東日本大震災からの復興財源を賄う臨時増税の税目を巡る議論が活発になってきた。経団連と日本商工会議所は28日、消費税の増税分を財源に充てるよう経済産業省に要望した。所得税、法人税を増税すれば、産業空洞化に拍車をかけかねないためだ。
(日本経済新聞2011年7月29日5面)
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「経団連は経産省が同日開いた2012年度税制改正要望ヒアリングで、「所得税・法人税を増税すれば負担が納税者と黒字法人に偏り、経済活力が大きく損なわれる」と強調した。そのうえで消費税を増税する方が「経済への影響が最も中立的」と指摘した」(前掲紙)
この問題は、ベンチャー企業にとっても重要です。いやベンチャーこそ、事業拠点をグロバールな視点で選択できる自由度が高いわけで、法人税が増税になれば日本を出ていがざるを得ないと、ツイッター等の民主的な方法を使って声高に叫ぶべきです。
多くの企業は私腹を肥やすためではなく、ビジョンという公益を実現するために日夜頑張っているのです。そしてそのための資金はいくらあっても足りません。
儲かっている企業に余裕があるわけではないのです。こういうことを経団連や商工会議所のお偉いさんが言うと、何だか胡散臭く聞こえなくもないわけですが、若いベンチャー企業家や従業員が皆で声をあげれば、その声は政府に届くと思うのです。
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なし
日本企業が海外子会社の利益を国内に還流させている。国際収支統計によると、2010年度は利益全体の95%を親会社への配当金の形で国内に戻した。この比率は2001年度以降で最も高い。2009年度に外国子会社の配当を実質非課税にした効果が出ていると見られる。
(日本経済新聞2011年7月19日5面)
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「国際経済交流財団調査(2011)によると、外国子会社配当益金不算入制度の導入前後における海外子会社利益の使途として、製造業においても、制度導入後、現地で利益を留保する企業の割合は低下し、本邦へ配当を還元する企業の割合は増加しており、海外利益を国内環流させる傾向は強くなっていると言える。」
(通商白書2011年版)

「経済白書2011年版」より 該当ページにリンクしています。
「また、経済産業省実施の海外事業活動調査(2009)によると、現地法人からの配当金の用途としては、研究開発・設備投資が最大(44.1%)で、借入金返済(26.1%)、株主への配当(19.3%)、雇用関係支出(16.1%)がこれに続く」
(通商白書2011年版)

「経済白書2011年版」より 該当ページにリンクしています。
日本の実効税率が下がりそうもない現状においては、税率の低い海外において利益を稼ぐことが定石になりつつあります。一方研究開発は日本で行い、Intellectual Property (知的財産) を日本で持つことを志向するのであれば、IPに係る移転価格の重要性が今後ますます増大していくものと思われます。
【リンク】
「通商白書2011年版」経済産業省
ドイツ政府は6日の閣議で、好景気で税収が大幅に増えたのを受け、次の連邦議会選挙がある2013年に所得税を減税する方針を決めた。日本の原発事故で野党の環境政党が躍進するなど連立の与党に逆風が吹いており、メルケル政権が苦心の支持浮揚に乗り出す。
(日本経済新聞2011年7月7日7面)
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「12年の予算案や15年までの中期財政計画とともに、13年初めから減税をする基本方針を決めた。規模などは今秋までに詰めるが、独メディアでは最大100億ユーロ(約1兆1600億円)程度との観測が出ている」(前掲紙)
ドイツは2007年にVAT(付加価値税)を16%から19%に引き上げた際、同時に所得税の最高税率を42%から45%に引き上げています。
(さらに2008年に法人実効税率を38.36%から29.83%に引き下げています)
「ドイツ税制改革 ~海外調査報告~」財政金融委員会調査室 伊田 賢司 [PDF]
所得税の最高税率の引き上げは、必ずしも税収確保のためではなく、課税の平等感を高める狙いがあったと説明されています。今回の所得税減税がどのような形で行われるか現時点では不明ですが、方向性としてはVAT増税、所得税・法人税減税なんでしょう。
ドイツの税制改革は、日本の税制改革の先行事例として注目されており、ドイツの税制の動きは、少なからず今後の日本の税制改革を巡る議論に影響を与えるものと思われます。
【リンク】
JETRO ドイツ 投資制度 税制
民主、自民、公明3党は8日、11年度税制改正法案のうち6月末で期限が切れる租税特別措置や寄付税制拡充などに限り、月内に成立させることで合意した。
(毎日新聞 2011年6月9日 東京朝刊)
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「租税特別措置には中小企業の法人税22%を18%にする特例措置や住宅購入時の登録免許税の軽減、海外旅行者が持ち込む酒類・たばこへの非課税など約100項目が含まれる。これらは今年3月、とりあえず「つなぎ法案」で3月末の期限を3カ月延長していた。3党が今回、税制改正法案と切り離すことで合意したのは租税特別措置のほか(1)非営利組織(NPO)などへの寄付を促す「市民公益税制」(2)雇用促進税制(3)航空機燃料税の引き下げ(4)証券優遇税制の2年延長など。これらの項目を盛り込んだ新たな法案として政府が提出する。」
(「租税特別措置の会期中成立、民自公が正式合意」2011/6/8 22:07)
税制改正法案の修正は、国民福祉税構想で混乱した細川政権時代の94年以来17年ぶりだそうです。
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なし
政府は社会保障制度改革と財政再建を目指した消費税率の引き上げ論議を始めたが、高所得者に追加負担が生じる可能性が出てきた。閣僚らで構成する政府税制調査会は消費税増税と同時に所得税の最高税率引き上げなどを検討する。所得の再分配を強めることで公平感を醸し出す狙い。社会保障財源としての消費税率上げは不可避とみられるが、それに乗じて増税メニューが膨らめば、経済の活力をそぎ、成長を阻害する恐れがある。
(日本経済新聞2011年6月7日1面)
【CFOならこう読む】
政府が消費税増税と合わせて所得税などの増税を検討するのは、高所得者から低所得者への「所得再分配」の強化という理屈からだ。政府の社会保障改革集中検討会議が5月30日に公表した消費税増税の「研究報告書」もこうした方向性を示唆」(前掲紙)
「研究報告書」(要約)から消費税の逆進性に関する議論の部分を以下に抜粋します。
「逆進性を何で測るか:生涯所得でみると縮小
・ 消費税の逆進性とは、所得に対する消費税の負担率が、低所得者ほど重いことを指す。
・ 一時点の所得でみた逆進性は必ずしも「不公平」を意味せず、単に調査時点の年齢の違い等を反映したものである可能性あり。
・ 生涯所得でみた場合は、消費税は比例税であるとの指摘も多い。
・ 生涯所得でみた消費税の負担は、ある一時点の所得でみた場合と比べ、逆進性が小さいという研究結果が海外でも日本でも報告されている。
逆進性の緩和策としての軽減税率の導入
・ 仮に逆進性緩和策を講ずるとした場合、食料品への軽減税率の適用は、他の手段による対応 に比べ、効果が小さいという見方が専門家の間では国の内外を問わず一般的。
・高所得者と低所得者の間で食料品の支出割合の差が小さく、食料品への軽減税率の適用は 高所得者の負担も軽減される。
格差・貧困と再分配政策
・格差や貧困の問題への対応においては、再分配がこれまで主として世代間で行われていたこ とを踏まえ、より同一世代内の再分配の機能を強化することが必要。
・ 一時点の所得でみた消費税の逆進性は、所得税など他の税制や社会保障制度全体、さらに は歳出面を含めた見直しの中で十分対応可能。
・ 非正規労働者や若い世代・子育て世代なども視野に入れた対応を行うべき。
対応の方向性
・ 格差や貧困の問題に対応するためには、1所得税の累進性を高める、被用者保険の適用範 囲を見直すなど個々の政策手段の再分配効果を高める、2ある程度の支出を行うのに十分な税収の規模を確保する、3格差是正に有効な方法を歳出・歳入の中で組み合わせる、という3つの方法が考えられる。
・ 労働のインセンティブなどミクロ面に配慮した制度設計や、社会保障・税に関わる番号制度な ど徴税のインフラ整備が必要。」
平成23年5月30日「社会保障・税一体改革の論点に関する研究 報告書(要約)」 内閣府 [PDF]
所得税の累進性を高めるというのは、報告書で提案されている対応の方向性の3つの選択肢の1つに過ぎないことに注意が必要です。
【リンク】
平成23年5月30日「社会保障・税一体改革の論点に関する研究 報告書(要約)」 内閣府 [PDF]
平成23年5月30日「社会保障・税一体改革の論点に関する研究 報告書」 内閣府 [PDF]
野村資本市場研究所は今年11月にも英国で導入予定のジュニアISAを紹介した。高騰する大学での教育資金を家計自らが蓄えるのを、税制面から支援する政策として準備が進んでいる。
(日経ヴェリタス2011年6月5日15面)
【CFOならこう読む】
ジュニアISAの仕組みは次の通りです。
「ジュニアISAとは、子供の将来へ向けた資産形成を奨励するための個人貯蓄口座である。仕組みとしては、家計が自らの資金をジュニアISA取扱金融機関に預託し、様々な金融商品に投資するというものであり、同口座で生じた収益(配当・利子・譲渡益)は非課税となる(図表1参照)。これまでのチャイルド・トラスト・ファンドとの最大の違いは、政府からの給付金がなく、家計自身の資金による資産形成を奨励するスキームだという点である。
対象者は英国在住の18歳未満の子供であり、預金口座と株式口座を1つずつジュニアISAとして持つことができる。ジュニアISAに対して親族や友人等が資金を拠出できるが、口座への年間拠出額の上限は合計3000ポンドである。
ジュニアISAの名義人は子であり、子が18歳になるまで資金を引き出すことができない。口座の管理は、子が16歳になるまでは子の保護者が、それ以降は子本人が行う。また、子が18歳に達すると、ジュニアISAは自動的にISA(18歳以上の英国居住者を対象とする個人貯蓄口座)になる。ジュニアISAは、現在ISAを提供している金融機関(銀行、住宅金融組合、信用組合、共済組合、証券会社など)が提供する

「英国で導入されるジュニアISA」 3ページより 【クリックすると拡大表示します】
「英国で導入されるジュニアISA」 野村市場クオータリー 2011Spring 宮本佐知子 [PDF]
日本には教育資金作りのための税制優遇制度はありません。
大学教育段階における私費負担は、日本では米国や英国と並んで高くなっており、野村資本市場研究所のレポートは、対応の必要性を訴えています。
【リンク】
「英国で導入されるジュニアISA」 野村市場クオータリー 2011Spring 宮本佐知子 [PDF]
社会保障と税の一体改革に向けた政府の集中検討会議は2日、改革原案を公表した。医療や介護、保育の利用者負担を合算し、自己負担額に上限を設ける「総合合算制度」の導入など若年層と低所得者への支援強化を打ち出した。財源を確保するため、消費税率を2015年度まで
に段階的に10%へ引き上げることも明記した。ただ高齢者向け給付抑制に向けた道筋はほとんど示さず、制度の持続性には疑問も残る。
(日本経済新聞2011年6月3日1面)
【CFOならこう読む】
昨日公表された社会保障改革案に記載されている、税制全体の抜本改革案について以下に抜粋します。
「社会保障・税一体改革においては、所得、消費、資産にわたる税制全般の改革を実施していく。
(注)今後、社会保障・税一体改革の成案に向け、税制調査会において、平成 22 年度・平成 23 年度税制改正大綱等に示された方針を踏まえ、残された税制抜本改革の課題等の審議を行い、包括的な税制抜本改革の姿を示す。」
以上です。
素晴らしい。
【リンク】
「社会保障改革案」 [PDF]
東日本大震災の被災地に、企業が義援金を送る動きが広がっている。国や県、日本赤十字社に送る例が多いが、企業自身がおカネの配分に工夫を凝らそうとする動きも出てきた。その際、寄附金の損金扱いが窮屈で、せっかくの善意が税の壁に当たりつつある。
(日本経済新聞2011年6月2日5面)
【CFOならこう読む】
「企業が県などの行政機関に寄附した場合は、全額が損金扱いされ非課税。だがヤマトのように公益法人への寄付だと、寄附金の一部しか非課税にならない」(前掲紙)
今日の記事は、正確性に欠けます。認定NPO法人や公益法人向けの寄附金は支出額の全額が損金算入できます。
以下、国税のHPから抜粋します。
「法人が義援金等を支出した場合には、その義援金等が「国又は地方公共団体に対する寄附金」 (国等に対する寄附金)、「指定寄附金」に該当するものであれば、支出額の全額が損金の額に 算入されます。(法法 373)
「国等に対する寄附金」には次の1、2、3又は7に掲げる義援金等が、「指定寄附金」に は次の4、5又は6に掲げる義援金等が該当します。
1 国又は地方公共団体に対して直接寄附した義援金等
2 日本赤十字社の「東日本大震災義援金」口座へ直接寄附した義援金、新聞・放送等の報道機関に対して直接寄附した義援金等で最終的に国又は地方公共団体に拠出されるもの
3 社会福祉法人中央共同募金会の「東日本大震災義援金」として直接寄附した義援金等
4 社会福祉法人中央共同募金会の「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」として直接寄附した義援金等(平 23.3.15 財務省告示第 84 号)
5 認定NPO法人に対し、東日本大震災の被災者支援活動に特に必要な費用に充てるために 行 っ た 寄 附 金 ( そ の 募 集 に 際 し 、 国 税 局 長 の 確 認 を 受 け た も の に 限 り ま す 。)( 平 23.3.15 財務省告示第 84 号、平 23.4.27 財務省告示第 143 号により追加。)
6 公益社団法人又は公益財団法人に対し、東日本大震災の被災者支援活動に特に必要な費 用に充てるために行った寄附金(その募集に際し、当該公益社団法人又は公益財団法人 に係る行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)の確認を受けたものに限ります。)(平 23.3.15 財務省告示第 84 号、平 23.5.20 財務省告示第 174 号により追加。)
7 1から6以外の義援金等のうち、寄附した義援金等が、募金団体を通じて、最終的に国 又は地方公共団体に拠出されることが明らかであるもの」
(「東日本大震災に係る義援金等に関する税務上(所得税、法人税)の取扱いについて」 国税庁 [PDF])
但しこの制度が周知されているかについては疑問があります。
国税のHPを見る限り認定NPOは4つしかありません(「東日本大震災に係る義援金等に関する税務上(所得税、法人税)の取扱いについて」 国税庁 [PDF])。いくら何でも、復興支援に尽力しているNPOが4つしかない、ということはないでしょう。
日本赤十字社が機能不全を起こしている今、被災者に直接義援金を届けることが重要で、国税としてもその仕組みを用意しているわけですから、もっと声高にアピールすべきです。ただ、税制上の手当てが十分だとは思いません。企業が支出した義援金は、全額税額控除とすべきでしょう。
これはこういうことです。税引前利益が100億円、法人税率が30%の会社が30億円の義援金を支出した場合、法人税額は次のようになります。
全額損金算入方式の場合、
(100ー30)×0.3=21億円
の法人税を納めなければなりません。一方税額控除方式なら、
100×0.3-30=0
となります。
税金として徴収した後、国が被災者を支援する代わりに、企業が直接被災者支援を行うわけですから、税額控除方式が正しいと私は思います。
【リンク】
「東日本大震災に係る義援金等に関する税務上(所得税、法人税)の取扱いについて」 国税庁 [PDF]
政府は30日の集中検討会議で社会保障改革の大詰め論議に入った。子育て支援など給付拡充に偏った議論を修正し、高齢化で膨らむ給付の抑制策を盛り込めるかどうかが焦点。ただ菅直人首相は同日に表明予定だった効率化に関する具体策の指示を見送った。給付のスリム化を徹底せずに増税で財源を手当てするなら、年金、医療などを支える現役世代の負担は一段と重くなりかねない。
(日本経済新聞2011年5月31日5面)
【CFOならこう読む】
「同日の会議に内閣府と財務省は消費増税を巡る報告を提出。低所得者ほど負担が重くなる逆進性の問題について「生涯所得でみると、逆進性は小さい」、経済に与える影響について「増税は必ずしも景気後退は招かない」と指摘した」(前掲紙)
生涯所得でみると、逆進性は小さいとはどういう意味でしょう?
消費税の逆進性とは、貧しい人ほど所得に占める消費の割合が高いので、金持ちの人に比べ貧しい人の方が所得に占める消費税の割合が大きくなることを言います。
税金は累進的である方が望ましいとされているので、消費税の逆進性は、これを主たる税源にすることを阻む大きな障害となります。
ところが生涯所得で見ると、逆進性は小さいという見解があります。これを、大阪大学の大竹教授と小原助教授の、「消費税は本当に逆進的か」という論文がわかりやすく説明していますので、以下に抜粋してみます。
(「消費税は本当に逆進的か」大阪大学社会経済研究所教授 大竹文雄 大阪大学国際公共政策研究科助教授 小原美紀 [PDF])
「税金が累進的であるとか逆進的であるという議論をする場合には、一時点の所得を念頭 にしていることが多い。しかし、少子化時代における税負担の公平性を考える際には、特 に生涯所得に対する負担の公平性に気を配る必要がある。人口構成が若い時代には、全員 が勤労世代であるとみなして、税負担の公平性を考えてもそれほど問題は生じなかった。 しかし、少子高齢化時代では、引退後の生活をしている人の比率が高まっている。勤労世代と老齢世代の税負担の公平性を考えるには、引退して勤労所得がなくなっている人の担 税能力をどう評価するかが鍵になる。勤労所得がないからといって、貧しいとは限らない。 勤労期に蓄えた豊かなストックをもっている高齢者も多い。
その意味で、消費税の逆進性を一時点の所得水準に対する消費税負担率で計測するこ とには問題がある。この問題は少子高齢化が進めば進むほど深刻になってくる。
例をあげて説明してみよう。世の中に、全く同じ所得水準の人しかいなかったとする。 20歳から60歳まで、年収が500万円、60歳以降は年金所得が200万円で80 歳まで生きるとしよう。人々は、生涯同じレベルの消費水準を達成できるように貯蓄し、 それを取り崩すとする。ここで、簡単化のために、金利をゼロとすると、人々 は毎年400万円ずつ消費すれば、60歳まで毎年100万円ずつ貯蓄し、60歳以降 は毎年貯蓄を200万円ずつ取り崩すと、80歳でちょうど貯蓄を使いはたすことにな る。これが、経済学でライフサイクル仮説と呼ばれる消費行動を説明する理論のもっと も簡単なケースである。
このとき、消費税率が5%だとすれば、50歳の人の消費税の負担額も70歳の消費 税負担額も、約19万円になる。所得に対する負担率を計算すると、50歳で所得50 0万円で、所得に対する消費税負担率は約 3.8%、70歳で年金所得200万円の人の 消費税負担率は約 9.5%である。この指標では、所得の少ない高齢者が、所得の多い勤 労者に比べて、高い消費税負担比率となっているため、逆進的な状況を示している。
しかし、この両者は年齢が違うだけで生涯所得は同じであるから、生涯所得に対する生 涯消費税負担で考えると、どちらも、約 4.8%の消費税負担率ということになる。このよう に、狭い意味のライフサイクル仮説が成り立つと生涯所得=生涯消費であるため、消費税 が比例税である限り、生涯所得に対して消費税には逆進性はなく、あくまで比例税にすぎ ない。
(中略)
消費階級データから生涯所得と生涯消費税負担率を計算した結果を図3に示した。まず、生涯所得に対する消費税負担率について検討しよう。驚くべきことに、消費階層別 に生涯所得階級を定義すると、消費税負担は「累進的」である。1999 年において、消 費階級第1分位の消費税負担率は 1.59%、第10分位の負担率は 4.05%である。非耐久 財でも同様の傾向がある。必需品だと考えられる食費の負担率は、消費階級別データで みると生涯消費額階級に関わらず、所得の一定割合である。その意味で、食費は他の費目に比べると所得に対してほぼ比例的であるといえる。しかし、食費にかかる消費税も 決して逆進的であるとは言えない。

9ページの図3より 【クリックすると拡大表示します】
」
消費税も所得税も累進的であるなら、これをどのようにミックスするか(消費税率を何%にするか)は、どの程度の累進性を選択するかの問題です。
【リンク】
「消費税は本当に逆進的か」大阪大学社会経済研究所教授 大竹文雄 大阪大学国際公共政策研究科助教授 小原美紀 [PDF]
日本経済活性化のために法人税率の引き下げが必要と言われ、2011年度予算に減税が盛り込まれた。しかし、以下で述べるように、その必要性はもともとなかった。これを取りやめて、復興財源に充てるべきだ。
減税要求の論拠とされたのは、「日本の法人課税の実効税率が諸外国に比べて高い」ということだ。しかし、本当に日本の法人課税の負担は重いのだろうか? じつは、以下に述べるように、そうではないのである。
(『大震災後の日本経済』野口悠紀雄 ダイヤモンド社)
【CFOならこう読む】
「地方税も含めた法人課税の実効税率は、税引前当期純利益に対する率で見れば、28.4~33.5%程度だ。大ざっぱには「3割程度」と言ってよいだろう。これは、先進国の標準的な値とほぼ同じであり、格別高いわけではない」(前掲紙)
野口氏に限らず、日本企業の実効税率は3割程度であるということを言う人は他にもいるのですが、こういう大雑把な議論によって法人税率引き下げの必要性を否定するのは止めて頂きたいと思います。
法人実効税率と税引前当期純利益に対する法人税等の負担率との差の内容は、有価証券報告書の税効果会計関係に関する注記として記載されています。例えば、野口氏が引用している2008年3月期のトヨタ自動車の単体財務諸表では、次のような注記があります。
法定実効税率 39.9%
(調整)
試験研究費税額控除 △5.2%
外国税額控除 △4.8%
受取配当金等永久に益金に 算入されない項目 △2.0%
評価性引当額 0.4%
交際費等永久に損金に 算入されない項目 0.3%
その他 △0.6%
税効果会計適用後の法人税等 の負担率 28.0%
調整項目として、試験研究費の税額控除、外国税額控除、受取配当の益金不算入が大きいのは、トヨタに限らず一般的に見られるところです。
このうち、外国税額控除は外国で支払った税金を二重課税排除のため控除するもので、受取配当の益金不算入も税引後利益に対し二重課税を排除するために設けられている措置なので、この部分の影響は除外して実質的な法人税等の負担率を把握すべきです。
試験研究費の税額控除は、その費用対効果や公平性といった観点から見直しが必要であると思われますが、試験研究促進税制そのものは他国にも存在するわけで、比較対象とする諸外国の負担率についてもこれを勘案してみなければ、比較することはできません。
2011年4月11日号のビジネスウィークは米国の税金問題を特集していますが、その中で日本の実効税率は39.2%と世界最高であり、5%引き下げられることにより米国が世界最高となることを非常に問題視する論稿が寄せられています。
外国企業を日本に呼び込むことがこれからの日本にとって重要であるなら、日本の実効税率は高くはないとごたくを並べるのではなく、日本の税率は世界レベルで見て決して高くはないと、外国企業に思ってもらえることが重要なはずです。
その第1ステップとして、法人税率の引き下げは絶対に必要です。
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