CFOの仕事 ー アンリツのケース

上場企業は2013年月期に全体で2割を超す経常増益となる見通しだ。東日本大震災やタイ洪水の影響がなくなることが大きいが、独自の取り組みで苦境を脱した企業も目立つ。「復活企業」の道のりをたどる。
(日本経済新聞2012年5月23日13面)

【CFOならこう読む】

「倉庫にある在庫の山を直視してほしい。管理を徹底しないと我々は生き残れない」。2008年4月、CFOだったアンリツの橋本裕一専務(現社長)は会議で訴えた(前掲紙)

メーカーの場合、製造と販売のどちらかの発言力が相対的に強い企業が少なからず見受けられます。アンリツの場合は製造が強い会社であったようです。そうすると売れないのは販売部門の責任、ということで在庫が増えていくことになります。

「現場の説得に橋本氏が使ったのが棚卸し資産回転率(売上÷期末棚卸資産)という財務指標だった。回転率が高いと業績が拡大し、低下すると不採算在庫の処分損が発生して赤字転落ー。橋本氏はそんな実態を示し、在庫の効率化を訴えた。
あわせてマーケティング部門と研究開発・生産部門を一本化。需要動向を開発や生産に直接反映できるようにした。
効果は程なく現れる。各部門の連携で生産計画が需要に即したものとなり、在庫の削減に成功。リードタイムも短くなった。2008年3月期に4.9回だった棚卸資産回転率は2012年3月期には6.3回へと上昇した。」(前掲紙)

重要なことは、いかにキャッシュを創造するか、です。

いくら在庫を減らしても、商機を失って売上を大きく減らしたら元も子もありません。従って資産回転率を数値目標として設定するだけでなく、資産回転率を上げるための方策を具体的に示すことがCFOの仕事です。そして目標値と実績を睨みながら各部門と改善策を徹底的に話し合う、といった努力を日常的に続けて行く必要があります。

財務数値を決算取締役会で1年に1回結果だけ並べる会社が少なくないですが、そんな数値に意味はありません。財務数値を”生かす、活かす”ためには、これを経営のツールとしなければ、いけない、今日の記事を読んで、そんなことを考えました。

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