コージツ、TOBに反対意見

登山用品コージツは16日、独立系投資ファンドのDRCキャピタルによるTOBに対し、反対意見を表明した。
(日本経済新聞2011年8月17日13面)

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会社は、第三者委員会による答申を踏まえた上で、本公開買付価格130円は低廉であり、かつ本公開買付けが会社の企業価値の向上に資 するとはいえないと判断し、平成 23 年8月 16 日開催の取締役会において、出席取締役全員の一致により、 本公開買付けに対して反対の意見を表明すること、並びに、当社の株主及び新株予約権の保有者の皆様に対し本公開買付けへの応募を推奨しないことを決議しました。

会社は、意見表明の参考とするために、アーンストアンドヤング・トランザクション・アドバイザリー・サービス(以下「EYTAS」)及び前田公認会計士事務所(以下「前田事務所」といいます。)から株式価値算定報告書を受領しています。

両者の算定結果は以下の通りです。

EYTAS による株式価値算定
市場株価法 106 円から 128 円
DCF 法 116 円から 173 円
類似会社比準法 119 円から 128 円

前田事務所による株式価値算定
市場株価法 92 円から 110 円
DCF 法(第1案) 154 円から 182 円
DCF 法(第2案) 96 円から 124 円
類似会社比準法 74 円から 93 円

(注)会社は2種類の事業計画(平成25年11月期まで3ヶ年計画)を両者に提出している(第2案は保守的な事業計画)

第三者委員会は、両者の算定過程に不合理な点はないとした上で、独自にDCF法により価格の算定を行い、その価値は147円を下回るものではないと判断し、8月10日に、公開買付者に対し価格の是正の申し入れを行ったところ、公開買付者はこれを拒否したとのことです。

第三者委員会の評価の下限147円は、EYTASの評価の下限116円を大きく上回るものとなっています。この点について、第三者委員会の答申書は、次のように説明しています。

(1) 新規出店店舗が正常収益に達するまで3期程度要するとのマネジメントに対するヒアリング結果を受け、正常収益に達する平成27年11月期まで事業計画を延長した(EYTASも同様の調整を行っている)
(2)追加リスクプレミアム(小規模リスクプレミアムと思われる)について、Ibbotson Association社のサイズリスクプレミアを、算定上採用されているベータと、対象となる企業が属する階級の平均ベータの相違に応じて調整したものを採用した

会社は、この答申を受けて、

「当社が「業績予想の修正に関するお知 らせ」を公表した平成 23 年6月 23 日の翌営業日である同月 24 日から本公開買付け公表直前の平成 23 年7月 21 日までの JASDAQ 市場における当社の株式の終値の単純平均値(113.4 円(小数点以下第二 位四捨五入)に対する本公開買付価格のプレミアムは 14.6%(小数点以下第二位四捨五入)となり、 第三者委員会の意見において当社の株式価値の下限とされている 147 円で算定されるプレミアム 29.6%(少数点以下第二位四捨五入)と比較しても十分でないことから、本公開買付価格は低廉である との結論に至りました。」

としています。

要するにプレミアムの水準が低過ぎるからもっと価格を上げなさい、と言っているわけです。
第三者委員会の評価147円もプレミアムの水準30%をサポートしたものと見るのは穿ち過ぎでしょうか?

いずれにしても、買収者の濫用性が問われた過去の敵対的TOBと異なり、価格の妥当性が焦点となっています。価格の妥当性は最終的に株主が判断すべきであり、コージツの経営陣が出来ることはホワイトナイトを探してくることしかないように思います

(ちなみにコージツは買収防衛策を導入していません)。

【リンク】

2011年8月13日「第三者委員会 答申書」

2011年8月16日「投資事業有限責任組合 DRCKJ 及び投資事業有限責任組合 DRCIIによる 当社株券等に対する公開買付けに関する反対の意見表明のお知らせ」株式会社コージツ [PDF]