国際会計基準、連結決算のみに採用?

国際会計基準「採用に向け基準を」

日本公認会計士協会の増田宏一会長は17日、「今年の初秋にも米国が国際会計基準の受け入れを決める可能性がある」との見通しを示したうえで「日本も国際基準の採用に向け準備を進めるべきだ」との見解を表明した。会計士協会が同日、名古屋市内で開いた研究大会では国際会計基準を巡る議論が本格化した。 パネルディスカッションでは住友商事の島崎憲明副社長や日本公認会計士協会の山崎彰三副会長らが「国際基準を受け入れなければ世界から取り残される」との指摘。当面は連結決算のみに採用するのが現実的との認識を示した。

(日本経済新聞 2008年7月18日 14面)

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このニュースは、日本基準を維持しつつ重要な国際基準との差異は2011年6月末までに解消するという方向性(コンバージェンスといいます)から日本基準を捨て国際基準を全面採用という方向性(アダプションといいます)への路線の変更を示唆しています。 日本と米国はコンバージェンスを目指しているのですが、米国は今年の初秋にもアダプションを決める可能性があり、そうすると日本は孤立化してしまうので、アダプションへ路線変更すべき、とこの記事は言っているのです。 当面連結決算のみ国際基準を導入するのが現実的であるとの認識が示されたということですが、趣旨がよくわかりません。上場企業にとっては、個別が日本基準、連結のみ国際基準であることのメリットはあまりないように思います。 一方非上場企業(特に中小企業で監査を受けていない会社)の実務にはアダプションだろうがコンバージェンスだろうがほとんど影響がないと思われます。ということは何故連結決算のみのアダプションなのでしょうか。現実的とは何のことを言っているのでしょうか? おそらく、単独決算には会社法や税法との調整が必要で、その調整には時間がかかるので、当面会社法や税法との調整をあまり要しない連結決算のみ当面国際基準を採用しよう、ということなのだと思います。 ここにはユーザーの視点が欠落しています。大事なことは、ユーザー、すなわち、企業及び投資家にとってどちらが有用なのか、ということです。そういった議論の結果、アダプションで行こうということであれば、会計サイドはリーダーシップを発揮し、まずは各方面と調整していく努力をすべきであると私は思います。

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