国際会計基準に関する誤解

金融庁は23日、2015年にも強制適用される見通しの国際会計基準(IFRS)に絡んで誤った情報が出ているとしたうえで「同基準に関する誤解」と題する説明文書を公表した。適用時期や非上場企業への適用の有無について、わかりやすく解説している。こうした文書を金融庁が公表するのは異例だ。
(日本経済新聞2010年4月24日17面)

【CFOならこう読む】

文書でとりあげられているのは以下の論点です。

◎全般的事項
1. 上場企業は直ちにIFRSが適用される
2. 非上場の会社(中小企業など)にもIFRSは適 用されるのか
3. 全面的なITシステムの見直しが必要か
4. 社内の人材のみではIFRSに対応できないの ではないか
5. 監査人の対応が厳しくなるのではないか
6. 英語版IFRSを参照する必要があるのか
7. 財務諸表は英語でも作成する必要があるのか
8. 監査は国際監査基準で行う必要があるのか
9. 監査は大手監査法人でないとできない
10. これまでとは全く異なる内部統制を新たに整備 しなければならないのか
11. 業績管理や内部管理の資料もIFRSになるのか

◎個別的事項
1. IFRSは徹底した時価主義なのではないか
2. 持ち合い株式の時価評価により業績(当期純利 益)が悪化するのではないか
3. IFRSでは、利益の表示が当期純利益から包括 利益のみに変わるのではないか
4. 企業年金の会計処理方法の変更により、企業 の業績が悪化し、年金財政も悪化・崩壊するのではないか
5. 売上の計上にあたり、IFRSを導入すると出荷基 準が使えなくなり、期末はすべての着荷や検収の確認をしなければならないのか。また工事進 行基準は認められなくなるのか。
6. 減価償却の償却方法は定率法が全く使えなくな るのではないか

現場でよく話題になるような事項がとりあげられています。

例えば、売上の計上基準が変わるから、これに伴い全面的にITシステムを見直さなければならない、という議論。

これに対し文書はこう答えています。

3.全面的なITシステムの見直しが必要か

誤解
IFRSになると、ITシステムを含め、業務プロセス全般について全面的に見直さなけれ
ばならない。

実際
既存のシステムの全面的な見直しは、必ずしも必要ではない。

○ IFRSを適用するために必要な範囲で、システムの見直しを行えばよい。」

5.売上の計上にあたり、IFRSを導入すると出荷基準が使えなくなり、期末はすべての着荷や検収の確認をしなければならないのか。また工事進行基準は認められなくなるのか。

誤解
IFRSでは、収益の認識基準が我が国とは異なり、我が国でこれまで広く使われていた出荷基準による売上の計上が認められなくなる。

実際
現在の日本基準は実現主義であり、現在のIFRSの収益認識基準(リスクと便益の買主への移転)に照らし合わせても、ほぼ同様の結果となることが多い。例えば、取引の形態によっては、着荷や検収の事実を一々確認しなくても、出荷の事実をベースに、配送に要する期間等を考慮して、合理的にリスクと便益の移転が認められる場合、その時点で売上の計上ができる場合がある。いずれにせよ、プリンシプルに照らして、個々具体的な事例に即して適切に判断することになる。 」

要するにIFRSをネタにあることないこと言って企業からカネをむしり取ろうとする輩に騙されないように、という警句ですね。

【リンク】

「国際会計基準(IFRS)に 関する誤解」[PDF]