サンスターMBO裁判 その2

MBO(経営陣による買収)に伴う株式の買い取り価格の決定について、透明性や説明責任を問う動きが強まっている。経営者が買収者となるMBOは買い取り価格を巡り株主ともめやすい。歯磨き製品大手サンスターによるTOB(株式公開買い付け)に、価格を不満として応じなかった個人株主が価格決定を申し立てた事件で、大阪高裁は9月、買い取り価格を上げる決定を下した。MBOの対価の公正性が初めて法廷で争われたレックス・ホールディングスの事件よりも経営陣に透明性を厳しく求めている。
(日本経済新聞2009年10月26日16面)

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本件については、僕のブログでも以前に取り上げました(2009年9月9日「サンスターMBO裁判」)。大阪高裁はサンスター側の許可抗告に対し9月28日に不許可を決定し、買取価格は地裁決定の650円から3割程度高い840円に定まりました。

レックス・ホールディングス事件における高裁及び最高裁決定では、MBO公表日前日までの直近1ヶ月の終値単純平均に13.9%をプレミアムを付したTOB価格を支持した地裁の決定を覆し、MBO公表日直前に業績の下方修正を行ったことが、株価を下方に誘導する意図のもと行われたことは否定できないとして、単純平均する期間を直近半年と長めにとった上、本件に近接した時期に行われたMBOの事例を参考に20%のプレミアムが妥当であるとしてこれを付加した価格を公正な価格としました。

サンスター事件では地裁はTOB価格(2007年2月のMBO公表日前日から過去6ヶ月間の平均株価に19%を付した価格)を支持したのに対し、高裁決定は、サンスターの株価がTOBの1年前から相場の流れとかけ離れて下落した点を重視したものになりました。

「会社がMBO公表の3ヶ月前に発表した業績下方修正について「株価の安値誘導」を画策する工作の一つではないかと疑問を呈した。その上でTOBの発表時よりも1年前の株価に近似する700円までさかのぼって基準とした」(前掲紙)

事例の性質ごとに基準とすべき株価は個別に判断すべきという司法の判断は理解できますが、実務上これに対応するのは困難です。

英国のように1年内の最高値を下回ってはいけない、と法律で規定するのが良いように僕は思います。

【リンク】

2009年9月30日「株式取得価格決定事件抗告不許可決定について」サンスター株式会社