許せぬ減配

今年も株主総会の季節がやってきた。2009年3月期は東証1部上場企業の3社に1社が減配あるいは無配となり、10年3月期は約4割が減配・無配の方向だという。「許せる減配・許せない減配がある」。ある外資系運用会社の幹部が話していた。
許せない減配とは何か。この幹部によると、株主が積極的に要求しているわけでもないのに、買収防衛策を導入し、株式の持ち合いを進めながら、保有株の大幅な値下がりで減損処理が必要になって減益幅が拡大し、配当を削減するような企業だという。
どこにこんな例があるのかと主な企業の決算短信を調べてみると、日本の代表的企業も含めてかなり多い。「空前の危機だから仕方がない」と理解を求めるのだろうか。日ごろは「100年に1度の危機など大げさだ」とマスコミの論調を批判する経営者も、不満一杯の株主の前ではこの表現を使うらしい。
(日本経済新聞2009年6月日13面 一目均衡)

【CFOならこう読む】

そんな会社がどこであるか言わない貴方も腰が引けている、と僕は言いたい。

そんな会社は例えば新日鉄でしょう。
経常利益3,361億円に対し、投資有価証券評価損が684億円。

当期末の1株当たり配当金は1円、前期実績6円に対し5円の減配となりました。

その理由を会社は次の通り説明しています。

「当期末の1株当たり配当金につきましては、平成21年3月期第3四半期決算公表時点においては、景気減速に伴う生産・出荷の変動や株式市場の低迷による投資有価証券評価損等の変動リスクが大きく、経営環境の先行きが不透明であることから、未定とさせて頂いておりましたが、年度決算が確定したことから、一株につき1円(年間配当金としては、前期に比し5円減配の一株につき6円:連結配当性向24.4%、単独配当性向34.7%)とし、株主総会に提案させて頂くことと致しました。
なお、当期末の剰余金配当につきましては、下半期の連結純損益が赤字となりましたが、急激なマクロ経済環境悪化の影響を大きく受けたこと及び当社の内部留保の状況を踏まえ、株主への利益還元の観点から、当期に関しましては配当を実施することと致しました。 」

「それにしても、一般の個人株主は「企業は従業員や顧客、取引先、地域社会など多様なステークホルダーのものだから」と言って、経営者が打ち出す減配要求を黙って受け入れるしかないのだろうか。」(前掲紙)

一般投資家ができること、それはそんな会社の株は売り払ってしまうことです。
そしてそんな会社の株は二度と買わないことです。

【リンク】

2009年4月28日「剰余金の配当に関するお知らせ」新日本製鐵株式會社[PDF]