新米国会計基準-少数株主も純利益に

米国会計基準の新ルールが日本企業の間で波紋を広げている。企業の最終的なもうけである純利益の定義が変わるほか、子会社株の売却益が計上できなくなり、決算書に大きな影響が出るからだ。
日本では有力企業の多くが米基準を採用しているだけに、投資家は注意が必要だ。

(日本経済新聞2009年4月21日 14面)

【CFOならこう読む】

「新基準で純利益はどう変わるのか。ポイントは「少数株主利益」の扱いにある。少数株主は子会社における親会社以外の株主を指す。従来の純利益は少数株主の取り分を除いて計算していた。日本基準もこの方式だ。
一方、新基準では、少数株主の取り分も含めて純利益を計算、その後で親会社株主に帰属する利益と少数株主に帰属する利益に分ける。一株利益には影響しないが、純利益は少数株主利益を含むため、従来よりも大きくなりやすい。新基準は少数株主利益を「非支配持分利益」と呼ぶ。
純利益の定義変更の背景には、米基準が連結決算書を「誰の立場でつくるか」という根本的な考え方を変えたことがある。従来は親会社株主の立場で決算書を作成する「親会社説」を採っていたが、新基準は親会社株主と少数株主の両者の立場から作成する「経済的単一体説」を採用した。
少数株主もグループの出資者と位置付けるため、決算書は一変する。貸借対照表では負債と資本の中間項目だった「少数株主持分」が新基準では「非支配持分」として資本の一部になる。
子会社株式の売却益の扱いも重要だ。一部売却で子会社にとどまる場合は、売却益は計上できず、資本感情を直接増やす。子会社株式の一部売却による利益の捻出はできなくなる。」
(前掲紙)

さらに重要なのはのれんの取扱いです。
米国会計基準では、少数株主持分を公正価値評価するのが原則とされたので、少数株主持分からものれんが生じることになるのです。これを全部のれんといいます。

簡単な数値例で説明してみましょう。

A社が純資産100円のB社を買収するとします。A社が取得する持分は60%、これを90円で取得したとします。
親会社説によった場合ののれんは、

90円-100円×60%=30円

となりますが、経済的単一体説によると

90円÷0.6(B社の公正価値)-100円=50円

となります。そして少数株主持分(非支配持分)は、

60円(=150円×40%)

となるのです。そしてこのとき借方のれんの金額は、

150円(公正価値)-100円(純資産)=50円

となります。したがって、のれんの減損損失を認識する場合のPLへの影響額も従来に比べて大きくなると考えられます。

【リンク】

なし