JAFCO、ファンド「非連結」に

JAFCO、ファンド「非連結」に VC決算方法、新旧が併存 あいまいな基準、投資家混乱も

ベンチャーキャピタル(VC)が運営するファンドの決算処理方法を巡る議論が活発になってきた。大手VCのジャフコが業界標準となっているファンド連結型の決算方式を見直し、2009年3月期からファンドを連結しない方式に切り替えると表明したからだ。同社の動きをきっかけに既存のVC決算の問題点が浮かび上がっている。
VC各社は2006年秋に企業会計基準委員会が公表した新ルールに基づき、運営するファンドを子会社として連結する新方式を事実上、裏付けられた。ライブドア事件後、企業が運営するファンドの実態を明瞭にすべきだとの声が強まったことが背景にある。

(日本経済新聞 2008年7月11日 16面)

【CFOならこう読む】

記事の、2006年秋に企業会計基準委員会が公表した新ルールとは、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第20号)を指しています。

基準は次の場合に業務執行者(営業者)が投資事業組合は業務執行者の子会社に該当するものとしています。

(1) 当該投資事業組合の業務の執行を決定することができる場合
(2)当該投資事業組合の業務執行の権限全体のうち、その100分の40以上、100分の50以下を自己の計算において有している場合であって、かつ、次のいずれかの用件に該当する場合

自己の計算において有している業務執行の権限と緊密な者及び同意している者が有している業務執行の権限とを合わせて、当該投資事業組合に係る業務執行の権限の過半の割合を占めていること
当該投資事業組合の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること
当該投資事業組合の資金調達額(貸借対照表の負債に計上されているもの)の総額の概ね過半について融資を行っていること
当該投資事業組合の資金調達額(貸借対照表の負債に計上されているものに限らない)の総額の概ね過半について融資及び出資を行っていること
当該投資事業組合の投資事業から生ずる利益又は損失の概ね過半について享受又は負担することになっていること
その他当該投資事業組合の財務及び営業又は事業の方針の決定を左右すると推測される事実が存在すること

(3) 自己の計算において有している当該投資事業組合に係る業務執行の権限と、緊密な者及び同意している者が有している業務執行の権限とを合わせて、当該業務執行の権限の過半の割合を占めているときであって、かつ、上記(2)の②から⑥までのいずれかの要件に該当する場合

記事にもあるように、この基準はライブドア事件を受けて新たに制定された規準です。ところで、最近ライブドア事件の判決文を読みました(判例時報 2008年7月1日号)が、もともと最初にファンドを利用した動機は、堀江の貸株の事実を隠蔽することにあったようです。その後ライブドアは、ファンドを自社株売却益を還流させる道具として使ったわけですが、ライブドアに限らず、多くのファンドの存在が企業の実態を見づらいものにしている、又はそもそも見えなくすることを意図して作られていることは事実です。

しかしこのような目的で作られたファンドとVCが運営するファンドを一律に規制することには明らかに無理があります。VCが運営するファンドは隠れ蓑として作られるわけではなく、共同投資の箱として利用されるにすぎないのです。

であるなら、「金融商品会計に関する実務指針」第132項の通り持分相当の損益を取り込めば十分で、これをあえて連結対象とすべきでないというJAFCOの言い分はもっともであると、私は思います。

【リンク】

判例時報 2008年 7/1号 [雑誌]
B001BJGMEW