武井工業所、フェニックス銘柄へ

武井工業 株価低迷で基準割れ ジャスダック上場廃止へ

ジャスダックに上場するコンクリート製品製造の武井工業所は18日、時価総額で算定する上場基準の維持が困難になり、日本証券業協会の「フェニックス銘柄」に移行する方針を固めた。株価が低迷し、期限内に時価総額が上場廃止基準の5億円を回復することが難しいと判断した。ジャスダックが取引所に移行した2004年12月以降で、時価総額基準により上場廃止になるのは初めて。
(日本経済新聞 2008年9月19日 14面)

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武井工業所は、時価総額が昨年12月に初めて上場廃止基準の5億円を下回りました。上場維持には9月末までに月末と月間平均の両方で5億円を上回る必要がありますが、18日時点で2億2千万円しかなく、少なくとも月間平均での基準割れがほぼ確実な情勢であるため、今日19日の取締役会で「フェニックス銘柄」への移行を決定するとのことです。

ところで「フェニックス銘柄」とは何でしょう?

フェニックス銘柄とは、日本証券業協会が、金融商品取引所の上場廃止銘柄を売買するために、平成20年3月31日からスタートさせた制度です。

「金融商品取引所を上場廃止となった銘柄の発行会社は、金融商品取引法等により開示が義務付けられている上場企業に比べて、企業内容の開示が十分に行われていないところが多いため、日本証券業協会では、非上場企業が発行する有価証券について、証券会社が投資家に対して投資勧誘を行うことを原則として禁止しています。
したがって、上場廃止になった銘柄は、上場廃止時点で換金機会がいちじるしく低下します。
さらに、本協会の規則により、非上場銘柄は原則として証券会社による投資勧誘が禁止されているため、投資家は証券会社を経由して売却先を探すことができず、特に、自力で売却先を探すことのできない個人投資家は、当該企業が再生を果たし再上場するまでの間は、当該株券を保有し続けるといった消極的な対応を求められるのが現状でした。そのため、既存株主の換金の場として、フェニックス銘柄制度が創設されました。

なお、フェニックス銘柄の位置づけとしては、日本証券業協会の自主規制規則(「店頭有価証券に関する規則」)で定める店頭取扱有価証券のうち、金融商品取引所を上場廃止となった銘柄で、かつ、証券会社が日本証券業協会に対して届出を行った上で、その証券会社が継続的に売り気配・買い気配を提示している銘柄のことをいいます。」
(日本証券業協会 ウェブサイトより)

武井工業所は平成19年6月30日現在、773名の個人株主がいます。この数が、上場廃止を目前に控えた現時点でどの程度まで減少しているかわかりませんが、売却機会を逸した株主が少なからず存在することは十分に考えられ、フェニックス銘柄へ移行することで、そういう人に対して、上場廃止後も売却機会を提供できることになります。

余談ですが、フェニックス銘柄の場合も監査は必要です。

「フェニックス銘柄の場合には、直前事業年度の財務諸表及び連結財務諸表について公認会計士又は監査法人により金商法に準ずる監査が行われ、又は計算書類等について会社法に基づく会計監査人による監査若しくはこれに準じる監査が行われ、かつ、その総合意見が適正又は適法である旨の監査報告書が、記載されている財務諸表若しくは連結財務諸表又は計算書類等に添付されていること。」
(日本証券業協会 ウェブサイトより)

【リンク】

平成20年3月24日「当社株式の時価総額及び今後の展開等について」株式会社武井工業所