IFRS9号

国際会計基準(IFRS)のルール見直しを巡る欧米など多国間の覇権争いが活発になりつつある。金融危機後に20カ国・地域(G20)のお墨付きを得たことで世界の資本市場への影響力が増し、各国の利害調整が一段と複雑になっているためだ。国際基準導入にかじを切った日本はどう存在感を発揮していくべきか。最新動向を追った。
(日本経済新聞2010年1月26日)

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「欧州連合(EU)は昨年11月にも金融商品会計の新ルール適用先送りを表明。IASBは欧州の催促で金融危機関連のルール見直し作業を急いできただけに、相次ぐ反対姿勢への転換に戸惑いを隠せない」(前掲紙)

適用先送りが表明されたのは、IFRS9号です。

IFRS9号(金融商品:認識及び測定)は、従来のIAS39号に変わり2013年1月1日以降強制適用となる予定です(IFRSを適用している場合)。

IFRS9号のポイントは次の通りです。

・すべての金融資産は、当初認識時に公正価値で測定される。
・金融資産は当初認識後、以下の要件に基づき償却原価又は公正価値のいずれかで測定される。

(1) 企業が金融商品を運用する上で用いられるビジネスモデル
(2) 金融商品の契約上のキャッシュフローの特徴
・金融資産が以下の両方の要件を満たす場合には償却原価で事後測定される
(1) ビジネスモデルは、金融資産を保有し、その契約上のキャッシュフローをを回収するものである。
(2) 金融資産はその契約条件に基づき、特定日に、元本及び元本残金に対する金利のみを表するキャッシュフローを生み出す

・それ以外のすべての金融資産は公正価値で測定される
この場合公正価値の変動を損益で認識することを原則とするが、トレーディング以外の目的で保有する有価証券等を、当初認識時に、その他包括利益(日本基準の資本直入法:当期純利益を通さない。OCIと略されます)を通じて公正価値で測定される区分へ指定することを認めている。この指定は個々の金融商品(銘柄)ごとにできるが後で変更出来ない。その他包括利益で公正価値の変動を認識することを選択した場合には、その金融資産を売却したときに生じる売却損益もその他包括利益に計上される。

要するにこういうことです。

SBは償却原価法により評価する(但し公正価値(損益認識)を選択することも可能)。持ち合い株式は、公正価値により評価するが、公正価値の変動を損益計上するかその他包括利益に計上するか取得時に選択しなければならない。多くの会社は後者を選択するものと思われますが、その場合は売却益を当期純利益に計上できません。

日本のコンバージェンスの動向が気になるところですが、EUの動向を見ながら、ということになるのかもしれません。

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