社外取締役の役割強化を

川崎重工業の取締役会は6月13日、社長はじめ3人の代表取締役を解任した。報道によると、3人は三井造船との統合交渉を推進していたが、他の10人の取締役はこれに否定的であったという。
 この解任劇について、世間の評価は分かれている。一方には、取締役会が監督機能を果たした例として前向きに評価する立場がある。他方、解任当時の川重の取締役会は社内出身者だけで構成されていたため、取締役の多くが会社全体の利益ではなく、出身部門の利益を代表して行動したのではないかと疑われ、解任には説得力が乏しいとの意見もある。
(日本経済新聞2013年7月16日18ページ経済教室大杉謙一中央大学教授)

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「多くの事業部門からなる企業は、取締役会に社外取締役を置くべきである。もっとも、社外取締役を選任するだけでは問題は解決しない。先に述べたように、経営者と社外取締役の緊張関係の中で舵取りが行われることが理想である。そのためには、社外取締役の役割を明確にし、必要な情報を社外取締役に提供することが欠かせない。」(前掲稿)

取締役会の決議事項の多くは、物的資本の拠出者に対する人的資本の拠出者の利益相反的要素を含みます。それゆえ、物的資本の拠出者が取締役会にその代表者を送り込み、人的資本の拠出者と交渉するのは当然と言えます(宍戸善一 「動機付けの仕組としての企業」 有斐閣)。

日本では長い間、物的資本の主たる担い手が銀行であったため、メインバンクによる規律が行われてきました。そのため、株主を意識した経営は行われて来ませんでした。メインバンクシステムが崩壊した今、物的資本の利害を体現する社外取締役の重要性が強調されるようになっているのです。

しかし、人的資本の拠出者が自らの監視を強めるような仕組みを好んで採用することは考えられません。経団連の力が強い現状では尚更です。ここは政治主導で社外取締役を定着させる仕組みを導入することが必要だと思います。

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