エンべディッド・バリュー(EV)

4月に上場した第一生命保険の株価が低迷している。26日には一時、上場来安値の98,800円を付け、終値でも99,600円と初めて10万円台の大台を割った。世界的な株安基調が続くなかで、市場では「企業の不安材料に目が向かいやすくなっていることが株価の重荷になっている」との指摘が出ている。
(日本経済新聞2010年8月27日4面)

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「もっとも日本株全体の下落傾向が続くなかで、企業の業績を離れ、不安材料に過剰に反応しやすくなっている面も否定できない。
例えば、一般にはほとんど知られていないが、生保の企業価値を示す独自指標であるエンべディッド・バリュー(EV)をみると、第一生命のEVは2兆1000億円程度。時価総額(9,960億円、26日終値)の2倍以上に上り、EVからみれば、現在の株価は割安とも判断できる」
(前掲紙)

EVとは次のよう価値指標です。

「エンベディッド・バリューは、生命保険会社が現在保有する総資産と保険契約に基づき、株主に帰属すると考えられる配当可能利益の現在価値を計算したものであり、貸借対照表などから計算される「修正純資産(注1)」と保有契約に基づき計算される「保有契約価値(注2)」を合計したものであり、生命保険会社の企業価値を表す指標の一つです。現行の生命保険会社の法定会計では、新契約獲得から会計上の利益の実現までに時間がかかります。一方、エンベディッド・バリューでは将来の利益貢献が新契約獲得時に認識されるため、法定会計による財務情報を補強することができると考えられています。

(注1)修正純資産=純資産の部計(基金、評価・換算差額、社外流失予定額を除く)+負債中の内部留保(価額変動準備金、危険準備金、配当準備金中の未割当額)(税引後)+一般貸倒引当金(税引後)+有価証券等(デリバティブ取引を含む)の含み損益(税引後)+土地の含み損益(税引後)+貸付金の含み損益(税引後)-退職給付の未積立債務(税引後)
(注2)保有契約価値=将来の税引後利益の現在価値-資本コストの現在価値「資本コスト」は前提とするソルベンシー・マージン比率を維持していくために必要な資本等の額に対して割引率と運用利回りの差から生じる利息差です。」(http://www.dai-ichi-life.co.jp/support/glossary/term0194.html

ヨーロッパでは、大手保険会社のCFOから構成されるCFOフォーラムによって2004年5月に制定されたヨーロピアン・エンベディッド・バリュー(EEV)原則があり、これに基づきEEVの計算・開示が行なわれています。

日本でも例えばT&Dホールディングスは、EEV原則に基づきEVを計算し定期的に開示を行なっています。
この開示資料を見るとT&DホールディングスがどのようにEVを計算しているかかなり詳細な説明がなされています。

【リンク】

2010年5月19日「平成 22 年 3 月末ヨーロピアン・エンベディッド・バリューの開示について」株式会社T&Dホールディングス [PDF]