伊藤園の優先株、実態以上の割安水準?

伊藤園が、議決権がない代わりに配当額が多い優先株を発行して3年あまり。普通株より高い配当利回りに着目した個人を中心に株主の裾野が広がるなど成果は出ている。だが認知度は上がらず売買の流動性も高くない。
(日経ヴェリタス2011年1月24日14面)

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昨年12月27日に、伊藤園は優先株の自社株買いと消却を行うことをリリースしました。その内容は次の通りです。

◯取得に関する条項

取得に関する株式の種類 当社第1種優先株式
取得し得る株式の総数 300,000株(上限)
取得価額の総額 350百万円(上限)
取得する期間 平成22年12月28日から平成23年2月22日まで

◯自己株式の消却について

消却する株式の種類 当社第1種優先株式
消却する株式の総数 900,000株(予定)
消却後の発行済株式総数 34,346,962株(予定)
消却予定日 平成23年3月31日

「自社株買いや金庫株消却は株価の買い材料になるはずだが、翌28日の優先株は992円で前日比12円高どまり。最初に優先株自社株買いを発表した2009年12月のときに翌日の優先株の株価が8.2%も上昇したのと比べると反応は鈍い」(前掲紙)

記事では実態以上に優先株が割安になっている可能性があると、次のような分析を行っています。

「普通株の株価は1400円で優先株は1014円(21日終値)。普通株の1株利益は約53円でPERは26.6倍。配当が10円多い優先株の1株利益は約63円になり、PERが普通株と同じと考えれば優先株の理論株価は1675円になる。つまり実際の株価との差(661円)が議決権に相当する部分と考えられる。議決権部分が普通株に占める割合は47%。上場直後はこの比率が12%だったので、結果的に優先株の経済価値部分が大きく目減りしたことになる」」(前掲紙)

日本企業の議決権の価値は外国企業に比べ相対的に高いという分析も存在しますが(2008年7月19日「無議決権株の価格」)、後に続く会社が出てこない現状では、議決権の客観的な価値評価を行うことは出来ません。

したがって、伊藤園の優先株の価格形成の妥当性は良くわからない、というのが今日の記事の結論です。

【リンク】

2010年12月27日「伊藤園の優先株、実態以上の割安水準?」株式会社伊藤園 [PDF]