ソフトマンダトリー条項付きCB − 旭硝子のケース その2

26日の株式市場で旭硝子の株価が急落した。前日、最大1000億円の新株予約権付社債(CB)を発行すると発表し、1株利益の希薄化を警戒した売りが膨らんだ。資金は開発・投資などに充てるとしているが、使途の具体的な情報が少ないことも失望を誘ったとみられる。朝方から売り気配で推移。前日比7.5%安の742円で寄り付いた後も下げ幅を広げ、734円(8.5%安)と1ヶ月半ぶりの安値を付けた。
(日本経済新聞2009年11月27日17面)

【CFOならこう読む】

旭硝子のCBは希薄化を避けるため、次のような配慮がなされる予定です。

1.時価を30%程度上回る水準に転換価額を設定
2.償還期限を二つに分け、2014年満期CBに120%転換制 限条項を設けることにより、株式への転換可能性を抑制する設計とした。

それにも関わらず株価が急落したのは、投資家が納得出来るようなエクイティ・ストーリーが示されていないためであると今日の記事には書かれています。

プレスリリースには資金使途が次のように記載されています。

「本資金調達による発行手取金(グリーンシュー・オプション分を含む。)につきましては、更なる成長が期待できる既存事業の強化・拡充を目的とした設備投資等及び将来の成長案件の開発・投資等に70,000百万円を充当し、残額については、成長基盤構築のための諸施策に必要な資金需要に対応すべく、有利子負債の返済資金に充当する予定です。」

確かに具体性に欠けています。ただそれ以上にこの会社のエクイティ・ファイナンスに対する姿勢に甘さがないか。プレスリリースの中の次の記載を読んで僕はそんな風に感じました。

「本新株予約権付社債の発行により、ゼロ・クーポンで最大1,000億円の資金調達が実現し、更なる成長が期待できる分野への投資資金を低コストで確保することが可能となります。 」

ゼロ・クーポン=低コスト?

CBをそんな風に評価してはいけません。そんな前時代的な説明に市場が納得するわけがありません。CBのオプション部分を勘案すると、ゼロコストのはずはないのです。ゼロコストだから将来の投資に備えて資金調達をしておくか、そんな姿勢が市場から見透かされ、株価が急落した、そんな風に僕には感じられます。

【リンク】

なし