法人減税、4つのジレンマ

法人実効税率の引き下げには「4つのジレンマ」が潜む。経済界は税率下げを求めているが、課税ベース拡大は受け入れにくい。税構造の見直しは政府や自治体も必要だが、代替財源の確保が課題だ。
(日経ヴェリタス2014年2月23日59ページ 異見達見 土居丈朗慶応義塾大学経済学部教授 )

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政府税制調査会の委員でもある土居教授が、法人実効税率引き下げに潜む、企業、財政当局、自治体、国民が抱える「4つのジレンマ」を指摘しています。

以下、土居教授が言う4つのジレンマを要約します。

企業・・・法人税率引き下げには課税ベースの引き下げが必須であるが、個別の政策減税をやめることに反対する企業が出てしまい、経済界全体としては賛成できないという事態に陥る可能性がある。

財政当局・・・グローバル化が進む中、企業は海外に流出し、課税ベースが縮小する可能性があり、消費課税などに税収をシフトさせていかなければ、税収の確保が難しくなるが、一方法人税は税収に占める割合が高く、短期的には税率を下げにくい。

自治体・・・実効税率の約3分の1は地方自治体の課税によるもので、法人課税をすぐに減らすことは難しい。しかし現状の法人課税を続ければ税収が地域間で偏ったり、税収が景気に左右される構造が残ってしまう。

国民・・・法人実効税率が高いままだと日本企業の海外流出につながり、日本の雇用機会が失われる。他方、法人減税の代替財源として所得税や消費税を増税すると、国民にその直接的な負担が及ぶ。

「企業、財政当局、自治体、国民が抱える「4つのジレンマ」を、どう割り切って乗り越えるかが、法人実効税率引き下げの議論では問われる。」(前掲稿)

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