自社株買い銘柄が堅調

株式市場で自社株買いを発表した銘柄が人気化している。発表当日の株価はおおむね堅調で、自社株買いの規模の大きさと連動して株価上昇率も高い傾向がうかがえる。外国為替市場での円相場の高止まりが企業業績に与える影響や、米連邦公開市場委員会(FOMC)など重要なイベントを見極めようとする雰囲気が広がる中で、数少ない好材料とみなされている。
(日本経済新聞2010年10月27日21面)

【CFOならこう読む】

10月に自社株買いを発表した主な企業の株価騰落率は次の通りです。(上限株数のカッコ内は発行済株式数(自社株を除く)に占める割合で単位%、
▲は下落)

社名 発表日 上限株数(万株) 発表の翌営業日株価騰落率(%)
KDDI 22日 23(5.2) 7.3
ユニオンツール 8日 60(2.7) 6.6
良品計画 8日 110(4.0) 5.8
富士エレクトロニクス 25日 150(9.8) 5.2
ポイント 4日 57(2.3) 4.9
ニトリHD 19日 100(1.8) 4.5
ドトール・日レスHD 13日 180(1.8) 4.5
リケンテクノス 25日 100(1.6) 4
ニッケ 8日 50(0.6) 3.3
中国銀行 22日 100(0.4) ▲0.9

(出所:前掲紙)

「自社株買いは株式市場で取引される株式数を減らし、需給を引き締める効果がある」(前掲紙)

短期的に株価が需給によって上下することは否定しませんが、中長期的にはファンダメンタルによって決まるものと考えるべきです。自社株買いが株価に影響を与える理由は一般に次のように説明されます。

■経営者が、株価が企業のファンダメンタルズ価値を下回っていることを確信していて、それを市場にアピールすることにより株価に影響を与える(シグナリング効果と呼ばれる)

■キャッシュが潤沢にあるが、当面資本コストを上回るような投資案件もない場合、株価形成上キャッシュの価値が無視される場合がある。このとき自社株買いまたは増配によりキャッシュを株主に還元することにより株価にキャッシュの価値を反映させることができる場合がある

■有利子負債により資金調達し、同時に自己株買いを実行し、WACCを引き下げることで、株主価値は上昇させる

CFOとしては需給引き締めのためではなく、株主還元策の一環として自社株買いを考える必要があります。

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自社株取得

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