日本経済回復への道標

再び失望を招く日本経済


4~6月期再びマイナス成長に陥った日本経済。高すぎる輸出依存度を解消するため、内需の喚起が必要であることは自明の理である。しかし実現への議論さえいまだ始まっていない。
-スミザーズ・アンド・カンパニー会長 アンドリュー・スミザーズ氏

(日経ヴェリタス 2008年9月28日 26面

【CFOならこう読む】

スミザーズ氏は、次のように、日本経済が上向かない理由が構造的な不均衡にあると指摘しています。


「日本は過去数年にわたる限定的な経済成長を輸出と企業の設備投資に依存してきた。個人消費が弱すぎる一方、企業の設備投資が多すぎるというようにバランスが悪いため、内需は低迷したままだ。日本企業による国内投資のGDP比率は米国企業よりも50%上回っている。それが正当化されるのは日本が米国に比べて相当高い成長を遂げている場合だが、実際は逆に米国の成長をはるかに下回っている。日本企業の投資は成果を生まず、大半が無駄に使われている。その結果、投資収益率も低いままだ。
中国を含む世界経済が減速してきたことで、日本経済の輸出依存度の高さは慢性的というより差し迫った問題になってきた。日本は内需を喚起する必要がある。投資が過大で輸出依存度が高いことを考えれば、消費を通じて内需拡大を達成しなければならない。
消費拡大を実現するには、家計の所得を増やすか、あるいは貯蓄率を減らすしかない。しかし貯蓄率は既に過去10年間で11%から3%に低下している。今後さらに下がる可能性はあるものの、景気を押し上げるほどの大幅な低下余地があるとは思えない。このため消費拡大には所得増加が必要になるが、所得増加が必要になるが、所得も伸び悩んでおり、GDPに対する所得比率は他の主要国よりも低い水準だ。」

内需喚起のためには、企業の利益を減らしその分賃金引き上げるしかない、という安直な議論があります。先週末久々に”朝まで生テレビ”を見ましたが、民主党の議員がそのようなことを力説していました。しかし、そんなことをすれば、スミザーズ氏が言うように、「企業の利益が減れば、設備投資が急激に落ち込み、経済全体としては低迷する。」ということになります。

結局、日本経済の構造的問題を解決する方策は、野口悠紀雄氏が言う”資本開国”しかないように思います。


「外国企業による直接投資が投資受入国の経済成長を促進したことは、多くの研究で明らかにされている。OECDのデータによると、国内企業と進出外国企業の労働生産性を比較すると、総じて進出外国企業の水準が高いことが示されている。先進国中では労働生産性水準が下位に位置する日本はもちろんのこと、労働生産性水準が高いアメリカ、フランス、オランダといった国でも同様の結果が示されている。日本に外国企業が進出してくれば、労働力の移動や企業間競争の促進を通じて、日本経済の労働生産性向上に寄与するだろう。」(「資本開国論」野口悠紀雄 ダイヤモンド社)

我々一人ひとりが、外国企業を受け入れるために何をなすべきかを、真剣に考えるときが来ているように私は思います。と同時にそういう時代が来ることを前提にCFOは今から準備する必要があると思います。

【リンク】

資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略
野口 悠紀雄

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