資本再配分できる社会にー池尾和人氏

日本の金融が社会に役に立つ存在へと飛躍する条件を金融論が専門の池尾和人・慶大教授に聞いた。池尾氏は「金融は実体経済を映す鏡。金融に変化を求めるのなら、社会や実体経済も大きく変わらなければいけない」などと語った。
(日本経済新聞2013年10月23日5ページ  日経web刊)

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日本の金融の課題は何でしょうか。

日本の金融システムに欠けているのは、低収益企業から資本を引き揚げ、少しでも収益の高い企業に回す資本の再配分機能です。米国は1980年代からLBO(借り入れで資金量を増やした買収)などの手法を使って資本の再配分を行い、経済活性化のきっかけになりました

企業部門の新陳代謝を高めるのは、新規企業を育てるというきれい事ばかりではありません。古い企業に退出を迫り、収益性を高めるための雇用カットを容認しないといけない。本当に金融に変化を求めるのなら、社会や実体経済も大きく変わらなければいけない。社会が変化を決意するなら、金融の姿を再デザインしなければなりませんが、いまのところ、日本社会がその方向に向かっているようには見えません」(前掲紙)

一言でいうと、ヒト、モノ、カネが自由に移動する社会を目指すべきということです。
企業が貯め込んだ資金を使わせるのは、国家権力の役割ではなく、金融の役割です。
そして社会や文化が変わらなければ金融も変わることはできません。

「人材など他に企業活動を妨げている条件が変わらない限り、大きな効果はないでしょう。起業しようというアニマルスピリッツを持った人材が出てこないといけない。」(前掲紙)

社会の変化を促すのは、政治のリーダーシップの役割ですが、ぜひとも成功体験が欲しいところです。
多くの起業家が後に続きたくなるような成功体験が。

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