無数にあります。目に見えないような小さな破片の数はさらに多くて、顕微鏡で拡大してみても同じような分布が観察されます。顕微鏡でも見えないくらいのほこりのような破片の数が最も多いので、1つずつの破片の大きさの平均値を求めると、事実上ゼロになってしまうのです。
破片の大きさの標準偏差を計算すると、今度は小数の大きな破片の寄与が無視できなくなり、非常に大きな値になります。何桁も大きさの違う破片が混在しているのですからゆらぎの幅を表す標準偏差が大きな値になるのは当然といえるでしょう。」
ベキ分布のグラフは次のようになります。

冪乗則にしたがうグラフの例。横軸が商品のアイテム数、縦軸が販売数量を表す。このモデルは「80:20の法則」として知られ、右に向かう部分はロングテールと呼ばれる。
「ベキ分布の裾野は桁違いに大きいところまで伸びている」(前掲紙)
この裾野はロングテールとも呼ばれます。また、ナシーム・タレブの著書「ブラックスワン」は、これを象徴的にブラックスワンと表現しています。
「身の回りにたくさんの事例があるベキ分布が、長い間、確率・統計の理論の主流から外れ、ほとんど教えられもしなかったのは、ベキ分布では、平均値や標準偏差といった最も基本的な統計量が意味をなさないからだ。
例えば、地震のエネルギーの平均的な大きさを求めよ、といわれれば、与えられた観測期間の間に起きた全地震のエネルギーを足し合わせた量を地震の回数で割るだろう。だがこの平均値が、現実にはあまり意味を持たない。観測期間を変えると、その平均値が大きく変化してしまうからだ」(前掲紙)
大震災があったばかりなので、このロングテールの部分から、とんでもなく悪いことが起こるというネガティブな事象を想起してしまいますが、ナシーブ・タレブはこれをポジティブに捉え、とんでもなく良いことが起きるようなロングテールを追求する生き方を推奨しています。
私はデットとエクイティの本質的な違いを、このロングテールの部分に見ることができると思っています。エクイティを所有権として見るのではなく、ロングテールの持分権者として見るのです。そうすると、コーポレートガバナンスや最適資本構成や会計上の連結範囲等々、CFOが普段接しているような事柄の見え方が全く違ってきます。
例えば、株主が、ロングテールの裾野を厚くするという方向の意思決定を株主総会で自由に行えるという統治構造は、ロングテール部分の持分権者ではない他のステークホルダーにとって望ましくないということになるかも知れません。
また、行き過ぎたレバッレジは、株主が小さなリスクでロングテールの持分権を獲得できてしまい、フェアでないということになるかも知れません。
さらにロングテールの持分権者が必ずしも会社を支配しているとは限らないという意味で、持分割合を基準に連結範囲を決めることが妥当ではないということになるかも知れません。
まっ、とりあえず、タレブは、「本を書こう。パーティーに行こう。」と言っているので、私は本を書くことにします。
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石炭価格の上昇が、セメントや製紙会社の2012年3月期の収益を圧迫する。足元の価格は1トンあたり120ドル超で、各社の今期の平均購入価格を2割ほど上回る。これを前提に考えると2012年3月期に太平洋セメントは30億円、住友大阪セメントは20億円程度の営業減益要因が生じる計算になる。王子製紙と日本製紙グループもマイナスの作用は避けられないが影響額では差が出そうだ。
(日経ヴェリタス2011年2月20日14面)
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セメント会社や製紙会社は、焼成や乾燥の工程で大量に石炭を使用します。石炭価格は昨年8月時点で90ドル前後であったのが、120ドル超まで上昇しています。
ところで今日の記事では、製紙2社の影響度に差があると分析しています。
「製紙2社は、同じく石炭価格20ドルの上昇で日本製紙が40億円程度の減益要因になるのに対し、王子製紙はそれほど大きくならないとみている。1トン1ドルの利益感応度は日本製紙が2億円程度、王子製紙は7000万円。日本製紙が熱量あたりのコストの低さに注目して石炭の使用を進めてきたのに対し、王子は廃棄物燃料の使用を増やしてきたためだ。
また、日本製紙は年間使用量のほとんどを期初に長期契約で調達するため「来期の調達コストは、足元の急ピッチの価格上昇を反映しやすい」(国内証券)。王子製紙は使用量の半分を長期契約、半分をスポットで買い付けるため、石炭価格の下落局面では比較的有利な価格で購入できる可能性がある」(前掲紙)
王子製紙の購入方針は、市況品を原材料として使用する企業にとって参考になると思います。
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三菱東京UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクは、為替デリバティブで多額の損失を抱えた中小企業の資金繰り融資に乗り出す。金融庁の行政指導を受けた措置で、毎期計上する損失の穴埋め資金や、取引の途中解約の違約金に充てる資金を融資する。
(日本経済新聞2011年1月19日1面)
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この為替デリバティブの多くは「クーポンスワップ」であると思われます。「クーポンスワップ」については、12月18日のエントリーでもお話ししました(2010年12月18日「クーポンスワップの会計処理」)。
為替レートが円ドルレートが120円程度のときに、5年から7年程度の長期のクーポンスワップ契約を取り組むことにより、100円を下回るレートでその期間に予定される輸入取引の為替レートを固定化することができたので、ヘッジ目的で多くの企業が利用していました。
ヘッジは将来の変動性を排除するという趣旨から行われるわけですが、固定化した為替レートよりも円高が進めば円高メリットを享受できなくなるという意味で損失を被ることになります。
私の感覚では、多くの経営者がそういった商品特性を理解した上で、100円よりも円高が進むことはないだろうという相場観のもと取引に応じていたように思います。
一方、契約直後の為替レートが有利になることを強調し、かなり荒っぽい売り方をしていた金融機関もあったように思います。
私が顧問をしている会社でも、リスクをよく理解しないまま「クーポンスワップ」の契約をしていた会社があり、私から商品特性をよく説明したうえで解約を決めたケースもありました。
しかし、
「金融庁の行政指導を受けた措置で、毎期計上する損失の穴埋め資金や、取引の途中解約の違約金に充てる資金を融資する」(前掲紙)
というのはいかがなものかと思います。
金融庁がやるべきことは、「販売時にリスクや商品の仕組みの説明を十分に尽くしていなかった」かどうかについて徹底的に調査することで、そこをあやふやにしたまま安易に行政指導を行うのは問題があります。
上述したように、非常に甘い相場観のもと、得だと思って「クーポンスワップ」に手を出した会社も少なからずあったわけで、その結果会社が傾いたとしても自業自得だし、そのような会社に金融機関が資金を融資するべきでもありません。
誤解して頂きたくないのですが、私は金融機関に全く責任がないと言っているのではありません。問題の根幹にふたをして、責任の所在を明らかにしないまま、安易に行政指導に走るのは望ましくないと言っているのです。
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著名投資家のジム・ロジャーズ氏は11日、米シカゴ市内で日本経済新聞記者と会い、穀物価格の急騰と世界的な食料危機の到来を予測した。穀物と共に金や原油も最高値を更新すると予想。
(日本経済新聞夕刊2011年1月12日3面)
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商品投資の推奨で知られるジム・ロジャーズ氏の言うことなので額面通り受け取ることはできませんが、金融緩和がカネ余りを生みそのカネが金や原油に向かうという流れは十分に予想されるところで、CFOとしては頭が痛いところです。
ちなみに昨日のドバイ原油のマーケット価格は、94.05ドル~94.15ドルでした。
なお、日本株については、割安感から、
「購入を検討していると言明した」(前掲紙)
とのことです。
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コナカやニッセンホールディングスなど輸入商材を国内販売する小売企業で、長期の為替予約を取りやめる動きが相次いでいる。収益押し上げを狙った
デリバティブ取引が想定外の円高で多額の損失を出したためだ。経済環境の激変で為替相場は大きく振れやすく、今後は自らの販売戦略も見据えた為替リスクの管理体制が必要になりそうだ。
(日本経済新聞2010年12月17日1面)
【CFOならこう読む】
「損失を広げたのは「クーポンスワップ」と呼ぶデリバティブ取引だ。企業と金融機関がそれぞれ扱う通貨を交換する通貨スワップの一種で、元本ではなく利息部分(クーポン)を交換する。企業は毎年、固定レートで円とドルを交換できる。通常の予約より契約直後の為替レートが有利になる性質があり、短期的な損益押し上げ効果が大きい。一方、金融機関は長期にわたって手数料を受け取れる。双方の思惑が一致し、将来の円安進行が予定された2003年~2007年ごろに販売が増えた」(前掲紙)
為替レートが120円程度のときに、5年から7年程度の長期のクーポンスワップ契約を取り組むことにより、100円を下回るレートでその期間に予定される輸入取引の為替レートを固定化することができたので、ヘッジ目的で多くの企業が利用していました。
記事に書かれている多額の損失とは、固定化した為替レートよりも円高に進んだことにより生じたもので、その意味ではどのようなヘッジからも生じ得るもので、特に小売企業が投機的な取引に手を染めたから発生したわけではありません。
しかしクーポンスワップのような長期のヘッジ手段は、現代のように短期間で経営環境が大きく変化する時代には好ましくないということは今日の記事の教訓として肝に銘じるべきでしょう。
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