キリンHD、株主還元1200億円

15日に2013年から15年までの中期経営計画を発表したキリンホールディングス。説明会で三宅占二社長は、海外M&Aによる成長より、既存事業の拡大と株主への還元を強化する考えを強調した。
(日経ヴェリタス2012年10月22日14面)

【CFOならこう読む】

中期経営計画の数値目標は次の通りです。

【定量目標】
• 平準化※EBITDA:年平均1桁台半ば(%)の成長
• 平準化※EPS:年平均1桁台後半(%)の成長

【定量ガイダンス】
• 2015年グループ連結売上高23,000億円以上、営業利益1,800億円以上なお、本中期経営計画より売上高・営業利益ガイダンスについては1年毎にアップデートする

※平準化:特別損益等の非経常項目を除外し、より実質的な収益力を反映させるための調整
平準化EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 + のれん償却額 + 持分法適用関連会社からの受取配当金
平準化EPS = 平準化当期利益 / 期中平均株式数
平準化当期利益 = 当期利益 + のれん等償却額 ± 税金等調整後特別損益

売上高、営業利益は数値目標としては掲げず、【ガイダンス】として位置づけている点が特徴的です。

「今回の中計で三宅社長が強調したのが「(自力で成長する)オーガニック成長シフトの3年」。
これまでM&Aで成果を示せず、投資家の信頼を失ってきたからだ。」(前掲紙)

例えば、キリンが、ブラジルの飲料大手「スキンカリオール」を39億5000万レアル(約1988億円)で買収すると発表した直後の2011年8月8日に、フィナンシャル・タイムズはこの買収について疑問呈した”Schincariol bid raises questions for Japan Inc”という見出しの記事を掲載しています。

この記事の中で日本企業の海外企業買収について見られる一般的な傾向として次のような鋭い指摘を行っています。

The tendency to overpay without securing full ownership and repent at leisure has a long history.

意訳するとこんな感じです。

100%経営権を取得しないような案件に大金をつぎ込んで、あとでくよくよと後悔することを日本企業は長い間繰り返している。

失敗する理由としては、海外企業の買収におけるデューデリジェンスやストラクチャリングに今ひとつ長けていないことを挙げ、外部の投資銀行やコンサルタントをメンバーに加えたスペシャルチームを作る必要性を指摘しています。

これって、多くの日本企業にとって、海外案件だけじゃなく、国内案件にも当てはまる話じゃないでしょうか?!

【リンク】

2012年10月15日「『キリン・グループ・ビジョン2021」および「キリングループ2013年‐2015年中期経営計画』を策定」キリンホールディングス株式会社