不適当な合併等-クロニクルのケース

ジャスダック、クロニクルを上場廃止の猶予期間に

ジャスダック証券取引所は22日、宝飾品販売のクロニクルがエステティックサロン経営のJ・B・A(東京・渋谷)を株式交換で子会社化した場合、クロニクルは9月30日から上場廃止の猶予期間に入ると発表した。クロニクルが実質的な存続会社ではないと認められるため。
http://www.nikkei.co.jp/news/tento/20080925AT2D2201C22092008.html

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ジャスダックでは「不適当な合併等」に係る上場廃止基準について次のように規定しています。

「不適当な合併等に係る上場廃止基準(廃止基準第2条8号)は、いわゆる裏口上場の防止を目的として定められたものであり、上場会社が非上場会社の吸収合併等を行った結果、上場会社に実質的存続性が認められず、かつ一定期間内に新規上場審査に準じた審査に適合しない場合に上場廃止となることが規定されています。

クロニクルとJ・B・Aとの株式交換は、ジャスダックの審査により、実質的に存続会社がJ・B・Aとなるものと判定され、「新規上場審査に準じた審査を受けるための猶予期間」に入ることが見込まれる銘柄に指定された、というのがこのニュースです。

(1) 実質的存続性の審査
上場会社が合併等の公表を行った場合、ジャスダックは合併等を実施した場合に、上場会社に実質的存続性が認められるかどうか審査を行います。

(2) 実質的存続性が失われると判断した場合 ⇒猶予期間入りが見込まれます
上場会社が実質的な存続会社であると認められないと判断した場合は、合併等の実行時点から「新規上場審査に準じた審査を受けるための猶予期間」に入る可能性がある旨の投資者への周知を図ります。

(3) 合併等の実行時 ⇒猶予期間入り
当該合併等の実行時点で「新規上場審査基準に準じた審査を受けるための猶予期間」に入ったことの投資者への周知を図ります。
・ 合併等の実行時点とは、合併の場合は合併期日、営業譲渡や業務提携については譲渡日や業務提携日を指します。
・ 猶予期間の期限は、当該合併等の属する事業年度末から3年目の日(ただし、猶予期間最終日が事業年度の末日とならない場合には、その直前に終了する事業年度の
末日。)です

(4) 猶予期間内に新規上場審査基準に準じた審査に適合した場合 ⇒猶予期間から解除
猶予期間から解除し、投資者への周知を図ることとします。
(5) 審査に適合しないまま、猶予期間が終了した場合 ⇒監理ポストへの割当て

猶予期間が終了した時点において新規上場審査基準に準じた審査が終了していない場合は、その翌日から監理ポストへの割当てを行い、投資者への周知を図ることとします。

(6) 猶予期間終了後、有価証券報告書提出から8日経過時点
猶予期間終了後、最初に有価証券報告書を提出した日から起算して8日目までに、新規上場審査基準に準じた審査に係る申請を上場会社が行わない場合は、上場廃止基準該当銘柄として整理ポストへの割当てを行い、投資者への周知を図ることとします。
なお、当該時点において新規上場審査基準に準じた審査を継続している場合は監理ポストへの割当てを継続します。当然ながら、当該審査が終了次第、一般ポストへの復帰(適合した場合)又は上場廃止を決定した上での整理ポストへの割当て(適合しなかった場合)のいずれかの対応をとることとなります。」
(ジャスダック ウェブサイトより抜粋)

その後、クロニクルは株式交換の中止を決定し、ジャスダックも猶予期間入りが見込まれる銘柄から解除することを発表しています。

【リンク】

平成20年9月9日「簡易株式交換による株式会社J・B・Aの完全子会社化および主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」株式会社クロニクル [PDF]

平成20年9月24日「簡易株式交換による株式会社J・B・Aの完全子会社化中止に関するお知らせ」株式会社クロニクル [PDF]

2004/12/13「不適当な合併等に係るJASDAQ上場廃止基準更新日」ジャスダック証券取引所 [PDF]

実質的な存続会社がどちらであるかは、合併後の株主構成、取締役会の構成、事業内容等を総合的に検討して判断されるものと思われますが、クロニクルのケースでは、筆頭株主がJ・B・Aの大株主であるJBA-WESTに変更される、ということを除いて具体的にどうしてクロニクルが存続会社と見なされないと判定されたかについて公表されていません。

もっとも直近期(平成20年2月期)のEPSが512.29円であるJ・B・Aの株価が44,786円と評価されていること自体異常であり、このような評価がまかり通ることをもってしても、存続会社はクロニクルではないことは明らかであると、私は思います。