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Posts Tagged ‘業績評価’

社内カンパニー制の弊害?ー三菱ガス化学

2009年 6月 27日

「社内カンパニー制の弊害が出てしまった」と三菱ガス化学の酒井和夫社長は反省する。事業部ごとの権限委譲を進めた結果、研究開発で「各カンパニーが目先の収益につながるものばかりを追い、大型の開発案件が出てこなくなった」という。事業部の枠にとらわれず案件をリストアップして全社的に議論をする方針に切り替えた。
(日本経済新聞2009年6月27日9面)

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社内カンパニー制の場合、各カンパニーはプロフィットセンターであるだけでなく、インベストメントセンターとなります。したがって各カンパニーの業績評価指標は、投下資本利益率(ROI)またはEVAがマッチします。

研究開発を縮小すると、短期的にはROIもEVAも上昇するので、カンパニー制の導入により、行われるべき研究開発投資が行われなくなるリスクはあるのでしょう。

しかし言うまでもなく、経営において重視すべき各指標は独立して存在している訳でなく、それぞれが複雑に絡み合っています。研究開発投資を削減すれば、中長期的に税引後利益が低下するのです。そうすればROIもEVAも低下します。だから、これらを業績評価の指標としても、マネージャーは単純に研究開発投資を削減するとは限らないのです。

問われるべきは、カンパニー制やEVAの善し悪しではなく、マネジメントの善し悪しです。各カンパニー長に、5年後どうやって食っていくのかを厳しく問えば、行うべき投資が行われているかどうかはわかるはずです。

僕には「全員で議論する」というのが解決策であるとは思えません。

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なし

吉永 業績評価

上場企業の自己資本比率低下、35%へ

2009年 3月 5日

自己資本比率が低下 上場企業、9期ぶり 今期末35%へ

企業の財務体質の健全さを示す自己資本比率が低下し始めた。ここ数年の増益基調を反映して上昇質続けてきたが、2009年3月期末に上場企業で35%程度と、連結決算での開示が本格化した2000年3月期以降初めて低下する見通しだ。比率そのものは依然として高水準だが、世界的な景気後退で製造業全体が今期に最終赤字に転落するなかで、財務改善の流れに変調の兆しが出てきた。
(日本経済新聞2009年3月5日13面)

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日本企業は、戦後銀行中心のガバナンスのもと、負債依存度の高さを特色としていました。
(例えば↓を参照してください)
http://wp.cao.go.jp/zenbun/keizai/wp-je78/wp-je78-s0003.html

しかし、ここ10年間日本企業は過剰債務からの脱却に努め、その結果財務体質は大きく改善し、自己資本比率も欧米企業と遜色がなくなってきています。

次のステップは、最適資本構成を目指すために、安全性も考慮しつつ、積極的な財務レバレッジを採用する方向に向う方向にあります。少なくともサブプライム前の段階ではそのような検討を行っている上場企業が多くあったと思います。

この点、井手正介氏は経営財務入門(日本経済新聞社)で次のように語っています。

負債依存度の低下は、とりわけ経営状態のいい優良大企業で際立っている。第14章で紹介したように、優良大企業のキャッシュ・ポジションは著しく高まっており、実質無借金企業も続出している。しかし公開企業である以上、本書で説くように適度の負債を活用して節税効果のメリットを得ることは、価値創造経営の重要なポイントである。その意味では過去10年間の大幅な事業・財務リストラの局面を乗り切った優良企業の中には、財務レバレッジを必要以上に低下させたところも多いと思われる。
メインバンク=大株主制度が破綻したこの10年間は、確かに特殊な局面であった。ほとんどの企業がメインバンクに代わる財務的なよりどころとして、事業がもたらすキャッシュフローの重要性を再認識し、「選択と集中」のために身を縮めて本業の収益力の強化・拡充に努めてきたと考えられる。本業の利益があってこそ節税効果も享受できるという意味では、合理的な行動であったといえよう。
しかし、このようなリストラを乗り切った多くの優良企業にとっては、今や適度な負債の活用を考慮した、積極的な財務レバレッジ政策を確立すべき時期にさしかかっている。

これがサブプライム直前の状況です。株主価値重視のために、自己資本比率引き下げを検討する必要があったのです。
しかしサブプライム以降状況が一変しました。

業績悪化により自己資本が吹き飛び始めたのです。エクイティで資金調達したくてもこれだけ株価が下がってはダイリューションを考えると二の足を踏んでしまいます。結果メインバンクに回帰する状況が起きています。

このような状況が重なって自己資本比率が低下しているのです。
これは最適資本構成を目指す動きと全く異なるので留意してください。
(今負債比率を引き上げても節税効果を享受できない可能性があるので、価値創造に結びつかない)

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なし

吉永 最適資本構成

三菱商事のリスク管理手法―MCVA

2009年 1月 17日

リスク管理が威力発揮 真価問われる投資会社化

リスク管理で威力を発揮しているのが、2002年に導入したMCVAという独自指標。
事業ごとの収益から想定最大損失(実質リスク)に株主資本コストを乗じた数値を引いた後の損益を示す。赤字が続けば原則、その事業からの撤退を決める。
この指標でみた赤字額合計は2002年3月期で766億円と同年度の純利益を上回っていた。それが退出ルールの明確化で前期は一気に187億円に減少。これに伴い不良資産関連の償却は2005年3月期の943億円をピークに、前期は1億円強に縮小した。

(日本経済新聞2009年1月17日15面 会社研究)

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三菱商事のMCVA(Mitsubishi Corporation Value added)は次のように算定されます。

MCVA=事業収益-(最大想定損失×資本コスト)

但し、

事業収益= 税後純利益-(1-限界税率)×(有価証券売却損益+上場有価証券評価損)

MCVAはその名称からもわかるように、株主付加価値(EVA、SVA)を三菱商事に合うようにカスタマイズしたものです。

EVAは、

一般的に、税引後営業利益-資本コスト

により算出されますが、投資会社である三菱商事の場合、有価証券の売却という形で投資の回収が行われるので、税引後営業利益に基づき付加価値を把握することが適当ではなく、金融収支、事業収支を加味しカスタマイズされました。

最大想定損失は、実質リスクと定義されます。

実質リスクとは、統計的に計測される損失発生額の「期待値」(EL)と統計的に計測される損失発生額の「変動幅」(UL)の合計から分散投資効果を差し引いて計算されます。EVAは投下資本に基づき資本コストを計算しますが、MCVAはリスク調整後資本コストを計算するのです。

基本的な考え方は、外資系の金融機関が90年代から導入している手法によっています。例えばチェース・マンハッタンが同様のリスク管理手法をを導入していることが、「戦略的リスクマネジメント」(T・L・バートン/M・G・シェンカー/P・L・ウォーカー 東洋経済)に紹介されています。

三菱商事は、MCVAにより次のようなリスクマネジメントが可能になったと説明しています。

  • 異なる種類の取引・資産に係わるリスクを計量し会社としてのリスク総量やリスク構造を把握する
  • 営業組織をビジネスモデルや取扱商品毎に再編し、個々の組織単位で保有するリスク量と収益のバランスを経営管理指標とする
  • リスク総量と自己資本(体力)を比較しながら、追加リスク総量を管理し、且つ追加リスクの配分(資源配分)を行う

なお、本文中のMCVAの説明は、京都大学経済学部大学院経済研究科目平成1 7 年度前期「資産運用論」資料、「三菱商事におけるビジネスポートフォリオマネジメント~価値創造経営とリスクマネジメント~」(経営企画部 北村康一)によっています。

【リンク】

2005年7月5日「三菱商事におけるビジネスポートフォリオマネジメント~価値創造経営とリスクマネジメント~」三菱商事株式会社 経営企画部[PDF]

吉永 リスク管理 , ,

利益偏重は悪か? その2

2008年 12月 10日

経営共創基盤CEO 冨山和彦氏 インタビューより
(日本経済新聞2008年12月10日4面)

【CFOならこう読む】

インタビューの中で、冨山氏は次のように発言しています。

-今回の金融危機で米国型の資本主義モデルは崩壊したのか
「米国は『会社は株主のもの』という規範やROEが高ければ高いほどよいという考え方を推進してきた。ただ利益はそう簡単に増えないので、資本をできるだけ小さくしてしまい、その結果、金融機関のリスクは膨らんでいった。こうした株主・ROE主義は一つの幻想だった」

私には冨山氏が何を言いたいのか全くわかりません。

リスクをとることを否定しているのでしょうか?
そうであるなら株式会社という仕組みも否定されなければなりません。

ファイナンスという学問が教える資産価格理論を否定しているのでしょうか?
そうであるならもっとロジカルに説明する必要があります。

私の敬愛するファイナンスの学者久保田敬一氏が今日の新聞で次のように話しています(14面 中央大学ビジネススクールの広告)。

「先日「世界経営者会議」で、ダートマス大学のタック経営大学院を卒業した経営者が「今の仕事に一番役立っているのはファイナンスだ」と話していた。企業戦略にはファイナンスというツールが欠かせない。例えば資本コストについて、組織で一つのものを使うかどうかとか、組織内の設定の摩擦はどういうものかというのは、まさに組織論である。また収益性と費用を顧客別、設備別、製品別に把握する管理会計の手法も戦略的な意思決定には重要だ。これは企業買収などで、資産を適正に評価する際にも役立つ。」

冨山氏の発言はこのような経営を否定するのでしょうか?
冨山氏はさらに次のように発言しています。

「長い目で見れば、10年ー20年に一度の頻度で起きる危機に備え、資本を手厚く持っておく意味は大きい」

手厚いとはどの程度でしょうか?
何によってその妥当性を測るのでしょうか?
無借金で余剰資金を貯め込む経営を良しとするのでしょうか?

この点、先日紹介した、「金融技術革新と金融機関の経営および規制」という論文の中で、ロバート・マートン氏は次のように論じています。

「リスク管理は伝統的に資本に焦点が絞られてきた。株主資本は、金融機関のリスクを吸収するためのクッションである。それは、あらゆる目的にかなうすばらしいクッションである。なぜだろうか。それは、経営陣が、予期せぬ損失の源が何であるかを知る必要がないからである。彼らは、損失の源を予測する必要は。なぜならば、資本によってあらゆる形のリスクに対し企業は守られるからである。そういう意味において、資本はあらゆる目的にかなうクッションであり、したがってリスク管理にとって大変魅力的である。われわれもよく知っているように、株主資本はまさにそういう理由で、費用が高くついてしまう。」

この後ロバート・マートン氏はデリバティブによるリスク管理の重要性について語っています。

冨山氏は伝統的なリスク管理手法に回帰すべきであると言っているのでしょうか?

 

【リンク】

金融技術革命

吉永 業績評価

利益偏重は悪か?

2008年 12月 6日

ビジネス教育 金融危機の教訓 利益変偏重の風潮見直し

「ビジネススクールにとって今回の金融危機は極めて教訓が多い。経営学を大きく変えることになるだろう。まず我々を含めて、利益を重視し過ぎる風潮があった。株主は『他社がもうけているのだからウチももっと資金を借りて、もっともうけろ』と金融機関などに圧力をかけ、マスコミも利益率ばかりに注目した。こうした風潮からは脱する必要がある。」(MITスローン経営大学院長 デイビッド・シュミッタライン氏)
(日本経済新聞2008年12月6日9面 世界を語る)

【CFOならこう読む】

経営における利益や利益率の重要性は今後も変わることはないと思います。我々はこれに代わるツールを持っていません。大事なことは、リスクテークについて、きちんとマネジメントされることです。なぜならリスクテークこそがもうけの源泉だからです。

ですが、会計は、リスクについて何も語らないことを知ることは重要です。この点、ブラック・ショールズモデルでノーベル賞を受賞したロバート・マートンは、「金融技術革新と金融機関の経営および規制」という論文の中で次のように論じています。

「枠組みとしての会計は、価値の分配に向けられている。この次元では、会計は効果的である。ここでの問題は、会計システムが基本的に価値の分配にのみ注目しているということなので、それが取得原価であるのか、時価であるのかを区別する必要はない。それゆえ、会計システムは、リスク配分を識別するには非効果的な枠組みとなる」

「システミック・エクスポージャーについて適切な相対比較を行うことは、短期的には主要な計測の問題である。長期的には、すでに示したように、財務会計は、根本的な修正を必要としており、「リスク会計」と呼ばれる特別の新しい分野が創造されなければなりません」

 しかし、優秀なマネジメントは自社のリスクについて十分に理解しているのが普通です。「リスク会計」を利用できるなら、それにこしたことはありませんが、なければ経営できないということもないはずです。

大事なことは、マネジメントが、自社を巡るリスクをよく知り、分散化すべきリスクとそうではないリスクを仕訳し、受容すべきリスクを判断し、その範囲内で利益や利益率の最大化を目指すことだと私は思います。
 

【リンク】

金融技術革命
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