政府税調。「雇用促進税制検討」へ

政府税制調査会は2011年度からの創設を目指す「雇用促進税制」について、雇用を増やした企業に対する法人税の税額控除を導入する検討に入る。成長企業の雇用増加を後押しする狙い。併せて、雇用を増やしたと偽って減税を受ける不正を防ぐため「雇用保険」制度を活用する方向だ。
(日本経済新聞2010年11月18日1面)

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「ザ・ワーク・オブ・ネーションズ」、「勝者の代償」の著者で、クリントン政権で労働長官も務め、また現在はオバマ政権の政策アドバイザーを務めるロバート・B・ライシュの「暴走する資本主義」(Supercapitalism)は現代資本主義の特質を次のように説明しています。

「1970年代以降、資本主義の暴走、つまり超資本主義と呼ばれる状況が生まれたが、この変革の過程で、消費者および投資家としての私たちの力は強くなった。消費者や投資家として、人々はますます多くの選択肢を持ち、ますます「お買い得な」商品や投資対象が得られるようになった。
しかしその一方で、公共の利益を追求するという市民としての私たちの力は格段に弱くなってしまった。労働組合も監督官庁の力も弱くなり、激しくなる一方の競走に明け暮れて企業ステーツマンはいなくなった。民主主義の実行に重要な役割を果たすはずの政治の世界にも、資本主義のルールが入り込んでしまい、政治はもはや人々のほうでなく、献金してくれる企業のほうを向くようになった。
私たちは「消費者」や「投資家」だけでいられるのではない。日々の生活の糧を得るために汗する「労働者」でもあり、そして、よりよき社会を作っていく責務を担う「市民」でもある。現在進行している超資本主義では、市民や労働者がないがしろにされ、民主主義が機能しなくなっていることが問題である。
私たちは、この超資本主義のもたらす社会的な負の面を克服し、民主主義より強いものにしていかなくてはならない。個別の企業をやり玉に上げるような運動で満足するのではなく、現在の資本主義のルールそのものを変えていく必要がある。そして「消費者としての私たち」、「投資家としての私たち」の利益が減ずることになろうとも、それを決断していかなければならない。その方法でしか、真の一歩を踏み出すことはできない。」

相対的に弱くなっている「労働者」の立場を護るために「雇用促進税制」を導入することは一定の意義があるとは思います。

昨日の税調の配布資料を見ると、「雇用促進税制」の基本的な位置づけが次のように説明されています。

「◯雇用の受け皿となる成長企業を支援し、雇用が拡大することにより、消費需要が刺激され、成長に繋がる好循環を実現するというマクロ経済的な効果を発現させるため、本税制措置を成長企業の雇用拡大を支援するものと位置づける
◯既存の助成金は就職困難者等の支援や厳しい状況下での雇用維持が中心となっており、上記のように成長企業の雇用拡大支援と位置づけることにより、助成金との役割分担を明確化。」
「雇用促進税等PT経過報告」内閣府税制調査会 [PDF]

いまの日本にとって雇用が最重要課題であることは間違いありません。

ですから「雇用促進税制」を導入するのも良いとは思います。

しかしより重要なのは、日本で活動する企業(当然外国の企業が含まれます)を増やすことです。
特に外国の企業を日本に誘致する政策を戦略的に講ずるべきです。

そのためには規制緩和、インフラ整備そのほかやるべきことは山ほどあります。

また労働者自身(特に若い人)は、そういう時代がやってくることを見据えて、自らを鍛える必要があると思います。

【リンク】

「雇用促進税等PT経過報告」内閣府税制調査会 [PDF]