アイルランド法人増税は見送り

EUとIMFに金融支援を要請したアイルランドのカイエン首相は24日、2014年まで4カ年の財政再建計画を発表した。歳出削減や付加価値税率引き上げなど歳入増加策で財政赤字を14年に150億ユーロ(約1兆6500億円)削減する。焦点だった法人税率の引き上げは見送った。これによりEU・IMFからの金融支援実現に向け前進。次の焦点は銀行再建策を巡る協議に移る。
(日本経済新聞2010年11月25日7面)

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「法人税率は据え置く。欧州主要国で最低水準の12.5 %にとどまっているため欧州各国は引き上げを求めていたが、低い法人税で外資を誘致するアイルランドのモデルは成長戦略上欠かせないと判断した。

これまでアイルランドは英語やユーロが使えることと併せ、欧州最低水準の法人税率を売り物に日米欧の企業を呼び込んできた。ダブリン郊外には複数の企業団地があり、日本企業も武田薬品工業やアステラス製薬が拠点を構える。信用不安で弱含む足元の経済は堅調な輸出が支えている」
(前掲紙)

企業誘致したいEU各国としては、この機に乗じてアイルランドに税率引き上げを迫りたいというのが本音でしょう。

しかし、先日のグーグルのポスト「2010年11月11日 グーグル、海外での実効税率2.4%」でもお話ししたように、アイルランドはダブルアイリッシュといったスキームにより、多くのグローバル企業の世界戦略の中で重要な位置を占めるに至っており、国家の都合だけで動かすことはもはや不可能です。

結局財政再建計画の中心は、社会保障費の削減、付加価値税率の引き上げや所得税の見直し、資産課税強化といった個人負担増に偏る形になっています。

そしてそれは、日本でも将来同じことが起こるかも知れないという意味で、とても人ごととは思えません。

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