法人税減税と国際競争力

衆院選で焦点の経済活性化策の一つとして、各政党が法人税率の引き下げを提唱している。約40%だった法人税の実効税率は約35%に下がることになっているが、企業の国際競争力を高めるには一段の減税が必要との見方があるためだ。各党は起業を応援する税制の充実にも前向き。足元の法人税収はピーク時の半分以下で、財政再建には納税する企業を増やすことも課題となる。
(日本経済新聞2012年12月11日5面)

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「法人税率の引き下げは、みんなの党が「実効税率を20%へ減税する」として今より4割程度下げることを公約に掲げた。自民党は「国際標準に合わせて思い切って減税する」としており、公明党や日本維新の会も法人税の減税をうたっている。」(前掲紙)

法人税減税の理由として、”国際競争力を高めるため”ということが言われますが、その意味するところは論者によって相当に異なるように思います。日本企業が海外の企業と競争していくうえで、日本の法人税率はあまりに高くて不利だから、法人税減税が必要であると情緒的に主張する声も多く聞こえてきます。しかし、この議論は間違っています。

日本は2009年からテリトリアル課税に移行しています、テリトリアル課税とは海外の子会社等からの配当を非課税とする制度を意味します。外国子会社からの配当を受け手で課税する全所得課税システムを採用しているのは米国や中国などごく少数の国にすぎまず、世界の潮流はテリトリアル課税です。

テリトリアル課税を採用している国では、海外で稼得した利益は現地で課税に服してそれで終わりなので、本国の税率がどれだけ高くてもローカルでの競争には影響ありません。法人税の多寡が影響を及ぼすのは、企業の立地戦略に対してです。企業がどこに拠点を置くか、どの市場に進出するかを決める上で、投資リターンは税引後利益(又はキャッシュフロー)で測られるので、法人税は決定的に重要です。

つまり法人税減税は日本企業も海外企業もなく、日本に拠点を置いてもらうために(日本から出ていかせないために)必要なのです。

先日、英国が欧米先進国最低の法人税率にするという内容のポスティングを行いました(2012年12月6日エントリー「英法人税、2014年21%に」)。

英国のオズボーン財務相は、その理由を「英国に来て、ここで投資し、雇用を創り出してほしいという広告になる」と述べています。法人税減税の本質はここにあります。日本では海外企業誘致の視点から法人税減税が必要であるとの声があまり聞こえてきません。また、本気で海外企業を誘致しようと思ったら、インフラ整備も含め法人税減税以外にもやるべきことがたくさんあります。

情緒的に法人税減税を唄っても何の意味もありません。

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