割引投資回収期間法

東武鉄道が1430億円を投じて建設中の新電波塔「東京スカイツリー」。開業まで1年半余り、知名度は塔の高さに比例して高まってきたが、株式市場での評価は定まっていない。「集客の持続性や、資産の約1割に当たる投資をきちんと回収できるか不透明」(国内証券アナリスト)なためだ。資金回収までどれくらいかかるのか試算してみた。
(日本経済新聞2010年7月23日13面)

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「投資の回収期間はどうか。企業は投資に際し、その事業が生み出す現金収入を。「割引率」と呼ぶ一定の値で現在価値に割り戻す手法をよく使う。例えば1年後に100万円を生む事業は、割引率を10%とすると現在価値が約90万9000円。投資額と見合うのに、この現在価値を何年分足し合わせたらいいかを回収期間とみなす。

ポイントは割引率をどう設定するかだ。ツリーの現金収入が開業初年度から年間82億円と仮定し、不動産の超優良物件で使われることの多い3%の割引率で試算すると、回収期間は25年。鉄道新線の一般的な回収期間40年を下回る。東武もこの近辺の回収期間を見込んでいるとみられる」(前掲紙)

投資回収期間を、割引キャッシュフローにより計算する方法を割引投資回収期間法と言います。

普通の投資回収期間法の欠点として、

1.回収期間経過後のすべてのキャッシュフローを無視してしまう。
2.回収期間経過以前のキャッシュフローをすべて等しく取り扱っている。

の2つが挙げられますが、割引投資回収期間法によれば2の欠点が解消されます。

しかし1の欠点は依然として残ります。

このことについて、ブリーリー/マイヤーズの”コーポレートファイナンス”は次のように指摘しています。

「投資回収期間は、投資プロジェクトを説明するのに容易な方法である。投資家が高い株価収益率(P/E)の株式について話すのと同様に、担当者は早い投資回収期間について平易に語ることができる。担当者がプロジェクトの投資回収期間について語るということは、それによって判断をしているということではない。しかし、投資判断の際、投資回収期間を本当に使用している担当者もいる。その理由は不明である。おそらく、そうした担当者はずっと将来のキャッシュフロー予測を信じておらず、その不満から投資回収期間より先の予測をすべて放棄すると決めたのだろう」

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