四半期財務諸表における有価証券の減損処理

2012年4月~6月期に投資有価証券の評価損を計上する企業が相次いでいる。新日本製鉄は963億円を、神戸製鋼所は141億円を特別損失に計上すると、それぞれ2日に発表した。東京放送ホールディングスや川崎汽船なども損失処理を迫られた。株安が業績回復の重荷となりそうだ。
(日本経済新聞2012年7月3日17面)

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「会計ルールでは四半期末ごとに、投資有価証券の時価が帳簿価格の半値を下回ると、その差額を原則として評価損に計上しなければならない。ただ、本決算期末の株価の水準次第では、通期で計上する損失の額が、四半期で計上した額から変化する可能性がある」(前掲紙)

有価証券の減損処理は、年度末においては切放し法のみですが、四半期ベースでは四半期切放し法と四半期洗替え法の選択適用が認められています(継続適用を条件とします)。

四半期切放し法とは、減損処理を行った後の四半期会計期間末の帳簿価額を時価等に付け替えて、当該銘柄の取得原価を修正する方法です。

四半期洗替え法とは、四半期会計期間末における減 損処理に基づく評価損の額を翌四半期会計期間の期首に戻し入れ、当該戻入れ後の帳簿価額と四半期会計期間末の時価等を比較して減損処理の要否を検討する方法です。

「四半期会計期間末における有価証券の減損処理にあたっては、四半期切放し法と四半期洗替え法のいずれかの方法を選択適用することができる。この場合、いったん採 用した方法は、原則として継続して適用する必要がある。なお、年度決算では、四半 期洗替え法を採用して減損処理を行った場合には、当該評価損戻入れ後の帳簿価額と年度末の時価等を比較して減損処理の要否を判断することとなる。」
(企業会計基準適用指針第 14 号 「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」 第4項)

つまり洗替え法を採用している場合には、仮に第一四半期末に減損処理を行っていても年度末までに株価が回復している場合には通期では評価損が計上されません。一方切放し法の場合には、第一四半期末に減損処理を行ったら年度末に株価が回復していても戻し入れ処理は行われません。

なお、この規定は有価証券の減損処理に関する規定であり、その他有価証券の時価評価の規定と混乱しないよう留意が必要です。
例えば、四半期切放し法を採用しており、第一四半期末に減損処理を行った場合であっても、以降の四半期末においては減損処理後の帳簿価額に基づき通常のその他有価証券の時価評価が行なう必要があります(洗替え法に基づく全部純資産直入法等)。

【リンク】

「企業会計基準適用指針第 14 号 四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」企業会計基準委員会 [PDF]