「親引け」規制の緩和

話題になっているのが、10月に施行された日本証券業協会の株券配分の自主規制ルールの改正。上場する企業があらかじめ新株の配分先を決める「親引け」の規制が緩和されたこと
が主な変更点だ。
(日経ヴェリタス2012年11月25日71面)

【CFOならこう読む】

「株価が上昇基調にあった1970年代後半から1980年代前半にかけて、値上がりが確実な新株を、特定の企業や個人に配分する動きが相次いだ。利益供与になりかねないとの批判が高まり、1983年に原則禁止となった。」(前掲紙)

「親引け」とは、証券会社が株式等の募集又は売出しの引受けを行うに当たって、発行会社が指定する販売先への売付けを行うことをいいます。

当時の株式等の発行価格は、時価から大幅にディスカウントされて決定され、購入者がほぼ確実に利益が得られるものであったことから、事実上の利益供与につながるとの批判があり、1983年に「親引け」は原則禁止されることになりました。

しかし現在の市場環境は当時と異なり、公募増資を行えば株価が上昇するという前提はもはや存在しません。

また、海外における「コーナーストーン投資家プロセス」(比較的長期の保有が期待できる安定的な投資家に募集・売出しに係る株券等の一定数量を優先的に配分する)といった配分方法をわが国でも可能とすることでより円滑で安定的な消化を実現できるようにすべきではないか、といった問題意識から、「親引け」の原則禁止は維持しつつも、親引けが例外的に許容される要件を個別具体的に列挙するのではなく、引受証券会社が適正と判断する場合については親引けを例外的に許容するという、より柔軟な規制に改められることになりました。

親引けが例外的に許容される要件は次の通りです。

「(1) 親引けを行ったとしても前項の規定(引受証券会社は、市場の実勢、投資需要の動向等を十分に勘案した上で、募集等の引受け等に係る株式等の配分が、公正を旨とし、合理的な理由なく特定の投資家に偏ることのないよう努めなければならない(改正後配分規則2条1項))に反する配分にならないと引受証券会社が判断したこと。

(2) 発行会社が、親引けについて、親引け先の状況(親引け先の概要、発行会社との関係、選定理由、対象となる株式等の数、保有方針、払込みに要する資金等の状況、親引け先の実態)、対象となる株式等の譲渡制限、発行条件に関する事項、親引け後の大株主の状況、株式併合等の予定の有無及び内容、その他参考になる事項を、有価証券届出書又は発行登録書の提出後において適切に公表すること。

(3) 募集に係る払込期日若しくは払込期間の最終日又は売出しに係る受渡期日から180日を経過する日まで継続して所有することの確約を、主幹事証券会社が親引け先から書面により取り付けること。」
(「募集株券等の配分に係る規制の見直しについて~いわゆる「親引け」規制の見直しを中心として~」石津卓弁護士)

12月14日に上場する外食チェーンのチムニーは、この新ルールに乗ってキリンビールに新株を配分する予定とのことです。

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