移転価格税制-ホンダのケース

ホンダ、1500億円申告漏れの可能性…国税局が調査

自動車大手「ホンダ」(東京都港区)は25日、中国での乗用車の生産・販売を巡り、東京国税局から法人所得の海外流出を防ぐ「移転価格税制」の調査を受けていると発表した。
関係者によると、対象の期間は2006年3月期までの数年間で、計約1500億円の申告漏れを指摘される可能性がある。同社は追徴課税に備えて、08年3月期決算で約800億円を引き当てたことを明らかにした。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080425-00000059-yom-soci

【CFOならこう読む】

ホンダは伝統的にタックス・コストには寛容であるといったイメージが私にはあります。しかし競合他社、特に日産の実効税率は30%を切ろうかという水準にあり、ホンダとしてものほほんとはしていられないという認識があるのかも知れません。
有価証券報告書から税引前利益と法人税等の内訳の推移をまとめてみました。

国外で獲得する利益は一貫して増えていますが、全体の利益に占める割合から見ると極端に増加している訳ではありません。しかしながら国外分の実効税率が減少していることから、税負担の軽減されている国で利益を獲得する方向にシフトしていることがわかります。

次の表は、実効税率の推移と法定税率との差異の内訳の推移を私がまとめたものですが、この表からも上の傾向は見てとれます。海外連結子会社の法定税率との差異が増加していることに注目してください。但し、日産の▲5.4%と比較すると特段大きい訳ではありません。それでも多少無理をしている部分があるのかもしれませんね。
※クリックすると拡大表示されます。

なお連結ベースでは、米国会計基準を採用しているホンダは。FASBの解釈指針48号「法人所得税の申告が確定しない状況における会計処理」の”法人税等に関する税務処理が最終的に認められない可能性がある場合、期末日現在の状況等に基づく見積もりにより、関連負債を認識する必要がある”という規定に基づき、2008年3月期の連結財務諸表に引当金計上しています。

引当てられたのは、調査対象となった06年3月期までの5年間だけでなく、「将来発生しうる税務リスク分」も含めて08年3月期までの7年間分の計約800億円です。単独決算ではこの引当金を計上していません。プレスリリースでは、この点、「単独決算には日本の会計基準および会計慣行に照らして当該事象による影響を反映しておりません。」との説明があります。個人的には、税務調査も終了していない時点で引当計上する、というのは少し早い感じがします。

【リンク】

2008年4月25日「中国四輪事業の移転価格に関する税務調査について」本田技研工業株式会社
http://www.honda.co.jp/news/2008/c080425b.html