自己株の任意売却による100%親会社の変更 – アビバのケース

スリープログループは31日、連結子会社で資格取得支援事業を手がけるアビバの株式をリンクアンドモチベーションに譲渡することでリンク側と合意したと
発表した。譲渡額は9億8千万円。
(日本経済新聞2011年8月31日7面)

【CFOならこう読む】

「アビバは6月、スリープロへの貸付金の返済が滞ったことを理由に自社株を売却。スリープロはこの株式売却が無効だとしてアビバ、リンクと協議していた」(前掲紙)。

本件の経緯について、スリープロのプレスリリースより抜粋します。

「当社は、従来から、連結子会社である株式会社アビバより、グループ間の資金の有効活用の為、借入を行っており、当連結会計年度に入り、アビバの要請に基づき、同借入債務を担保するため、 当社保有のアビバ株式にアビバを質権者とする質権設定契約を締結しておりました。
このような状況の中、リンクアンドモチベーションより、平成 23 年 6 月 11 日付でアビバの全 株式を取得し、子会社化した旨が公表されました。
また、アビバより、同株式について質権を実行し同株式をリンクアンドモチベーションに任意 売却した旨の質権実行通知書が平成 23 年 6 月 13 日付で送付されてきておりました。
当社としては、質権設定契約に定められた質権実行事由が存在せず、上記の質権実行は無効で あり、依然として当社がアビバの一人株主であるとの認識のもと、当社はアビバ及びリンクアンドモチベーションに対し、アビバ株式の帰属に関し、法的措置も検討し協議を進めて参りました。

その後、当社は、平成 23 年6月 30 日付で当社平成 23 年 10 月期第2四半期報告書提出後、交 渉を長期化させることによる、双方の企業価値の毀損等を避けるため、また、早期の解決による 本業への経営資源の集中、費用の削減等の必要性を総合的に勘案した結果、和解協議を行うこと が合理的であると判断し、アビバ及びリンクアンドモチベーションとの間で、平成 23 年 8 月 30 日、当社保有のアビバ株式について、上記アビバによる質権実行により、リンクアンドモチベー ションが取得するに至ったことを共通の理解とする旨の合意に至りました。

かかる合意により、当社、アビバ及びリンクアンドモチベーションは、アビバによる質権実行 に伴いリンクアンドモチベーションがアビバの全株式を平成 23 年6月 11 日付で取得したことを 確認いたしました」
2011年8月31日「子会社株式(株式会社アビバ)の異動、特別利益の発生について及び通期業績予想の修正に 関するお知らせ」スリープログループ株式会社 [PDF]

つまりアビバは質権実行により自己株を任意売却し、貸付金の返済に充てたということです。
質権実行事由が存在したか否かで認識の相違があったが、スリープロとしては任意売却を認めたということです。

100%の親会社の変更のスキームとして使えるかもしれません。

【リンク】

2011年8月31日「子会社株式(株式会社アビバ)の異動、特別利益の発生について及び通期業績予想の修正に 関するお知らせ」スリープログループ株式会社 [PDF]