日本版ライツイシュー1号:タカラレーベン46億円調達

マンション分譲のタカラレーベンは1日、株主割当増資として既存株主に割り当てた
新株予約権のうち、95.7%が行使され、手取り概算で46億円を調達したと発表した。

日本経済新聞2010年6月2日15面)

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タカラレーベンのライツイシューの仕組みは以下の通りです。

「1株の当社普通株式に1個の本新株予約権が割当て
られ、1個の本新株予約権の行使により1株の当社普通株式が交付されます。割当基準日時点の株主に持株数に応じて本新株予約権を無償で付与し、交付された新株予約権について行使期間において行使価額の払込みを受けた場合に、当社普通株式を交付します。本新株予約権は東京証券取引所の新株予約権の市場に上場されるため(東京証券取引所からの上場承認を前提とします。以下同様です。)、本新株予約権の上場期間中、市場での売買が可能です。 」
2010年3月5日「新株予約権無償割当て(ライツ・イシュー(ノンコミットメント型))*1 に関するお知らせ」株式会社タカラレーベン[PDF

新株予約権は市場で売却することができたわけですが、この場合の株主の税務上の処理が気になるところです。この点会社は次のように説明しています。

「無償割当てによる本新株予約権の取得は原則、簿価は0円であり、譲渡価格の全額が課税対象となると理解しております。本新株予約権の市場での売却が金融商品取引業者への売り委託等によって行われる場合、譲渡益に対する税率は税法の特例(平成20年税制改正)により10%(所得税7%、住民税3%)になると理解しております。また、軽減税率
の規定は、特定口座及び一般口座の双方に対して適用されると理解しております。」(同上)

また、国税の2010年3月31日付の文書回答事例、「株主に無償で割り当てられた上場新株予約権の行使により交付される端数金等の税務上の取扱いについて」の中で、無償新株予約権の取得価額は次の通り零円となることが確認されています。

「無償上場新株予約権は、会社法第277条の規定に基づき、同法第109条の株主平等原則に従い、発行法人に対し新たな払込みをしないで株主に対し一律に割り当てられるものであるため、居住者等に係る無償上場新株予約権は、所得税法施行令第109条第1項第3号の「発行法人に対し新たな払込み又は給付を要しないで取得した当該発行法人の株式又は新株予約権のうち、当該発行法人の株主等として与えられる場合(当該発行法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に限る。)の株式又は新株予約権」に該当するものと考えます。
したがって、居住者等に係る無償上場新株予約権の取得価額は、所得税法施行令第109条第1項第3号の規定により零円となります。
また、内国法人等に係る無償上場新株予約権についても、法人税法施行令第119条第1項第3号の「株式等無償交付(法人がその株主等に対して新たに金銭の払込み又は金銭以外の資産の給付をさせないで当該法人の株式又は新株予約権を交付することをいう。)により取得をした株式又は新株予約権(第4号に掲げる有価証券に該当するもの及び新株予約権付社債に付された新株予約権を除く。)」に該当するものと考えます。
したがって、内国法人等に係る無償上場新株予約権の取得価額は、法人税法施行令第119条第1項第3号の規定により零円となります。」

株主に無償で割り当てられた上場新株予約権の行使により交付される端数金等の税務上の取扱いについて」国税庁

つまり、新株予約権を市場で売却すると、売却額=売却益になってしまうわけです。

ところで、理論的には無償新株予約権の価値は、既存株式の希薄化部分と等価であるので、本来。新株予約権の売却益は既存株式の簿価から差し引く形で調整されるべきです。

株主としては、実質的な富の増加がないのに課税が生じるのは納得できず、それなら既存株式を売却して希薄化部分に相当する損失を実現させてしまおうと考えるかも知れません。

上記の税務上の処理を前提にすると、この資金調達手法は一般的なものにはならないように思います。

注:税務上の処理はあくまで私見です。実際の適用に際しては自己責任で行なってください。

【リンク】

2010年3月5日「新株予約権無償割当て(ライツ・イシュー(ノンコミットメント型))*1 に関するお知らせ」株式会社タカラレーベン[PDF]
「株主に無償で割り当てられた上場新株予約権の行使により交付される端数金等の税務上の取扱いについて」国税庁