会計基準の国際的統一化は必要か?

時価会計見直しは正しい選択

会計基準は長期的に一定のルールに従ったものでありさえすれば、情報開示において何の問題も生じない。事実、日本やアジア諸国・地域はこれまで取得原価主義会計で大きな成長を遂げてきた。会計基準は経済の安定的成長を促すインフラであり、それ自体が変動を生むような制度は修正していくべきである。
今後、世界的に時価会計の見直しは避けられない。歴史や制度が異なる国々で会計基準が同一である必要もない。すべて一律に国際的規制を適用しようとする流れに対し、各国の事情を考慮した独自の判断が必要である。

(日本経済新聞2009年3月31日17面大機小機)

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一律な会計基準の国際的規制に反対する根拠とはどのようなものでしょうか?
例えば福井義高氏は「会計測定の再評価」(中央経済社)の中で次のように述べています。

そもそも、市場経済に必須の要素である競争と会計基準が無縁であってよいはずがないだろう。
むしろ、望ましい基準の提案も含め、市場の要望に的確に応えていくためには、Dye and Sunder(2001)やSunder(2002)が指摘するように、複数の会計基準設定期間の間で、基準間競争が生じるような枠組みが必要である。企業は複数の会計基準から1つ選び、選んだ以上はその基準に沿って財務報告する義務を負う。たとえば、日本の企業であっても、日本の会計基準に限らず、米国(FASB)、欧州(IASB)あるいは他の会計基準から1つ選んで、財務報告を行うのである。
こうした発想は机上の空論ではない。2007年に米国証券取引委員会(SEC)は、従来の米国GAAP至上主義を捨て、同国内で財務活動を行う場合でも、外国企業は米国GAAPではなく欧州基準(IFRS)に準拠した財務諸表のみを提出することを認めるという新たな方針を採択した。
このSEC新方針に対し、著名な研究者から構成された米国会計学会財務会計基準委員会は賛意を示した上で、外国企業のみならず米国企業にも自国のGAAPかIFRSかを任意に選べるよう、新方針を国内企業にも拡大適用することをSECに促した。まさに基準間の「競争のすすめ」である。日本の会計基準が目指す方向も、「グローバル・スタンダード」という名の米国あるいは欧州基準の傘下に入ることではなく、三大会計基準の1つとして、基準間競争の一翼を担うことではなかろうか。

また、斉藤静樹氏は「会計基準の研究」(中央経済社)の中で次のように語っています。

どのようにコンバージさせるかは、基準設定主体が先験的な価値前提に基づいて裁量的に決めるのではなく、異なる基準に基づく会計情報を投資家が評価し、それを証券価格に反映させた結果によっておのずから決められるという趣旨である。仮に複数の基準のどちらでも選択できるとき、もし一方の基準の品質が低いと判断されれば、それを使って情報を開示する企業のリスクは保守的に評価され、資金の調達コストは上昇することになる。結果としてその基準を使う企業が減り、良質な基準への統合が進むというマーケット・アプローチである。

しかし複数の基準が選択可能なメニューとして市場で併存するには、会計情報の利用者である投資家の判断に支障を生じさせない程度まで基準間の差異が縮小している必要がある。

この点機会を見つけて私自身の考え方を纏めたいと思います。

【リンク】

会計測定の再評価
会計測定の再評価 福井 義高


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会計基準の研究 斎藤 静樹


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