不適切なファイナンス

証券取引等監視委員会が、株式の著しい希薄化を招いたり実態が不透明な投資会社に株式を割り当てたりといったいわゆる「不適切なファイナンス」への監視を強めている。
景気悪化で業績が低迷し、こうした手段に頼る上場企業が増えかねないためだ。一般に増資は既存株主の投資価値を目減りさせる可能性があるが、国内では乱用を規制する法令や上場規則がなく、安易な実施につながっているとの声が出ている。

(日本経済新聞2009年4月27日14面)

【CFOならこう読む】

「監視委の佐々木課長は、ファイナンスで問題になる会社のことを「箱企業」と呼ぶ。経営実態が乏しく、資金調達するためだけに上場している企業という意味だ。もちろん経営が悪化した企業による資金調達すべてが不適切というわけではない。投資家にとって箱企業を見分けられるかどうかが重要になる。

箱企業は、経営悪化に加えて、
1.株価が下落し、時価総額が上場維持基準を下回っていることがある
2.株主構成が大幅に変わり、主要株主に実態不透明な投資事業組合などが登場している
3.事業内容が大きく変わり、資金調達後に投資事業に乗り出している」
(前掲紙)

不適切なファイナンスを一般投資家が見抜かなければならない状況は明らかに異常です。そんな市場に一般投資家は怖くて近付けないし、近づくべきではありません。

まずは速やかに上場規則で厳格に規制し、会社法上も規制を設ける必要があると私は思います。

先日公表された、東京証券取引所 上場制度整備懇談会の提言”安心して投資できる市場環境等の整備に向けて”は同様の趣旨から行われたものです。

提言の中に次の記述があります。

「(4) 不適切な割当先の排除
第三者割当への反社会的勢力等の関与は、市場の信頼性と公正性の確保の観点から、断固排除すべきである。割当先を確認するプロセス等を設けて、未然防止を図ることが必要である。
(5) 割当先との取引の健全性の確保
株主・投資者保護及び市場の信頼性維持の観点からは、上場後においても支配株主を含む関連当事者等との取引の健全性は維持されるべきである。第三者割当によって支配株主の異動があった場合には、会社の意思により上場審査時の前提が変更されることとなるため、事後的に支配株主との間で不当な取引等が行われていないかについて確認するプロセスを設けて、未然防止を図ることが必要である。」

これでは緩い、と私は思います。

属性が不透明な者への第三者割当増資を行った企業は上場廃止とする位の規制が必要です。

【リンク】

2009年4月23日「安心して投資できる市場環境等の整備に向けて 」東京証券取引所 上場制度整備懇談会