海外子会社の配当課税
企業の海外利益還流策、政府税調案に明記へ 来年度税制改正
政府税制調査会(首相の諮問機関)の2009年度税制改正答申の原案が20日分かった。日本企業が海外で稼いだ利益を国内に戻しやすくする税制の創設などを盛り込む。消費税については、社会保障の財源として引き上げの必要性を明記した昨年の答申をほぼ踏襲。政府・与党が消費税を含めた税制改革に向けた「中期プログラム」を作成する方針を決めたことを前向きに評価する。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081121AT3S2002A20112008.html
【CFOならこう読む】
この問題、今日の新聞の17面でもとりあげられています。
「現在は税率20%の国で稼いだ利益を日本に戻すと、日本の税率(約40%)との差の20%を追加で課税される。海外に置いておけば20%で済むので、稼いだ利益を海外の再投資に回すのは自然な流れだ。積み上がった海外利益は2006年度末で17兆円に上る。」
(日本経済新聞2008年11月21日17面)
海外の未分配利益にかかる繰延税金負債の金額が大きい企業は次の通りです。
この繰延税金負債の金額は、有価証券報告書の財務諸表の注記、「繰延税金資産および負債の主な内訳」に記載があります(例えば、トヨタの2007年度有価証券報告書108ページを参照してください)。
具体例で説明しましょう。海外子会社の利益80億円を日本に還流させると、追加的に20億円の課税があるとすると、連結財務諸表上次の通り処理されます。
法人税等調整額(P/L) 20 / 繰延税金負債(B/S) 20
海外配当子会社の配当が非課税になった場合、税金は支払われないので、繰延税金負債を取り崩す必要があります。たまった繰延税金負債が100億円あるなら、これが次のように処理されます。
繰延税金負債(B/S) 100 / 法人税等調整額(P/L) 100
新聞記事に書かれている、「損益計算書の法人税等調整の項目でプラスに作用するだろう」(大手監査法人)とは、このことを言っているのです。
そうなると、その分だけ株主価値が増加するので株価の上昇要因となります。また将来に渡りEPSやROEが押し上げられることになります。この税制改正は、今まで海外展開することを躊躇していた会社の背中を押すことになるかもしれません。
一方、日本の空洞化がもう一段推し進められることによる、国内経済へのマイナスの影響も危惧されるところです。
【リンク】
「2007年度有価証券報告書 第5 【経理の状況】」トヨタ自動車株式会社
http://www.toyota.co.jp/jp/ir/library/negotiable/2008_3/finance.pdf