伊藤園の優先株 上場半年、普通株より3割安続く

伊藤園が普通株と別に東京証券取引所に上場している「無議決権優先株」の株価が上場半年を過ぎても軟調に推移している。国内初の試みとして注目を集めたが、株価は普通株より3~4割安い水準のまま。議決権が無いことで割安に放置されているのか、投資家が優先株に及び腰なのか。背景を探ってみた。
(日経ヴェリタス 2008年4月20日 16面)

【CFOならこう読む】

記事では普通株と優先株の流動性の価値が同じであると仮定して、同じPER(18日終値ベース)で試算した議決権の価値を799円(普通株の株価の43%)と計算しています。

この計算は、当ブログで9月4日に説明したのと同様のものであると思われます。
https://cfonews.exblog.jp/6398916/

ただしこの計算だけをもって議決権の価値を推定することはできません。伊藤園の優先株の流動性は低水準であり、流動性ディスカウントを考慮する必要があるからです。

非流動性ディスカウントに関して、米国では制限付き株式(公開企業が発行するSECには登録されない株式)を検証することにより次のような研究結果が得られています。

1.マーハーは1969年から1973年の間に4つのミューチュアルファンドが購入した制限付き株式を調査した結果、同じ企業の公開株に対する平均割引率は35.43%であると結論づけている。
2.1970年以降のデータを使ったもろにーの調査によれば、10社の投資会社が購入した146銘柄の制限付き株式の平均割引率は35%である。
3.ジルバーは1984年から1989年にかけて発行された制限付き株式を調査し、割引率のメジアンが33.75%であることを見出した。
(資産価値測定総論3 アスワス・ダモダラン著 山下恵美子訳 Pan Rolling)

ということは上で計算された価値の大半は流動性の価値なのかもしれません。いずれにしてももう少し事例を重ねる必要がありそうです。

【リンク】

資産価値測定総論3―非公開企業から不動産、金融派生商品まで (ウィザードブックシリーズ 133)
アスワス・ダモダラン 山下恵美子
4775970992