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Posts Tagged ‘最適資本構成’

企業、運転資金の圧縮急ぐ

2009年 10月 8日

企業が運転資金の圧縮を急いでいる。昨年秋の世界的な金融危機に直面し、安定した運転資金の確保が経営課題に浮上したためだ。外部からの資金調達を減らすことで財務の健全化にもつながる。企業の動きを追った。
(日本経済新聞2009年10月8日13面)

【CFOならこう読む】

正味運転資金=棚卸資産+売掛金-買掛金をいい、この分だけ資金調達が必要になります。

「「正味運転資金を5%減らせ」。日立製作所の全生産部門には、こうした宿題が出されている。運転資金が1日当たり売上高の何日分なのかを指標に据えて、毎年5%の削減が目標だ。納期短縮や在庫圧縮、不良品率の低下など工場ごとに運転資金の削減を進める。」(前掲紙)

この程度のことは多くの企業がすでに取り組んでいるところだと思います。

誤解してはいけないのは、運転資金の効率化は資産の効率的利用のために必要なのであって、これを削減することが即借入の圧縮につながるわけではないという点です。

資本構成をどうするかはあくまで資本コストとの関係で決まります。したがって運転資金削減により余剰となった資金を自己株取得に充てても良いわけです。

論点はずれますが、グループとしての資金効率を考えるうえでは、連結納税が非常に重要です。
子会社の繰越欠損金を連結グループに取り込めることを可能にするような改正の動きが国税庁や経済産業省の間で進められているはずですが、今日の新聞の1面の新政府税調の主要課題に挙げられていないのが気になります。

政権が変わったことにより、来年度の税制改正に盛り込まれないなんてことがないようにして頂きたいものです。

【リンク】

なし

吉永 資金調達 ,

エクイティ・ストーリー

2009年 7月 8日

7873億円の最終赤字で自己資本比率が11%に低下した日立製作所。しかし川村隆会長兼社長は「うちは東芝さんのようなこと(公募増資)はしない」と語る。
(日本経済新聞2009年7月8日17面)

【CFOならこう読む】

「東芝3000億円、全日本空輸1500億円、オリックス1000億円・・・。春以降の金融市場の機能回復は急速だ。CPや普通社債など「資金」不安は一段落。企業の調達競争は株式市場での公募増資による「資本」増強に主戦場を移しつつある。ただスタンスは2派に分かれる。
日立は慎重派。重視するのは既存株主への配慮だ。業績の悪化ですり減った自己資本を回復させるには大規模な新株の発行が必要だ。日立の場合、発行済株式数の3〜4割にも達するとみられるが、こうした大規模な増資に踏み切れば株式価値が希薄化、株価の急落を招く恐れがある。」
(前掲紙)

この希薄化を避けるためには、資金を資本コストを上回る新規投資に向ける他ありません。これによる利益(キャッシュフロー)成長シナリオを、「エクイティ・ストーリー」というのです。

「成長シナリオを後回しにし、あえて6月の株主総会直前に公募増資に打って出たのが東芝だ。」
(前掲紙)

東芝の場合、一応資金使途を、「一般募集及び第三者割当増資に係る手取概算額合計上限3,131億円(2009年5月1日現在の株式会社東京証券取引所における当社普通株式の終値を基準として算出した手取見込概算額)については、設備投資資金に充当する予定であります。 」としていましたが、「エクイティ・ストーリー」は公表されませんでした。

しかし結果としては、株価の大幅な下落はありませんでした。
これはおそらくこういうことです。

資本コストは倒産リスクが高まれば、それに応じて上昇すると考えられます。

倒産リスクを回避するには、一定程度の株主資本を必要とします。
赤字により既存した資本を増資により増強することで資本コストを引き下げることができるのです。この効果が、希薄化効果を上回れば株価は下落しないと考えられるのです。
で、日立さんはどうされるのですか?

【リンク】

2009年5月8日「新株式発行及び株式売出し並びに利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債 (劣後特約付・適格機関投資家限定)発行による資金調達のお知らせ 」株式会社東芝[PDF]

吉永 資金調達 ,

東芝5000億円資本増強へ

2009年 4月 18日

東芝は6月にも5000億円規模の資本増強に踏み切る方針を固めた。普通株の公募増資で3000億円
を調達するほか、銀行など金融機関に2000億円の劣後債引き受けを要請する。2009年3月期は
3500億円の最終赤字となり、自己資本は1年前の半分以下に目減りした。大規模な資本増強で財務内容
を回復させて、半導体や原子力発電所など主力事業の長期的な競争力を引き上げる。
(日本経済新聞2009年4月18日1面)

【CFOならこう読む】

東芝の前期最終赤字は3500億円となり、財務状況は大幅に悪化しています。

20090418

2009年4月17日「2008年度業績予想の修正」株式会社東芝

東芝は財務状況の改善のために固定費3000億円圧縮を目指す構造改革を進めると同時に、大規模な資本増強を行う必要性に迫られていたのです。

東芝がエクィティファイナンスを実施するのは、2004年に1500億円の新株予約権付社債を発行して依頼になる。公募増資としては1981年に2億株(約800億円)を実施して以来、28年ぶり。
3000億円の増資によって自己資本比率は13%程度に回復する見通しだ。格付け会社は劣後債の一部を自己資本とみなすため、格付けの向上につながる。
(前掲紙)

公募増資により資本増強を行うということに大きな意味があると思います。週明け東芝のリストラ策をどのように評価するか注目されます。

【リンク】

2009年4月17日「2008年度業績予想の修正」株式会社東芝

吉永 資金調達 ,

キリンHD買収額3500億円確保

2009年 3月 12日

4年間で海外強化や多角化推進

キリンホールディングスは2012年12月期までの4年間で、約3500億円の買収資金を確保する。相次ぐM&Aで投資額も膨らんだが、資産の流動化を加速。買収に伴って稼ぎ出す現金も増えてきたため、少子高齢化などで国内酒類市場が縮小傾向にあるなか、海外事業の強化や多角化に向けて今後も積極的にM&Aを進める方針だ。
(日本経済新聞2009年3月12日15面)

【CFOならこう読む】

「今期末の有利子負債は約7140億円と前期末比8%増える見通し。有利子負債を自己資本で割った比率(DEレシオ)は0.74倍程度に上昇する。

これに対応し、資産の流動化を急ぐ。M&A後にリストラ策の一環として一部事業の売却などを進め、豪州地域だけでも約2億豪ドル(約125億円)の現金収入を見込む。今後4年間で株式や土地など計1000億円分の資産流動化を計画しており、今期中にも約600億円分の資産流動化を計画している。

同社はDEレシオについて0.5倍前後が望ましいレベルとしながらも、「一時的には1倍程度までの上昇は許容できるとしている」(財務担当の吉元良治常務)。」(前掲紙)

DEレシオを限界値として設定しているのか、目標値として設定しているの区別する必要があります。

最適資本構成を睨みながら、中期計画の中でDEレシオを目標値として設定する、そんな財務先進企業は日本ではそれほど多くないのです。キリンHDは、戦略投資の制約条件として、DEレシオの限界値を1倍に設定する一方、DEレシオ0.5倍を最適資本構成としているということです。

【リンク】

なし

吉永 最適資本構成

ディール・オブ・ザ・イヤー エクイティ部門

2008年 12月 29日

ベスト1位はヤマダ電機が2月に発行を決めた1500億円のCB。調達資金の一部を自社株買いにあてる「リキャップCB」と呼ばれる新戦略を市場は評価した。
(日経ヴェリタス2008年12月28日 2面)

 【CFOならこう読む】

「CBはあくまでも負債と位置付けている。転換を前提とせず、手元資金で償還する方針だ。」(ヤマダ電機 岡本潤取締役兼執行役員専務 前掲紙)

負債と位置付けたCB発行がエクイティファイナンス部門のベストと評価されること自体、今年のエクイティファイナンスの低調さを象徴しています。

「山田昇・現会長の指示も希薄化を起こさず、金利を限りなくゼロにしろというものだった。」(岡本専務 前掲紙)

リキャップというより、”金利ゼロ&希薄化回避”の条件をクリアするための解がリキャップCBであったということだったのですね。
私のブログでは2008年2月27日にこのディールを取り上げました(http://cfonews.exblog.jp/7371460)。

そこで私は次のような指摘をしています。

「それからもう一つ、何故CBかという点です。資本構成変更が本件の目的なら、エクィティ系のファイナンス手法であるCBを利用するのは矛盾しています。つまりCBによってファイナンスしたい理由があるのです。それは恐らくゼロクーポンのメリットを享受するというところにあるのだと思います(会計上も社債利息を計上しないことができます)。」

リキャップというのは資本コスト引き下げのために行われる、資本構成の変更のことですが、そのためには負債で資金調達し、この資金で自己株取得をする必要があります。
このCBは最適資本構成を指向するものではなく、ゼロコストのためのCB発行+CBの希薄化効果を排除するための自己株取得=(結果として)リキャップCBであったということです。

それにしても山田会長の「希薄化を起こさず、金利を限りなくゼロにしろ」という指示は、単純明快で何とも言えず迫力を感じますね。

【リンク】

2008年2月26日「2013年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債及び2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行について」株式会社ヤマダ電機

2008年2月26日「自己株式の取得に関するお知らせ(会社法第165条第2項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)」株式会社ヤマダ電機

吉永 最適資本構成, 資金調達