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セブン&アイ・ホールディングスとイオンの苦闘

2010年 2月 24日

セブン&アイ・ホールディングスとイオンが苦闘している。国内消費の成熟を乗り越えようとM&Aなどで拡大路線を突き進んできた結果、ここへきてその非効率性が浮き彫りに。2007年2月期に営業最高益を記録した後は足踏みが続き、米タルボットの売却や西武百貨店の店舗閉鎖などに追い込まれた。収益力や財務力では差があるものの、「グループ力」のテコ入れが課題だという点は共通する。持株会社のあり方を含めた抜本的な経営体制の見直しが、待ったなしだ。
(日経ヴェリタス2010年2月21日14面)

【CFOならこう読む】

「イオンの上場子会社は17社と国内企業で最多。持分法適用会社は7社ある。海外でも子会社が4社上場している。かつては上場益を出店など成長投資に充てる前向きな目的もあったが、今では少数株主が増えたことで利益の社外流出を招くマイナス面が指摘されるようになった。前期末の少数株主持分は2,838億円で純資産の実に4分の1。税引後利益の約3割が少数株主利益として流出している。
中でも「本体との関係性が強く、完全子会社すべき」(国内証券)と指摘されるのが中核子会社のイオンモール。イオンモールの今期の予想純利益は前期比1%増の216億円で、イオン連結(75億円~150億円)を上回るグループ最大の稼ぎ頭だ。
(中略)
イオンモールを株式交換で完全子会社化すると、イオンの発行済株式数(約8億株)は約2割増えるが、それでも今期の1株利益は約18円~26円(のれん代償却を除く)とイオンの会社予想(9.8円~19.6円)より増える」(前掲紙)

イオンの2010年2月期の予想1株利益は、9.8円~19.6円。株価が924円(2月23日終値)なので、PERは47.1倍~94.2倍の水準です。一方、イオンモールの2010年2月期の予想1株利益は、118.71円。株価が1,620円(2月23日終値)なので、PERは13.6倍の水準です。

ところで、自社よりも低PERの会社を合併又は株式交換で買収すれば、必ず自社のEPSは上昇します(のれん償却費を計上しないと仮定した場合)。これはコングロの算術とも呼ばれ、1960年代にEPSの成長を目的に多数のコングロマリット企業群が誕生しました。

「もっともこうしたコングロマリット・ブームは長続きしなかった。財務会計ルールの不備と投資家の一時的な錯覚につけこんだコングロ企業のゲームのルールは、やがて投資家の気がつくところとなり、1960年代末には相場下落とともに馬脚を現し、成長の息の根を止められてしまった。しかし、わが国では、こうした財務会計指標の表面的な改善を重視したM&Aも非常に多いと思われる」(経営財務入門 井手正介/高橋文郎 日本経済新聞出版社)

完全子会社化は良いのですが、EPSが改善するからといって、価値が創造されることにはならないことに注意が必要です。

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なし

吉永 M&A , ,

金融庁、「株券等の公開買付けに関するQ&A」の追加(案)の公表

2010年 2月 20日

KDDIによるケーブルテレビ最大手ジュピターテレコム(JCOM)への出資を巡り、TOB規制の課題が浮き彫りになった。KDDIは規制に引っかからないような枠組みで出資を計画。ところが金融庁にはこれが「脱法的行為」と映った。KDDIは結局、規制対象外まで出資比率を下げて19日に買い取ったが、規制を巡る解釈のズレが生じた。
(日本経済新聞2010年2月19日5面)

【CFOならこう読む】

「今回、浮き彫りになった論点の一つは、金融規制と民間の創意工夫とのバランスをどう取るかという点だ。企業や個人が法律を読み込んで問題がないと判断した取引が、行政のさじ加減でひっくり返されるのであれば、商取引そのものが萎縮しかねない」(前掲紙)

創意工夫といっても、上場会社の少数株主や一般投資家の利益を害するようなスキームはそもそも許されないと考えるべきです。そしてそのような行為が目の前で行なわれようとしているなら、金融庁がストップをかけるのは当然と僕は考えます。

ところで金融庁は15日に「株券等の公開買付けに関するQ&A」の追加(案)を公表しています。その中で次のように、資産管理会社の株式取得がTOB規制に抵触するとの解釈が示されています。

「問15 有価証券報告書提出会社の株券等の3分の1超を所有する資産管理会社の株式を取得することは、公開買付規制上、どのような問題がありますか(法第27条の2第1項関係)


当該資産管理会社の株式の取得は、形式的には当該有価証券報告書提出会社(以下この問において「対象者」といいます。)の「株券等の買付け等」に該当するものではありませんが、当該資産管理会社の状況(例えば、当該資産管理会社が対象者の株券等以外に保有する財産の価値、当該資産管理会社の会社としての実態の有無等)によっては、当該資産管理会社の株式の取得(結果的に当該資産管理会社を支配し得るようなものをいいます。以下この問において同じです。)が実質的には対象者の「株券等の買付け等」の一形態に過ぎないと認められる場合もあると考えられ、そのような場合に、対象者の既存株主等にその所有する株券等を売却する機会が与えられないとすれば、公開買付規制の趣旨に反するものと考えられます。したがって、そのような資産管理会社の株式の取得は、公開買付規制に抵触するものと考えられます。」

【リンク】

株券等の公開買付けに関するQ&A[PDF]

吉永 TOB ,

JCOM株、住商がTOBへ KDDIに対抗

2010年 2月 10日

住友商事がCATV最大手ジュピターテレコム(JCOM)のTOB(株式公開買い付け)を実施する方向で最終調整していることが9日明らかになった。JCOMを巡ってはKDDIが米メディア大手から同社株を大量取得する方針を打ち出している。JCOMをメディア事業の中核に位置付ける住商は対抗して持ち株比率を引き上げ、JCOMの筆頭株主の地位を目指す。住商とKDDIの間でJCOMの経営権の争奪戦に発展する可能性もある。
NIKKEI NET2010年2月10日

【CFOならこう読む】

「住商は現在、JCOM株を実質27.7%保有する第2位株主。KDDIの出資でJCOMの経営への影響力が弱まることを防ぐためにTOBに乗り出す。金融庁など当局の認可を取得でき次第、すみやかにTOBを実施する可能性が高い」(前掲紙)

先日、KDDIは金融庁の指摘を受けて取得比率を3分の1以下に引き下げる調整を進めていると明らかにしています。

しかし、3分の1を超える部分(約4.5%分)の引受先について、取引金融機関などと協議を始めているとの報道もあり、「筆頭株主にはこだわらない」(前掲紙)というのが本音とは思えません。

ところで、KDDIが主導で株式の引受先を探しているということであるなら、その引受先は特別関係者として公開買付規制の対象となる可能性があるように思います。

「特別関係者とは、株券等買付者以外の第三者に株券等買付者と同視するための概念であり、株券等所有割合の計算において算定対象となる」(ANALYSIS 公開買付 商事法務 アンダーソン・毛利・友常法律事務所編)

特別関係者には資本関係や血縁関係などの形式的な関係に基づく形式的基準による特別関係者(金商法27条の2第7項1号)と、株券等の譲渡に関する合意や対象者の議決権の行使について合意等があることに基づく実質的基準による特別関係者(法27条の2第7項2号)がありますが、JCOM株の引受先が実質基準による特別関係者に該当する可能性があると思うのです。

「(a)(ア)、(a)(イ)、または(b)のいずれかに該当する場合、実質的基準による特別関係者に該当する。なお、(a)または(b)の合意が成立した時点で、株券等買付者との間で(a)または(b)の合意を行なった者は、株券等買付者の実質的基準による特別関係者となる。
(a) 株券等買付者との間で、(ア)共同して当該株券等を取得しもしくは譲渡すること、または(イ)共同して当該株券等の発行者の株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している者(b) 株券等買付者との間で、当該株券等の買付け等の後に相互に当該株券等を譲渡もしくは譲り受けることを合意している者」(前掲書)

引受先が特別関係者であるということになれば、TOBを実施しないことが引き続き問題となると思います。住商との主導権争いも勃発し、KDDIは非常に難しい局面に立たされたと言えます。

【リンク】

ANALYSIS公開買付け ANALYSIS公開買付け
アンダーソン毛利友常法律事務所

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吉永 M&A ,

キリン・サントリー、統合断念

2010年 2月 9日

国内食品最大手のキリンホールディングスと同2位のサントリーホールディングスは8日、経営統合交渉を終了すると発表した。同日午前、両社トップによる会談を開いて交渉の中止を決めた。統合比率や新会社におけるサントリーの創業家一族の権利などについて溝が埋まらず、基本方針が一致しないまま交渉を続けては既存事業への影響が大きいと判断した。
NIKKEI NET 2010年2月9日

【CFOならこう読む】

やっぱりな、というのがこのニュースを聞いたときの最初の感想です。

もともとこのディールに関しては、その実現可能性も含めて僕は懐疑的に見ていました。ただあまり批判的なことを言うのもどうかと思い、このブログでもABSの講義でも一切ふれないことにしていました。

日本のM&Aはまだまだ未熟です。

死に体の会社を売買する事例はたくさんありますが、株主価値創造のために元気な会社同士がひとつになるという例はいまだ非常に少ないと言えます。

キリンに限らず多くの日本の上場会社は株主価値創造を志向してきませんでした。
しかし元気な会社同士がひとつになるためには、判断の基準となるしっかりとした軸が必要です。

その軸は株主価値をおいて他にはないと思うのです。

キリンの条件交渉は、自社の株主の利益のためというより、リアルな大株主となるサントリー創業家の持分希薄化を目的に行なわれたように思われます。

株主価値創造という軸があれば、サントリー創業家が拒否権を持とうが持つまいが大きな問題ではないと私は思うのですが、キリンにとっては大問題だったようです。

「「経営の独立性、透明性を維持するために、新会社を上場公開会社とすることで交渉を進めてきたが、経営のあり方について認識が一致しなかった」。キリンの加藤社長は会見で淡々と語った。

これに対して佐治社長はこう言う。「サントリーの経営は透明だ。何をもって透明性というのかわからんね。結局、(創業家が)サイレントマジョリティーでいてほしいということと、いざとなればモノを言いますよというところの差ではないか」(日本経済新聞2010年2月9日3面)

多くの上場会社がサイレントな株主を歓迎している中、モノを言うリアルな株主の存在にはどうしても抵抗があると言うことなのでしょう。

株式会社というのは、株主が取締役を選任し、取締役が執行役員を選任しそれを監視するという統治機構を持っているのですから、いざとなれば株主がモノを言うのは当然のことだと思うのですが・・・。

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なし

吉永 M&A ,

KDDIのJCOM株取得はTOB必要?

2010年 1月 28日

KDDIが予定しているジュピターテレコム(JCOM)への資本参加を巡り、一部の株式市場関係者の間でTOBが必要ではないかとの声が上がっている。議決権の3分の1以上を得るにあたってJCOMの実質的な大株主である米リバティー・グローバルから相対で取得すると発表したためだ。
(日本経済新聞2010年1月28日16面)

【CFOならこう読む】

「焦点は金融商品取引法で定める株式のTOBに関する規定。60日間で10人以内から議決権ベースで3分の1以上の株式を取得する場合にはTOBが必要と定めている。外見上この規定に当てはまるようにみえるからだ。
KDDIが取得するのはJCOM株を保有するリバティグループ傘下の3つの中間持株会社。直接、JCOM株の3分の1以上を取得しないため、TOBルールには抵触しないとの解釈だ」(前掲紙)

スキームの概要は次の通りです。

現状 (議決権比率ベース)

SM合弁解消後 (議決権比率ベース)

KDDIの資本参加後 (議決権比率ベース)

KDDIは、SMの上位会社であるLiberty Japan, Inc. 及びLiberty Jupiter, Inc. 並びにJ:COM株の3.7%を直接保有するLiberty Global Japan II, LLCの3社の持分100%を取得し、LGIグループのJ:COMに対する出資関係 (37.8%を出資) を承継します。

(注)SMは、LGIグループと住友商事株式会社 (以下「住友商事」) の合弁であり、J:COMの株式の58.1%を保有していますが、GIと住友商事で締結している出資者間契約上、SMを通じた合弁関係は、2010年 2月18日をもって終了し、LGIと住友商事は合弁関係を解消することになっています。

そもそもTOBは趣旨というのは次のようなところにあります。

「発行者の支配権または経営権に重大な影響を与え、また発行者の株式その他の有価証券の価格形成に重大な影響を与える株券の買い付け等について、取引当事者間の自由な合意に基づく取引を無制限に許容すると、(1) 株主・投資者間の情報の偏在、(2) 発行者の支配権または経営権を取得することにより生じる上乗せ価値(いわゆる支配権プレミアム)の分配の不公正、さらに(3) 株主・投資者間に対して付与される売却機会の不平等により、公正な価格形成、円滑な流通、および株主・投資者間の平等が確保されないという問題が生じうる」(「ANALYSIS 公開買付け」アンダーソン・毛利・友常法律事務所編 商事法務)

だとすると、このディールはTOBがかからないとおかしいと感じます。
現行法上TOBを必要とする要件を充足しないということなら、現行法自体に問題があると思います。

【リンク】

2010年1月25日「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加について」KDDI株式会社

吉永 TOB ,

高すぎる法定利率

2010年 1月 27日

2005年12月に起きたジェイコム株の誤発注事件を巡り、みずほ証券が東京証券取引所に約415億円の損害賠償を求めていた訴訟で、昨年12月、東京地方裁判所は約107億円の損害賠償の支払を命じた。この訴訟は引き続き控訴審で争われることになったが、東証は昨年のうちに約132億円を支払ったと伝わった。東証の支払額が膨らんでいるのは、4年分の金利に当たる約25億円の遅延損害金が加算されているためである。
(日本経済新聞2010年1月27日)

【CFOならこう読む】

「損害賠償債務のような金銭の支払いを目的とする債務の遅延損害金の場合、当事者間の合意がなければ、民法の定める年5%の民事法定利率か、または商法の定める年6%の商事法定利率によって計算される。そして、最大の問題は、この低利率の時代に法定利率が高すぎることなのである。支払い能力のある被告を相手に勝訴すれば、原告は通常では不可能なはずの有利な運用をしたのと同じ利益を手にすることになる。これに対し被告の金利負担は大きい」(前掲紙)

M&Aにおいてこの影響が大きいのは株式買取請求の場面です。株式買取請求に関し、会社法786条4項は次のように規定しています。

”消滅株式会社等は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日(筆者注:効力発生日から60日)後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。”

法人株主は、会社に買取請求することで、税務上、キャピタルゲインをみなし配当に変換することができ、この部分だけキャピタルゲインを減らす(譲渡損失を増やす)ことができます。さらに、裁判所の価格決定までの間、年6%もの利息を受け取れるとなれば、買取請求が本来の趣旨(反対株主に公正な価格での株式売却の機会を保証する)から離れ、法人株主が出口戦略における選択肢のひとつとして買取請求を検討するのは当然とも言えます。

昨年のTBS・楽天のケースでは、両社が主張する価格の開きが大きく決着に時間がかかりそうということから、TBSは買取代金の仮払いを楽天に対し行なうことで、この金利負担を回避しています。

【リンク】

なし

吉永 M&A

株式取得による企業結合の届け出制度の改正

2010年 1月 8日

2009年6月に改正された独占禁止法が今年から施行され、企業買収の手続きが変わる。買収しようとする相手方の株式を20%超取得する場合などに、企業は公正取引委員会にあらかじめ届け出が必要な案件の基準が見直された。買収の段取りや戦略に影響しそうだ。
(日本経済新聞2010年1月8日14面)

【CFOならこう読む】

改正の概要は以下の通りです。

① 株式取得の事前届出制の導入等
・会社の株式取得について,合併等の他の企業結合と同様に事前届出制を導入
・届出閾値を現行の3段階(単体ベースで10%超,25%超及び50%超)から2段階
(企業グループベースで20%超及び50%超)に簡素化

② 届出基準の見直し等
・株式取得等の届出基準を以下の表のように見直し株式取得等の届出基準を,以下の表のように見直し

・外国会社についても国内会社と同様の届出基準を適用
・ いわゆる叔父甥会社間の合併等同一企業グループ内の企業再編について,届出を免除
・株式取得の事前届出制の導入に伴う共同株式移転に係る届出規定の整備等○ 株式取得の事前届出制の導入に伴う共同株式移転に係る届出規定の整備等

「公取委は企業から慈善届け出の書類を受け取ってから120日、または必要な追加書類がそろってから90日のどちらか遅い日まで手続きを延ばせる。一方、金融商品取引法ではTOBに使える期間は最長で60日。
審査が長引くか問題を指摘されれば、時間切れになる懸念がある。独禁法と金商法の両方をにらんだ日程管理が必要だ」(前掲紙)

この他実務に与える影響としては、届出閾値が10%から20%に引き上げられた点が大きいと思います。

【リンク】

「3.企 業 結 合 規 制 の 見 直 し」公正取引委員会[PDF]

吉永 M&A ,

ブランド買収の顛末

2009年 12月 5日

買収額はアパレルで過去最高の260億円。昨年10月、オンワードホールディングスは日本でもファンが多い独高級衣料ブランド「ジルサンダー」を手に入れた。だが、そのわずか1年後。「黒字化が見えるのは2011年2月期になる」。水野健太郎社長は決算説明会で同ブランドの不振の説明に追われた
(日本経済新聞2009年12月05日13面)

【CFOならこう読む】

20091205

M&Aは、無能な経営者が、仕事をしているふりをするために行われる場合がままあります。そのときに経営者が口にするM&Aの動機は、

規模が必要
時間を買う

の2つです。

こういう動機が聞かれるM&Aは怪しいと思った方が良いでしょう。

「買収の対象となるブランドはピークを過ぎ、テコ入れを必要とするようなケースが多い。だが、日本企業は「消費者に何を訴え、どう革新していくのかノウハウがない」(田中洋教授)

”墓場までの時間を買うM&A哉”

【リンク】

なし

吉永 M&A

小売業におけるM&Aの意義とは

2009年 11月 12日

コンビニエンスストアのファミリーマートとその筆頭株主である伊藤忠商事は共同で、7位のam/pmを買収する方向で最終調整に入った。am/pmの親会社であるレックス・ホールディングスから全株式を買い取る。買収額は100億円前後とみられる。実現すれば店舗数は2位ローソンに迫り、首位セブン-イレブン・ジャパンの追撃体制も整う。消費不振でコンビニにも飽和感が強まるなか、再び業界再編が動き出した。
(日本経済新聞社2009年11月12日1面)

【CFOならこう読む】

記事には、”消費不振、再編促す”、”価格競争へ規模追求”という見出しが踊っています。製造業の場合、需要と供給のアンマッチを企業再編により固定費率の引き下げという形で解消することが可能なのに対し、小売業の場合にはその効果が具体的な形では見えづらいと言えます。

「少子高齢化や消費不振が進むなか、スーパーなど小売り各社割安なPBの投入に力を入れるなど、価格競争が一段と激しい。商品開発や共同仕入れなどで足並みがそろえば、同業だけでなく、メーカーに対しても大きな圧力になりそうだ。」(前掲紙 13面)

メーカーに対する圧力、と言うとき多くの人が頭に思い浮かべているのはウォルマートやテスコでしょう。
そしてウォルマートのような圧倒的規模を目指して拡大路線に邁進してきた代表選手がイオンでしょう。
そのイオンがいま苦しんでいます。

今週号の日経ビジネスにイオン・岡田元也の「手塩にかけた大型モールを否定」という記事が掲載されています。

「製造にまで入って粗利を極大化するSPA(製造小売り)と経費率を極限まで抑え込んで利益を搾り出すディスカウント系のスーパー。流通の仕組みを変えようとインフラに投資し、規模を拡大してきたイオンだが、結果として中途半端な存在になってしまった。

もちろん物流などインフラへの投資はこれから生きるという見方もある。規模が拡大したといっても、日本の大手小売業の市場占有率は欧米企業に比べてはるかに低い。欧米並みのシェアに引き上げれば、岡田が模索してきた流通の仕組みを変える仕掛けが大きな意味を持つ可能性はある。

しかし、規模拡大で増え続けたグループ企業は既に180社を超える。収益低下の著しいイオンにさらなる規模拡大の余裕はない。岡田は、理想とする流通業の姿を追う前に、現状を正す必要に迫られている。」(日経ビジネス 2009.11.9 110頁)

中途半端な規模拡大は命取りになりかねません。

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なし

吉永 M&A

優先株式を対象にしたTOBーパナソニック・三洋電機のケース

2009年 11月 5日

パナソニックは4日、三洋電機の子会社化を前提としたTOB(株式公開買い付け)を5日から始めると発表した。TOB期間は12月7日までの22営業日。三洋の大株主である米ゴールドマン・サックスグループなど金融3社が合計50.13%分の応募契約を結んでいるため成立は確実。12月中旬には子会社化が完了し、売上高で日立製作所と並ぶ国内最大級の総合電機メーカーとなる。
三洋電機も4日取締役会を開き、TOBへの賛同を決めた。買い付け価格は1株あたり131円で、パナソニックが金融3社分を取得する場合の投資金額は4033億円。全株をTOB対象とするが、現時点での三洋の株価(216円=4日終値)を下回っているため、主要3社を除く一般株主は応募しない可能性が高い。

NIKKEI NET 2009年11月4日

【CFOならこう読む】

「買い付け価格は1株あたり131円で、パナソニックが金融3社分を取得する場合の投資金額は4033億円。全株をTOB対象とするが、現時点での三洋の株価(216円=4日終値)を下回っているため、主要3社を除く一般株主は応募しない可能性が高い。」(前掲紙)

TOBの対象となる株式の内訳は次の通りです。

普通株式  1,872,338,099株
A種優先株式 182,542,200株 1株につき普通株式10株に転換可能
B種優先株式 246,029,300株 1株につき普通株式10株に転換可能

普通株式に発行済のA種 優先株式及びB種優先株式が全て普通株式に転換された場合の当該 普通株式の総数(4,285,715,000株)を加え、対象者が平成21年6月29日に提出した第85期有価証券報 告書に記載された平成21年3月31日現在の対象者が保有する自己株式数(16,084,021株)を控除した株式数は6,141,969,078株に相当し、買付予定数の下限である3,070,985,000株は、完全希薄化後総株式数 の過半数に相当します。

買付価格の根拠は次の通りです。

「当社は、本公開買付けにおける普通株式、A種優先株式及びB種優先株式の買付価格を平成21年9月30日に再決定するに際し買付価格の決定の参考資料として、メリルリンチに対し、対象者の株式価値算定書の提出を依頼しました。当社がメリルリンチから平成21年9月30日に提出を受けた株式価値算定書によりますと、メリルリンチは、当社が提供した財務情報、財務予測その他の一定の前提及び条件の下で、市場株価平均法、類似会社比較法及びディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(以下「DCF法」といいます。)の各手法を用いて対象者の株式価値の算定を行っており、市場株価平均法では、基準日の株価終値、基準日から1ヶ月前、3ヶ月前及び6ヶ月前までのそれぞれの期間の株価終値の平均値を使用し、本公開買付けに関する新聞報道がなされた平成20年11月1日の前営業日の平成20年10月31日を基準日とした場合、145円から227円、類似会社比較法では21円から98円、DCF法では126円から246円のレンジが対象者普通株式1株当たりの算定結果として示されておりました。
なお、当該DCF法の算定結果は当社が見込んでいるシナジー効果を含んでおります。また、この算定結果は、A種優先株式及びB種優先株式はいずれも1株当たり10株の割合で普通株式に転換することが前提とされております。なお、メリルリンチから、その株式価値算定の前提条件・免責事項等に関して補足説明を受けております。

当社は、本公開買付けにおける買付価格の検討にあたっては、市場株価平均法による評価結果が、対象者のA種優先株式及びB種優先株式の転換による希薄化を十分に反映していない可能性がある点、た類似会社比較法による評価結果が、対象者の将来の収益力及び成長性を十分に反映していない点、一方で、DCF法による評価結果が、対象者のA種優先株式及びB種優先株式の転換による希薄化を考慮している点、対象者の将来の収益力及び成長性を反映している点並びにシナジー効果を考慮している点等を勘案し、DCF法による算定結果を最も重視し、当該算定結果の範囲内で検討を行いました。当社は、メリルリンチによる算定結果に加え、平成20年12月19日以降の状況を検証するために実施した追加デュー・ディリジェンスの結果等を総合的に勘案し、平成21年9月30日に開催された取締役会において、本公開買付けにおける買付価格を普通株式1株当たり131円、A種優先株式1株当たり1,310円、B種優先株式1株当たり1,310円と決定いたしました。また、当社は、メリルリンチより、一定の前提条件の下、本公開買付けにおける買付価格が財務的見地から当社にとって公正である旨の意見書を平成21年9月30日に受領しています。 」(2009年11月4日 三洋電機株式会社株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ )

通常上場会社のバリュエーションでは市場株価が最も重視されますが、優先株式のダイリューション効果が市場株価には十分に反映されていないという理由でDCF法による算定結果を最も重視してTOB価格を決定しています。

そうするとTOB対象会社である三洋電機の取締役会がこの価格をサポートするかどうかが注目されます。

「当社取締役会において本公開買付けに対して賛同の意見を表明すること を決議しました。しかしながら、本公開買付けの買付価格は、最終的には公開買付者とエボリューション・インベストメンツ有限会社、オーシャンズ・ホールディングス有限会社、及び株式会社三井住友銀行との間での交渉により決定されたものであり、また、上記の通り、平成21年11月2日の東京証券取引所市場第一部における当社株式の普通取引終値、平成21年11月2日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値及び平成21年11月2日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値のいずれに対してもディスカウントを行った金額となります。そのため、当社取締役会は、本公開買付けの買付価格の妥当性については意見を留保し、また、普通株式の応募については株主の皆様の判断に委ねることを、併せて決議いたしました。」(2009年11月4日 パナソニック株式会社による当社株式に対する公開買付け に関する意見表明のお知らせ)

結論としては、価格については意見を留保するということです。ただし、三洋電機は、第三者算定機関より株式価値算定書と市場株価法に基づく株式価値算定の観点を除いた財務的見地からは不合理な価格ではない旨の意見書を入手しています。

【リンク】

2009年11月4日「三洋電機株式会社に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」パナソニック株式会社【PDF】
2009年11月4日「パナソニック株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」三洋電機株式会社【PDF】

吉永 M&A, TOB , ,